厚労省が発表した「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」
撮影:横山耕太郎
新型コロナウイルス感染拡大に関連した解雇が、7万1000人を超え、雇用への影響が深刻化している。
潜在的な失業者とされる休業者は197万人(2020年9月時点)で、新型コロナウイルス感染の第3波が襲う日本で、今後、失業者がさらに増えるリスクをはらんでいる。
厚生労働省の発表によると、解雇・雇い止め予定などがある労働者数は7万1121人(2020年11月13日までの集計)。
業種別では製造業が最も多く、「解雇等見込み労働者数」は1万3671人。次に「飲食業」が1万563人。「小売業」が9551人、「宿泊業」8840人と続く。
コロナ禍では、飲食業など一部の業種で壊滅的な影響が出ているのが特徴だが、転職エージェントは「IT業界などでは未経験の採用は減っており、業種をまたいだ人材の移動は少ない」と指摘。業界全体がダメージを受ける中で、異業種への転職は容易ではない現実を物語っている。
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新卒入社、半年で「希望退職」迫られる
新型コロナウイルスによる業績悪化の影響で、正社員の希望退職の募集を始めた企業もある。
撮影:今村拓馬
非正規雇用だけでなく、正社員に対しても希望退職を募る企業も少なくない。
Business Insider Japanの取材に応じた男性(22)は、2020年4月にホテルに新卒採用されたが、6カ月後の10月末で退職した。
「希望退職」という形ではあるものの、会社側から「入社1年目から3年目の社員」は、「組織スリム化」のためのリストラの標的にされ、実質的には選択肢のない「失業」だった。
男性は「ホテルの経営が苦しいのは分かるが、ホテル側から十分な説明がなく、希望退職の募集には納得できなかった」と話す。
これに対し、複数ホテルを運営する企業の親会社の関係者は、取材に対し「希望退職はやむを得ない判断だった」と説明する。
「雇用の維持を大前提として、給与の一律カットや政府の補助などあらゆる対策をとってきました。ただ感染の拡大を受け、客室の稼働率が数%台にまで落ち込んだホテルもあり、希望退職を募らざるを得ませんでした」
取材に応じた男性は、転職先が決まっており、12月からはホテル業界を離れ、別のサービス業の企業で働くという。
「潜在的な失業者」に危機感
パーソルキャリア執行役員の大浦征也氏。
撮影:横山耕太郎
新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、今後の労働市場はどうなっていくのか?
転職支援サービス「doda」前編集長でパーソルキャリア執行役員の大浦征也氏は、「現状は政府の補助金などで、もっている部分があるが、今後また非常事態宣言が出るような事態になれば、耐えられなくなる企業も増える」と指摘する。
大浦氏は、政府が休業時の賃金を一定量支給する「雇用調整助成金」について、「雇用を維持するのに一定の成果を出しており、現状では大量の解雇にはつながってない」と評価。
一方で、潜在的な失業者とされる「休業者」が多いことから不安要素も多いとする。
休業者は、2020年4月に597万人と過去最多を更新。2020年9月には197万人まで減少したが、今後、休業者が完全失業者(2020年9月時点で210万人)の増加につながる可能性もある。
IT業界で未経験求人は減少
大浦氏は「日本では業種をまたぐ転職はまだ少ない」と指摘する。
撮影:今村拓馬
コロナ禍では、飲食業や宿泊業など特定の業種に、大きなマイナス影響が出ているものの、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の高いニーズを担うIT企業では追い風となるなど、影響が二分されているのが特徴だ。
こうした状況下では当然、飲食業など深刻な打撃を受けた産業から、人手不足の業界や成長産業への人材移動が期待されるが、現状ではそれも低調だという。
「業種をまたいだ人材の移動はなかなか起きていません。日本ではもともと業界を超えた(人材の)流動性が低かったことに加えて、主にIT業界では未経験の求人は減っていることも原因の一つです」(大浦氏)
「エン転職」を運営するエン・ジャパンによると、2020年4月以降は未経験求人が減少。求人に占める未経験求人の割合は、コロナ前の2020年1月には79%だったが、同じ年の10月は57.1%と大きく低下している。
未経験求人の割合が大きく低下したのは、IT業界だ。
人手不足が叫ばれる販売・サービス業では、1月の未経験求人の割合は90%で、コロナ後の8月でも86%。差は4ポイントだけだった。
しかし、技術系(IT・Web・ゲーム・通信)では、未経験求人の割合は1月の80%から、8月には30%に急落。50ポイントの大幅減少となり、コロナ禍の成長分野であるIT業界でも、未経験の転職者の受け皿にはなっていない。
前出の大浦氏は、現在の人材市場について「これまでDX推進に力を入れていた企業も、コロナ禍で積極的な投資には慎重に転換した」と説明する。
一方で、近い業種間での人材の移動は、今後さらに進んでいくと見ている。
「業種内で好調な業態や、隣接した業種への転職が今後は進むと思います。例えば、百貨店からドラッグスストアへの転職、小売業や飲食業から物流業への転職など、まずは比較的近くて、ニーズの高い業界への移動が進むと思います」(大浦氏)
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2020年12月2日18:35
(文・横山耕太郎)