ハワイに移住した人も! コロナ禍で約30万人のニューヨーカーが市外へ引っ越していた

引っ越し

コロナ禍で30万人以上がニューヨーク市から流出したという。

Alexi Rosenfeld/Getty Imates

  • ニューヨーク・ポストが入手した米郵便公社(USPS)のデータによると、コロナ禍で30万人以上のニューヨーク市民が街を離れた。
  • その多くは市内で最も裕福な人々で、ニューヨーク市では最も裕福な人々が市の税収の半分近くを収めている。
  • 多くの元ニューヨーク市民は、郊外のハンプトンズや隣接する他の州の郊外にある高級住宅地などに郵便物の転送を依頼している。中にはハワイのような雰囲気の全く違う土地へ移った人もいる。

アメリカのニューヨーク市では、より良い環境を求めて過去8カ月の間に約30万人が街を離れた。

情報自由法(Freedom of Information Act)を通じてニューヨーク・ポストが入手した米郵便公社(USPS)の郵便物の転送依頼に関するデータによると、3月1日から10月31日の間に数十万世帯がニューヨーク市から流出した。

その主な要因は、新型コロナウイルスの大流行だ。

USPSのデータはニューヨーカーがどこへ向かったのか、興味深い情報を提供してくれる。ただ、それが一時的な"流出"なのか、永続的な"流出"なのかは区別されていない。

"ビッグ・アップル"からの大量流出

新型コロナウイルスの感染が広がる中、誰がいつ戻ってくるかは分からない。

2020年9月、160を超える企業のCEOたちはニューヨーク市のデブラシオ市長に対し、元住民が早く街に戻って来られるよう取り組んでもらいたいと要請した。ゴールドマン・サックスやメイシーズといった企業のトップが署名したこの書簡は、ニューヨークでは「安全、清潔、その他の生活の質に対する不安が広がっていて、それが商業地区やその周辺の状況を悪化させている」と訴えた。夏の間、州内を視察して回ったニューヨーク州のクオモ知事も、ニューヨーク市民に街へ戻るよう呼びかけた

失うものは大きい。ニューヨークからの大量流出 —— 通常なら5年分の"流出"がたった数カ月の間に起きた —— は、市にとって数十億ドルを超える規模の問題なのだ。

クオモ、デブラシオ

ニューヨーク州のクオモ知事(左)とニューヨーク市のデブラシオ市長(右)は、ニューヨーカーの流出を食い止めようとしている。

Mark Lennihan/AP Photo

ニューヨーク当局は、2022年までに歳入が590億ドル(約6兆1300億円)不足すると見込んでいる。ニューヨーク市では2018年、人口の1%にあたる"最も裕福な市民"が合計1333億ドルの収入を得て、市の税収の42.5%を負担した。わずか3万8700人のニューヨーカーが49億ドルを収めたのだ。

税金とともに流出したのはこうした人々だ。郵便物の転送依頼は高級住宅地に集中している —— その中でもアッパー・ウェスト・サイドの3つの郵便番号に該当するエリアが最も多い。他にも、マンハッタンのマレーヒルやチェルシー、グリニッチビレッジ、アッパー・イースト・サイドといった地区からの流出も多かった。

最も裕福なニューヨーカーたちはどこへ?

多くのニューヨーカーは、自宅近くに滞在することにした。6万5000世帯以上はシンプルに、近隣のロングアイランドやウェストチェスター(どちらもニューヨーク州)、もしくはニュージャージー州の郊外に移った。ウェストチェスターのスカーズデールやコネチカット州グリニッジの高級住宅地でも新しい住民が増えた。

ニューヨーク市で記録的な数のマンションが空室となる一方、隣接する州の郊外では住宅の争奪戦が起きている

流出した人々のうち数千人は、ニューヨーカーに人気の避暑地ハンプトンズを選んだ。6500件の転送依頼の転送先はイースト・エンドで、サウサンプトンやイースト・ハンプトンに転送を依頼する人も多かった。ただ、もともと住んでいた住民と新型コロナウイルスのパンデミックの影響で逃れてきた人々との間で緊張が高まった。ロングアイランドでは、コロナ禍をここで乗り切ろうと街からやってきたビリオネアに対し、現地住民が抗議デモを行った。

もともと高級住宅地として知られるハンプトンズは、コロナ禍でさらに"高級"ぶりを増すばかりだ。ジミーチュウやジョルジオ・アルマーニといったハイエンドなブランドがイースト・ハンプトンにポップアップ店をオープンしたり、マンハッタンのエリート名門校がハンプトンズに新たに姉妹校(リモート授業対応、年間授業料4万8000ドル)を設置するなどしている。

イーストハンプトン

ニューヨーク州イーストハンプトン。

James Kirkikis / Shutterstock.com

ハンプトンズに住みたいと考えている人々も、隣接する州の郊外同様、とてつもなく高い住宅価格を目にすることになる。Business Insiderでも以前報じたように、ハンプトンズの賃貸市場は「ミドルクラスの裕福な人々」ですら手が出なくなりつつある。

さらに遠くへ向かった人も

多くの"元市民"がニューヨークに通える範囲にとどまった一方で、長期休暇に入ったかのように見える人々もいる。ニューヨーク・ポストによると、ニューヨーク市から流出した人々のうち約1万3000人がフロリダに、約9000人がロサンゼルスに移った。ハワイのホノルルへ逃れた人も400人以上いる。

セカンドハウスとして人気の場所も増えている。リモートで働くことができ、ソーシャルディスタンスや今後のロックダウンの可能性に備えて住む場所を確保しておきたいと考えるアメリカ中の都会暮らしの人々に支えられ、こうした場所では不動産市場が活況だ。

例えば、コロラド州アスペンのある不動産業者は、8月の契約物件の仲介手数料が10億8400万ドルだったとBusiness Insiderに語った。2019年8月は1億1100万ドルほどだったという。その近くのテルユライドにある別の不動産業者は、コロナ禍の需要の影響で、住宅の平均価格が「飛躍的に上昇した」とBusiness Insiderに語っている。

リゾート地に限らず、その他の遠方の街でもコロナ禍で新たな住民が増加している。ノースカロライナ州のローリー、ダーラム、チャペルヒルからなる"リサーチ・トライアングル"や、テキサス州ダラス郊外のフリスコといった人気の南のエリアもこれに含まれる。

アメリカ各地で新型コロナウイルスの感染者数が増え続ける中、"郊外への流出"はまだまだ続きそうだ。

[原文:The Post Office says 300,000 New Yorkers have fled the city — for places like the Hamptons and even Honolulu

(翻訳、編集:山口佳美)

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