城の外観。
Courtesy of Patrice Besse
- パリの不動産業者、パトリス・ベッセによると、フランスにあるヴェルトゥイユ城が330万ドルで売りに出されている。
- 百年戦争とフランス革命を生き延びたその城の歴史は11世紀までさかのぼることができる。
- ヴェルトゥイユ城は約100エーカー(40万平方メートル)の土地にあり、14のベッドルーム、複数のチャペル、ラウンジ、1000冊の本を収容できる図書室がある。
- かつてこの城には美術品として有名なタペストリーがあった。そのタペストリーは現在、ニューヨークのマンハッタンにあるクロイスターズ美術館で展示されている。
見事な城がフランスの不動産市場に出回っており、たったの330万ドルで手に入れることができる。
高級不動産を扱うパトリス・ベッセ(Patrice Besse)によると、この巨大な物件はラ・ロシュフコー家が所有していた。ラ・ロシュフコー家は、フランスで最も古く、最も有名な貴族の1つだ。
歴史的建造物であるこの物件は「千年もの間、同じ一族が所有していた。市場に出回ったことのない芸術作品のようなものだ」と、同社の創業者、パトリス・ベッセ社長はニューヨーク・タイムズに語った。
この城が建てられたのは約1000年前で、百年戦争やフランス革命で広範囲に損傷を受けたにもかかわらず、何世紀にもわたって修復や改装を行っていて状態はとてもすばらしいものだという。説明によると、新しい窓やセントラルヒーティングなど、いくつかの現代的で便利な設備も整えられている。
現在の所有者であるシクステ・ドゥ・ラ・ロシュフコー(Sixte de La Rochefoucauld)と彼の妻イングリッドは、ともに60代半ばであるが、シクステの健康状態が思わしくないことと「建物を維持するには莫大な費用がかかる」という理由で、この物件を公開市場で売却することになった、とタイムズ・オブ・ロンドンに語っている。彼らはラ・ロシュフコー一族の中で城を買ってくれる人を見つけることができなかったのだ。
それでは、歴史的な城の中を見てみよう。
ヴェルトゥイユ城の建設は11世紀に始まった。フランス革命の後、いくつかの改修が行われている
城の入口へと続くアプローチ。
Courtesy of Patrice Besse
ヴェルトゥイユ城は、フランスの著名な貴族、ラ・ロシュフコー家が所有する城で、1000年の歴史を持つ。ブリタニカによると、一族からは複数の公爵やフランス農業の基礎を築いた社会改革者を輩出している。
この城は、パリから電車で2時間ほどの、フランス南西部のシャラント川沿いの村にある。
この物件を扱うパトリス・ベッセによると、城はその村と同じくらいの敷地で、川を見下ろす場所にある。
巨大なV字型をしたこの城は、中央のパビリオンと塔を持つ2つのウィングで構成されていて、14のバスルーム付きのベッドルームがある
部屋の色にマッチした布張りの椅子が並ぶ廊下。
Courtesy of Patrice Besse
フランス革命と百年戦争という歴史に残る重要な出来事によって、城は大きな損傷を受け、大規模な修復が必要になった。
パトリス・ベッセによると、最初の修復作業は、フランスとイングランドの間で起きた、1337年から1453年までの一連の戦争を指す百年戦争の後、1400年代に行われたという。ニューヨーク・タイムズによると、もともとの建造物は戦争中に破壊され、その後、元の石を使って再建された。
また、1500年代には、当時この城を所有していたラ・ロシュフコー家の一員が、フランス国王フランソワ1世と協力して、イタリアの職人を使ってイタリア・ルネッサンス様式に改装したという。
最も大規模な修復作業は、フランス革命後に行われた。この城は1793年に大きな火災による被害を受けた。
3つのフロアにわたる、豪華なラウンジ、寝室、応接室、大理石の暖炉などがカタログを掲載されている
2階の「シャルル5世の間」。
Courtesy of Patrice Besse
1階には、天井の高いキッチン、吹き抜けのあるエントランスホール、2つの広々としたラウンジ、応接室、小さなベッドルームがある。
3つの階段で上ることができる2階には、2つのラウンジと4つのベッドルームがある。それらのベッドルームのうちの2つは、よりフォーマルで、ニューヨーク・タイムズによると、王室関係者を迎え入れるための場所だという。その1つは「クイーン・マムの間」と呼ばれていて、1980年にイギリスのエリザベス女王が滞在したことに由来しているとタイムズ・オブ・ロンドンは報じている。
カタログによると、3階の大部分は9つのベッドルームが占め、大理石の暖炉、リネンルーム、中庭に面した廊下などがある。
ニューヨーク・タイムズによると、販売価格に含まれていない豪華な家具を購入するオプションもある。「購入者は、17世紀のイタリアの家具、ルイ16世様式のドレッサー、ムラーノのシャンデリアなど、家具、絵画、装飾品を広い範囲から選択することができる」とパトリス・ベッセのベッセ社長は同紙に語っている。
この「ルイ16世の間」は1階にあるラウンジの1つ
この部屋には、最後のフランス国王の名前がつけられている。
Courtesy of Patrice Besse
フランス最後の国王にちなんで名付けられた豪華なラウンジには、天井画とシャンデリアがある。
ルイ16世は、1774年から1792年、フランス革命で君主制が廃止されるまで国を統治したと、歴史家のジェレミー・デビッド・ポプキン(Jeremy David Popkin)はブリタニカに書いている。 彼は1793年にギロチンで処刑された。
もう1つのラウンジ「一角獣の間」も、同じように高い天井とシャンデリアがある
「一角獣の間」。
Courtesy of Patrice Besse
この部屋の天井も豪華で、壁には大きなアート作品がある。パトリス・ベッセはカタログでこのラウンジを、ゲストを「親密に」もてなすのに最適な場所だと述べている。
ローズ・サロンは、自然光がたっぷり入る大きな窓が特徴。他のラウンジと同様に、ここにもシャンデリアとアート作品がある
2階の「ローズ・サロン」。
Courtesy of Patrice Besse
パトリス・ベッセによると、この城にはかつて「一角獣狩り」と呼ばれる一連のタペストリーがあった。現在はマンハッタンのクロイスターズ美術館(the Met Cloisters museum)に展示されている。
同美術館によれば、「中世後期の最も美しく複雑な芸術作品」とされ、絹と上質のウールでできており、柵で囲まれて木に結びつけられた一角獣(ユニコーン)が描かれている。
同美術館の記録によれば、アメリカの億万長者で慈善家のジョン・D・ロックフェラー・ジュニア(John D. Rockefeller Jr.)が1929年にこの作品を購入し、8年後に美術館に寄贈している。
図書室は2つの階にまたがっていて、1000冊以上の本を所蔵している
図書室。
Courtesy of Patrice Besse
カタログによると、図書室にはアーチ型の天井があり、そこはかつて見張り台だった。
1階からの隠し階段は、神話のシーンとイタリアのメディチ家の紋章が描かれたタペストリーがある上層階に通じている。
城の敷地内にはいくつかの礼拝堂があるという
礼拝堂の1つ。
Courtesy of Patrice Besse
城には11世紀と12世紀にさかのぼる複数の礼拝堂があり、そのうちの2つは20世紀に再発見されたという。ラ・ロシュフコー家は1800年代後半に主たる礼拝堂を修復し、2013年には屋根を新しくした。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)