森林浴は五感で自然を感じることができる。
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- ストレス解消の方法は世界各地で異なるが、共通しているのは心を静めるシンプルな活動を行うことだ。
- 武道や瞑想は、呼吸に意識を移して心を静める活動だ。
- 運動をしたり、辛いものを食べたりすると、幸福感を得られる神経伝達物質が産生されるという。
- 自然の中で過ごす場合は、スマートフォンを家に置いてくると効果が高まるだろう。
ストレスは世界共通だが、アメリカ人は他国の人よりも多くのストレスを感じているという。2019年に発表されたギャラップ社の調査によると、アメリカはストレスレベルで世界平均を上回っており、世界で4番目にストレスの多い国だ(1位はギリシャだった)。
心理学者のナイディン・ジョニー(Naydine Johney)博士は、ストレス解消に世界各地のTIPSを試してみるとよいとアドバイスしている。また、人それぞれ、日常的に行っていることを心を静めて行えばストレスを軽減することができるという。彼女は一人で昼食を食べることに安らぎを感じているが、ある人はドライブしているときにリラックスできる、というように。
不安と強迫性障害を専門とする社会福祉士、アリエル・サンク(Ariel Sank)によると、結局は五感を使って気持ちを平穏にするしかないという。多くのストレス解消法は、不安な思考から離れるために、音や匂い、感覚に集中するように促す。
以下で、心の平穏を見つけるのに役立つ4つのアプローチを紹介しよう。
武道は、肉体と精神の鍛錬
空手、テコンドー、合気道などの武道は、心身を鍛える方法としてアジアで人気がある。このような精神的、身体的な運動は、その活動の最中だけでなく、ストレスの多い状況に直面したときにうまく対処できるようにしてくれる。
武道の身体活動は、ランナーズハイに関連する神経伝達物質であるエンドルフィンの放出を促す。しかし、精神的な訓練と集中は、運動と同じくらい重要だとジョニーは言う。
「武道には多くの身体的要素が含まれているが、呼吸や集中などの精神的な要素も重要だ。この2つは、組み合わせると不思議な働きをする」
ストレスを感じているときは短く浅い呼吸になる傾向があるため、格闘技やヨガのように、深く長い呼吸に集中するよう促す運動は、心身を落ち着かせるのに役立つと、彼女は説明した。
森林浴で自然に溶け込み、ストレスを解消
自然の中にいることに喜びを感じるのは世界共通だが、「森林浴」は日本で生まれたものだ。
森林浴は自然の中に身を浸すことを意味するが、重要なのは五感すべてを使うことだとサンクは言う。足の指の下の草の感触や、風にそよぐ葉の音に身を任せることは、グラウンディング効果(地に足がついたような落ち着いた感覚を得る効果)があるという。
しかし、ジョニーは森林浴による効能を得るためには、最初のステップが重要だと述べている。それはスマートフォンを家に置いてくることだ。
「森林浴は実際には、コルチゾール(ストレスがあると増えるホルモン)を低下させるようにストレス要因を取り除いているだけかもしれない」とジョニーは言った。
「おそらく、それは自然である必要はない。スマートフォン、コンピューター、家族とのいさかい、ストレスの多い職場から脱出できればいいのだ」
サンクは、パンデミックによる行動制限や寒さのために外に出ることができない場合、五感を研ぎ澄まして静かな屋外空間にいることを想像することで、同様の鎮静効果を得ることができるとアドバイスしている。ただし、最初に電源をオフにすることが大切だ。
辛い物を食べると幸せホルモンが出る
HBOマックスで配信中の「ラヴィ・パテルの幸福の追求」で、映画監督で俳優のラヴィ・パテル(Ravi Patel)がストレス解消法を試すために韓国を訪れた。そのメニューには、棺桶に横たわったり、森林浴をしたりするのに加えて、スパイシーな料理もあった。
唐辛子に含まれるカプサイシンは炎症を軽減することが明らかになっており、香辛料を含む食品を多く食べる人は心疾患で死亡する可能性が低くなるという。また、セロトニンやエンドルフィンなどの幸福感をもたらす神経伝達物質も増加する。
ジョニーは「ストレスは精神的にも肉体的にも影響を与えるが、香辛料の効いた食べ物を食べるだけで体内にあるエンドルフィンの量がある程度は増加する。つまり、少しは安心感が得られるということだ」と述べた。
香辛料に対する耐性にかかわらず、その辛味はエンドルフィンの産生を誘発する。ジョニーは辛い食べ物が苦手だというが、気分を高揚させるためにはチリペッパーを1つか2つ食べる価値があると考えている。
瞑想で不安な気持ちとの和解を図る
仏教の尼僧であり、Limitless Health Instituteの創設者であるロブサン・チュンゾム(Lobsang Chunzom)は、3年間の瞑想修行中に自分の心に耳を傾けることを学んだと語った。
瞑想は仏教では一般的な修行で、短時間の瞑想は世界中で人気になっている。瞑想の目的は心を静めることだと彼女は言う。しかし、まず最初に、自分の考えを整理しなければならない。
「何か考えが浮かんだ瞬間、その考えをどうコントロールすればいいだろうか。これは精神的な訓練だ」
このトレーニングの背景にある考え方は、考えを変えることはできないが耳を傾けて受け入れることはできるということだ。チュンゾムによると、不安な考えと闘うのではなく、それを認識して受け入れることで、ストレスを解消することができるという。
誰でも家で短時間の瞑想を実践することができる。あなたは、3年間も孤独な修行をする必要はないのだ。
[原文:4 simple stress relief tactics from around the world, from eating spicy food to forest bathing]
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)