一押しの機種は?と考えて、最後まで残ったのは「iPhone 12 Pro」(左)と「iPhone 12 mini」。
撮影:伊藤有
iPhone 12 miniが今日、11月13日から発売開始になった。
普段からiPhoneを使っていることもあり、自分の環境を先行レビューのiPhone 12 miniに完全移行させて5日間ほど触ってきたが、前評判通り、僕も今年の「最注目」はこれかな、という感じがしている。
iPhone 12、iPhone 12 Pro、iPhone 12 Pro Maxと全4機種を使ってきたが、その中で12 miniが残った理由を考えると、「ちょうど良い大きさ、十分以上の性能」ということに尽きる。
日常利用でProとminiの差をあまり感じない理由
左がiPhone 12 Pro、右がiPhone 12 mini。
撮影:伊藤有
4機種の中で、最後まで比較対象に残ったのは、僕の場合は「iPhone 12 Pro」だった。miniほどではないが、十分コンパクトではあるし、何よりカメラ性能が良くて(12や12 miniにはない2倍ズームがある)、3DスキャナーにもなるLiDARの先進性も良い。
Proは、最上位に当たるPro Maxに比べてカメラ性能が中途半端だという人もいる。ただ、Pro Maxも触った上で、個人的には「もう大きいスマホはいいかな」という印象が強かった。その理由は、この西田宗千佳氏の記事で書かれていることと全く同じだ。
今年のiPhoneは、Proモデルとノーマルの間で「この差は大きいな」という差別化が、極端に言えばあまりない。
その理由は、miniの絶妙な仕様にある。
1. Proとminiの処理性能の違いが「ほぼない」
作成:Business Insider Japan
日常的な利用にかかわる処理性能。iPhone 12シリーズは、全機種が最新のA14 Bionicで統一されている。
メモリー容量の違い(Proは6GB、12/12miniは4GB)はあるが、iOSのメモリー管理の仕組み上、この点は実効性能にはほぼ影響がないと思っていい。
実際、12 miniを5日間程使っていて「遅い」とかモタつきを感じることは一度もなかった。特に2世代前にあたるXS世代のiPhoneを使っているような人だと、A14 Bionicのサクサク感には進化を感じるはずだ。
2. ディスプレイはminiまで含め全機種「有機EL」
画面は小さくでも臨場感は十分。縦方向に1080ドットの解像度あることも、表現力としては大きい。
撮影:小林優多郎
11世代はProのみが有機ELだったが、12世代はProからminiまで、全機種が有機EL。
実機では特に、動画の鮮明な明暗表現や、パキッとした写真の表示などでディスプレイの良さが感じられる。
ぱっと見ではわからないが大事なポイントとして、「miniの画面解像度」も注目しておくべき要素だ。
iPhone 12世代は画面サイズによって解像度が異なるが、一番小さなminiでも2340×1080ドットある。横表示にしたときに、天地がフルHDと同じ1080ドットあるというのが大事なポイントだ。5.4インチのディスプレイでも、フルHD画質の動画を細部までキレイな画質で楽しめる。
3. ProのようなLiDARはないが、カメラ性能にはあまり影響しない
レンズが3つ(超広角・広角・望遠)があるiPhone 12 Pro(左)に対して、レンズ2つ(超広角、広角)のiPhone 12。そのほか周囲の環境を正確に計測できるLiDAR機能も、Proの特徴ではあるが……。
撮影:伊藤有
望遠レンズがProにしかないのは仕方ないとして、Proに搭載されるLiDAR機能は技術的先進性という意味で素晴らしい。
一方で「LiDARがあるから体験が大きく変わること」は、まだ案外少ないのも、比較しながら実機を日常使いしていて感じることだ。
この理由は、カメラ性能とLiDARの連動が限定的なことが大きい。
端的に言って周囲が明るい状況では、カメラ撮影時にLiDARの補助はほぼ使わないためだ。
つまり、LiDARの有無で、ポートレートモードの背景ボケの精度が上がる、といったことはほとんどない。これは取材のなかでも、そうした仕様になっていることを確認している。
「ポートレートモードで撮影すると、飲み物のストローが、iPhone 11世代では消えることがあった。12世代では消えない」といった進化は、実はほとんどの場合、機械学習モデルの精度向上、つまりソフトウェア的な洗練による。つまり12 miniでも十分に体験できるもの、ということになる。
これは、夜景などの撮影についても同様。もちろん、レンズの明るさなど光学性能の違いはある。
街中のイルミネーションを撮影。異様に明るく撮れているのは、すべてA14 Bionicのおかげ。ここまで明るく、手ブレもなく撮れてしまうと「レンズの明るさ」とは何なのかという気にもなってくる(タップするとフルサイズで表示します)。
撮影:伊藤有
ただ、最近のスマホの写真は、光学性能だけではなく、高性能な画像処理による、ある種CG的な高画質化が非常に大きい。
実際、散歩がてら夜の街を撮っていると、iPhone 12 miniでも非常によく撮れる。A14 Bionicの演算力の賜物だろうナイトモードなどは、年末にかけて増えていく街中のイルミネーションを切り取るときにも、大いに活躍するはずだ。
高架道路ぞいのインダストリアルな風景。道路の質感がきちんと出ているのに、自動車はシャッタースピードを遅くしたかのように綺麗に流れている。また夜空の雲が見えているのは、(明るいのではなく)SmartHDRがかなり効いていると思われる(タップするとフルサイズで表示します)。
撮影:伊藤有
大画面化一辺倒へのアンチテーゼ的なサイズ感
撮影:伊藤有
最後に、サイズ感について。これはもう「これ待ってた!」と言うほかなかった。
手に持つと、妙な懐かしさがあるのは、小さい本体を握ったときの四角い感触が、iPhone 5(初代iPhone SE)を思い出させるからだろう。
実寸サイズもかなり近いものがあるが、数値的にはiPhone 5よりひとまわり大きい。重量もわずかに重い。
出典:アップル
近年のスマホは、大画面化(特に横幅の拡大)が進むことで、フリック入力がややしづらくなってきたり、パンツの前ポケットに入れるのが難しくなってきた。Pro Maxシリーズのサイズは、特にその傾向が顕著だ。
ちょっとそこまでお出かけ、というときにiPhone 12 miniだけをポケットにスッと放り込んで外出したくなる気軽さが、このサイズ感にはある。
画面が小さくなると、文字が見づらくなるのでは…という人もいるかもしれない。
これは僕はまったく問題なかった。小ささだけを追求したのではなく、おそらくは現実的で実用的なサイズを検討したところが、ポイントなんだろうと思う。
最後に1つ、気にしておいた方がいい点をあげると、いろいろな人が指摘するようにバッテリーの持ちはさほどよくない。
普通に使って1日持たないということはないにしても、大容量バッテリーのスマホに慣れていると、夕方あたりに「あれ、かなり減ってるぞ」と思うことにはなる。
これまでモバイルバッテリーはギリギリ不要だったシチュエーション(観光地にいって写真をたくさんとるとか)では、モバイルバッテリーがあった方が安心ということにはなりそうだ。
(文・伊藤有)