Audible(オーディブル)は新しいオリジナル作品「アレク氏2021」など、新タイトルや今後の戦略を発表した。
撮影:小林優多郎
アマゾン傘下で音声コンテンツの配信を行うAudible(オーディブル)は11月19日、日本市場向けの新コンテンツや今後の戦略を公開した。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で“巣ごもり消費”が進むなか、仕事や家事、移動中など「ながら作業」に適した音声メディアの需要や注目度は上がっている。
実際、オーディブルも「グローバルで伸びている」とアマゾンジャパン オーディブル事業部APACバイスプレジデントのMatthew Gain(マシュー・ゲイン)氏は語る。ゲイン氏は日本においては、月額1500円(税込)の会員数が「コロナ前後で倍に伸びている」「世界1位の成長率」と、好調ぶりをアピールしている。
コロナ禍で2倍の成長を遂げた日本のオーディブル
マシュー・ゲイン氏。
撮影:小林優多郎
ゲイン氏によると、主な成長要因となっているジャンルは自己啓発系。現在同サービスのメインとなっているユーザー層は年齢は30~45歳、性別ではやや男性が多いことから「(コロナ禍で増えた)自宅で過ごす時間を有意義にするため、スキルアップの需要が増えたのではないか」(ゲイン氏)と分析している。
このトレンドはコロナ禍にある限りは続くと予想されるが、オーディブルの日本上陸から5年以上が経った今でも、ゲイン氏は「日本市場はいまだ成長過程にある」という認識だ。
オーディブルメンバー(有料会員)の成長率。
撮影:小林優多郎
刻一刻と変化するユーザーのニーズに対応するため、今回の発表では日本向けのプレミアムコンテンツや取り組みの発表が相次いだ。
- 音声媒体であることを生かしたドキュメンタリー作品……例「DARK SIDE OF JAPAN―ヤクザサーガ―」
- オーディブルのネットワークを生かした海外のベストセラーを音声化……例「THE LEADER'S GUIDE リーンスタートアップ式 新時代の組織を作る方法 超実践編」
- “聴く映画”を目指すオーディブルエンターテイメント作品……例「アレク氏2120」
- 書籍から音声化ではなく、音声発の作品作りをするオーディオファーストパブリッシング作品……新潮社との協業を発表、2021年初春に公開予定
写真左から窪塚洋介さん、梶裕貴さん、山寺宏一さん。
撮影:小林優多郎
11月19日に開催された記者説明会では、堤幸彦監督作品のオリジナル作品「アレク氏2120」に出演する声優の梶裕貴さん、山寺宏一さん、三石琴乃さん、俳優の窪塚洋介さんが登壇(三石さんはリモートでの出演)。
作品の紹介などの話に花を咲かせつつ、「今までにない“聴く映画”の体験」(梶さん)、「人の想像力によって映像や本以上に可能性が広がる」(山寺さん)、「(視聴者と)映像の作品とは違う関係性になれるのではないか」(窪塚さん)、「提供する側も聴く側も進化する」(三石さん)と、各々が“聴く映画”に対する期待感を語った。
まずはコンテンツを拡充、今後はリスニング体験向上も
インタビューに応えるマシュー・ゲイン氏。
撮影:小林優多郎
ゲイン氏は2021年を、2020年からさらに成長させる「飛躍の年にする」と表現。前述の有料会員をさらに2倍に増やしていくことを目標にする。
そのためにまず注力するのがコンテンツであり、オリジナル作品だけではなく、出版社と共同で取り組む書籍のオーディオ化や、海外で成功したコンテンツの持ち込みも行っていく。
ニュースやコメンタリーなどのポッドキャストにも注力していくが、兄弟サービスとも言える「Amazon Music」が外部の企業や配信者の番組を提供・配信しているのに対し、オーディブルは限定コンテンツやオリジナル性の高いものを配信していく方針だ。
オーディブルはアマゾン傘下の音声サービスだ。
撮影:小林優多郎
技術的な面では、バイノーラル録音(=人間の左右の耳を模したマイクによって自然な音響を録音する技術)の音源や、ドルビーデジタルのような5.1chのサラウンド音源なども「クリエイターの要望があれば取り組んでいく」(ゲイン氏)という。
一方で、オーディオブックの検索性やレコメンドの精度の向上などユーザーの体験向上に対する技術開発は積極的に行う方針。ゲイン氏は「1年後ぐらいの発表を楽しみにしておいてほしい」とコメントした。
ニューノーマルと呼ばれるような、新しい働き方、暮らし方の中で一定の需要が発生している音声コンテンツ。グローバルですでに大きなプラットフォームをもつオーディブルが、今後日本でどのような存在になっていくのか、今後の動向にも注目したい。
(文、撮影・小林優多郎)