小池都知事「5つの小」徹底を訴え。感染警戒“最高レベル”に、専門家が示した「危機感」とは?

小池百合子都知事

11月19日の会見で「5つの小」について説明する小池百合子都知事。

出典:東京都 Tokyo Metropolitan Governmentより引用

全国的に新型コロナウイルスの感染が拡大している。東京都では11月19日、新たに534人の新型コロナウイルス感染者が確認された。1日あたりの感染者としては、18日(493人)を超え、過去最多を更新した。

こうした中、都は19日に新型コロナウイルス感染症モニタリング会議を開催。小池百合子都知事は都の感染状況を4段階の中で最高レベルの「感染が拡大していると思われる」に引き上げると決定した。

一方、医療提供体制については同じく4段階ある中ので上から2段階目にあたる「体制強化が必要であると思われる」にとどめた。

会食の場では「5つの小」を

5つの小

出典:東京都

小池都知事は会議後に開かれた臨時の記者会見で、

「感染状況につきまして、モニタリングの指標は増加傾向が続いているということで、9月以来2カ月ぶりの赤が灯りました。一日の感染者数は、非常に高い水準で推移しています。


特に、重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者数が増加しておりまして、医療提供体制についても予断を許さない状態が続いていますので、厳重な警戒が必要ということであります。


これから忘年会、クリスマスシーズンを迎えることになります。都民、事業者、行政が一体となって、気を緩めないで、感染防止対策を改めて徹底していただきたいと存じます」(小池都知事)

と感染状況に対して警戒感を示した。

感染防止対策のため、小池都知事が新たにキーワードとして示したのが「5つの小(こ)」と医療従事者への「心遣い」だ。

会食時には「小人数で」「小一時間程度におさめ」「小声で楽しみ」「料理は小皿にとりわけ」「小まめにマスク、換気、消毒をする」と、基本的な対策を改めて訴えた形だ。

なお、警戒レベルは最高レベルに引き上げたが、過去の感染拡大期に実施していた飲食店などへの営業時間の短縮要請(時短要請)は実施しない方針だ。

小池都知事は、その理由について、

「感染者数は増えているが、重症者数は増えていないという状況で何をすべきか。最も効率的な方法は何か。専門家の意見などをベースにしながら、会食や家庭内での対応について改めて行動変容をお願いをしたところでございます。


それが効果的であり、重症化を出さないための方策につながっていくことになります。重要なのは重傷者の数。重傷者を出さないというのが守るべきラインで、それをベースにしながら判断していく」

と述べ、将来的な時短要請の可能性については言及しなかった。

重症者の「数」だけを見ると、前回の会議時の38人から、39人と確かにさほど増加していないように見えるが、この1週間で新たに人工呼吸器を装着した患者は23人いる。人工呼吸器から離脱した(回復傾向にある)患者は11人、人工呼吸器を使用中に死亡した患者が4人であることから、単純に数の比較だけでは判断しきれないできない側面もある。この点は、今後も注意深く数字をみていくべきだろう。

感染拡大、止まらなければ4週間後には「1020人」

モニタリング会議資料

モニタリング会議の資料を見ると、全体的に1週間前より状況が悪化している。

出典:東京都モニタリング会議 資料

モニタリング会議の総括コメントでは、感染状況について、

「新規陽性者数と接触歴等不明者数は大幅に増加しており、急速な感染拡大の局面を迎えた。特に、重症化リスクの高い高齢者の新規陽性者数が増加しており、高齢者への感染の機会を、あらゆる場面で減らすことが必要である」

と、強い警戒感をにじませる文言が並んでいる。

11月12日の段階では、新たに確認された感染者の数の1週間平均は244人だった。

一方、今日のモニタリング会議の資料では326人。この1週間で1.3倍、2週間前と比べると約2倍だ。

モニタリング会議に参加した、国立国際医療研究センターの大曲貴夫教授は、

「増加比も、10月末から常に100%を超えている状況です。これを踏まえて、急速な感染拡大の局面を迎えたと判断しております。


現在の(1週間辺りの感染者の)増加比133%が4週間続くと、1日あたり約1020人になります。これは極めて深刻な状況ですので、なんとか下げていきたい」

と、感染が拡大する速度について危機感をあらわにした。

最近の感染経路として最も多いのは家族などの同居する人からの感染で、全体の40%を超えている。

次いで、施設(老人ホーム、病院、学校など)が15.9%、職場が15.7%、会食が8.2%、接待を伴う飲食店が2.5%だ。

ただし、家庭の外のさまざまな場所で感染した人が、家庭内に新型コロナウイルスをもちこみ、同居する人に感染させたという事例が確認されている。

「家族ぐるみ、職場ぐるみで、基本的な感染対策である手洗い、マスクの着用、3密を避ける、環境を消毒するなどの徹底が必要となります。


不特定多数の人が集まる場では、外気を入れたくない気持ちも分かりますが、効果的な方法でこまめな換気を徹底することが必要です」(大曲教授)

耳を傾けたい、大曲教授の言葉

大曲教授

11月19日の会見で回答する大曲教授。

出典:東京都 Tokyo Metropolitan Governmentより引用

1月に国内で新型コロナウイルスへの感染者が確認されてからもう10カ月。警戒レベルが最大といわれても、正直なところ生活の何が変わったのか、何を変えなければならないのか、ピンとこない人も多いかもしれない。

大曲教授は、記者会見の中で現状についてどう捉えるべきなのかを問われると、個人的な見解としながら、次のように答えた。

「(感染状況が)かなり広がっているという判断をしたわけで、深刻にとらえていただきたいです。1月から10カ月対策をやってきた中で、感染しやすい場、リスクが高い場所が分かってきました。


距離をとるとか、換気をするとか、そういう対策を見出したことはすごく大きいんだと思います。何を怖がったら良いか分からない状況で家にこもっていた当時から、かなり進歩してきたと思います。


社会活動を維持していく必要があるので、人が集まる場はあります。一方で、感染も防がないといけない。それは難しいんですけど、感染の避け方はあるので、それをいかに実行していくのかということなんじゃないかと思います。


あと協力も大事です。お店の従業員の方も、感染対策を進めたいけどお客さんが納得してくれないことがあり、精神的に疲れているという話を聞きます。そこはお互い様なので、協力をしてやっていけば感染も減っていくと思います。


長丁場を考えるとそうした環境づくりをしていかないともたないので、そこを頑張るということなんじゃないかと思っています」

これは都民はもちろん、感染が拡大している地域に住む全ての人が共有しておくべきことだろう。

(文・三ツ村崇志

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