- グーグルのニューヨーク・オフィスで採用担当を務めるスージー・ソンは、リンクトインとサムスンでも採用業務に携わってきた。
- ソンはこれまでに数千人の面接をしてきたが、求職活動や面接について、もっと多くの人に知ってほしいことがあるという。
- ソンが明かしてくれたポイントは大きく4つある。例を1つ挙げれば、面接での質問には「STAR」と呼ばれる手法が役立つとのこと。その詳細とは?
コロナ禍の今、仕事を探すのはとても難しいタイミングだと思われるでしょう。
サムスン、リンクトインを経て、今はグーグルで技術者採用を担当している私ですが、友人知人から面識のない人にまで、仕事を見つけるコツやうまい面接の乗り切り方など、これまでにないほど多くの質問を受けるようになりました。
筆者のスージー・ソン氏は、これまで数千人の面接をこなしてきた採用のプロだ。
提供:Susie Song
そこで、他の候補者に差をつけるための工夫をお伝えしたいと思います。
1.可能な限り紹介者の活用を。いなければSNSを活用すべし
たいていどこの会社でも、手当や特典などの報酬が付いたリファラル(社員紹介)制度を導入しています。これは、企業が自社の社員を大切にし、きっといい人を紹介してくれるだろうと信頼しているからです。それにリファラルのほうが、人材紹介会社を介するよりもコストも低く済みます。
リファラルは候補者にとってもいくつかのメリットがあります。
まず挙げられるのは、紹介者がいる候補者のほうが、他の応募者より早く書類を見てもらえて、進捗も教えてもらいやすいという点。
次に、最終段階で経歴や面接での評価が似通った候補者との比較になった場合に、リファラルのほうが有利になるという点。紹介してくれた人の推薦があなたの評価を後押ししてくれるからです。
ただしこれは、元同僚など自分の仕事ぶりについて語れる人が紹介者だった場合に限られます。
このように、紹介してくれる人がすでにいる場合はいいのですが、もしいなくても、紹介者を見つける方法があります。
まず、応募しようと思っている部署に所属していそうな人にLinkedIn上でコンタクトをとります。どんな仕事でどんなチームなのか聞きたいので、15分もらえないかと訊いてみてください。その時間であなたのことを知ってもらい、失礼のない範囲で自分の紹介者になってもらえないかと頼んでみてもいいでしょう。
あるいは、LinkedInなどのSNS上で同窓生や同業者たちにコンタクトをとり、力になってくれそうな人を探すのも手です。これは少し時間がかかりますが、なんとしても内定を取りたいなら試してみる価値はあります。
2.「10秒」の書類審査にパスする履歴書のカスタマイズ方法とは?
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女性は自己評価が低い傾向があるという研究があります。少数派の属性を持つ候補者はインポスター症候群(訳者注:自分の成功体験は自分の実力ではないと考える傾向)で悩み、自分のスキルや能力をうまく売り込めないことが多いのです。
自信過剰で高望みしすぎる仕事に応募する人もいれば、自信のなさから自分の能力を持て余すような仕事に応募する人もいます。
どちらの場合であれ、仕事の肩書にばかり気を取られて応募してしまうのが間違いのもと。求人を探すときには、身の丈に合った仕事かどうかを現実的に判断することが大切です。
求人市場は今、熾烈な競争状態。資格を完璧に備えた(あるいはそれ以上の資格を持った)応募者ですら、激しい競争を勝ち抜かなければならない状況です。そこで履歴書をカスタマイズする際には次の点に留意してください。
- その仕事に求められる必須条件、優遇条件が何かをよく考え、職務内容と自分の経験を照らし合わせてみましょう。企業側は必須条件、優遇条件に照らして履歴書に目を通します。自分の資格がそのどこにマッチするか、目につきやすいように履歴書をまとめましょう。
- 業務内容の中で重要なキーワードを見極め、履歴書にそれを盛り込みましょう。書類審査にかけられる時間は応募者1名あたり長くても10秒です。業務内容に一番マッチする項目を先頭に持ってきましょう。自分はこのポジションに求められるスキルを備えた人物だと明確に伝わることが大事です。ほんの10分手間をかけるだけで、他の候補者に大きな差をつけられます。
- 同じポジション名でも業務内容は企業によって異なる場合も。例えば、社員30人の会社のディレクターと社員10万人の会社のディレクターでは経験値が異なってきます。応募したいと思っているポジションや会社と比較して、自分の相対的な価値を現実的に評価しましょう。
3.面接には「STAR」と呼ばれる手法で回答すべし
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面接が終わって、「あの質問にはこう答えればよかった」と思ったことはありませんか? 過去の経験について質問されて、その場で過不足なく簡潔に答えるのは難しいものです。
そこで、面接に準備万端で臨むために、「STAR(状況、タスク、アクション、結果)」と呼ばれる手法をご紹介しましょう。面接官や応募者の間ではよく知られた手法で、自分の果たした役割や、タスクをどう完遂させたか、結果はどうだったか、など特定のスキルに関する情報を収集・整理するやり方です。
STAR手法を活用して過去のプロジェクトをリストアップし、その中から質問に答えるのに使えそうなエピソードを考えてみてください。例えば、大規模開発プロジェクトの経験をSTAR手法で整理しておけば、「顧客との課題をどう乗り越えましたか?」「プロジェクトの結果をどう評価しましたか?」などの質問に生かせます。
では実際に、STAR手法を使った模範解答を示しましょう。面接官が「厳しい期日に間に合わせる必要があった時の経験を話してください」と質問してきたら、こんなふうに回答します。
- SITUATION(状況):勤務先の企業で緊急のプロジェクトが立ち上がることになり、ソフトウェア・エンジニアをすぐに10人採用する必要が出てきました。
- TASK(タスク):採用チームは2人だったので、少なくともその半分は私が探して採用することになりました。
- ACTION(アクション):過去の応募者リストをすぐに棚卸しし、最終面接まで進んで内定にかなり近かった人たちに連絡をとりました。同時に、ソフトウェア・エンジニアのチームに、これから10日間以内に誰かを紹介したら追加の紹介手当を出すと伝え、社員によるリファラルを進めました。
- RESULT(結果):これらを含めた採用戦略により、私は1カ月でソフトウェア・エンジニア6名を採用しました。もう1人の採用担当の分と合わせて必要数を満たすことができ、無事にプロジェクトの立ち上げに間に合いました。
こういったことを前もって5つは書き出しておき、ストーリーとして話の筋を覚えておくといいでしょう。面接の際にも自分の達成事項をすぐに思い出すことができ、過不足なく簡潔に回答できるようになります。
4.内定が出なくても、採用担当者とのつながりを維持しよう
準備も練習も万全で臨んだとしても、残念な結果を候補者の方にお伝えしなければならない時もあります。ただ、候補者の方にはいつも、採用は長期的なパートナーシップだとお伝えしています。私は本気でそう思っています。
会社とは、たくさんの人が集まる組織です。面接で終始敵対心を見せたり悪質行為に及んだというのでない限り、「この人はこの会社に向かない」なんていうことはほぼありません。
内定が出なかったのは、その仕事に合っていなかったか、自分より少しだけ評価の高い候補者が他にいたから。つまり、同じ会社でも他のポジションだったら、もしくは同じポジションでももっと経験を積めば、あなたにも可能性があるということです。
不採用の連絡を受けた際は、採用担当者にフィードバックをお願いして、今後も連絡を取り合えないか訊いてみてください。不採用が出た直後なら、次に面接を受けられるまで凍結期間(たいてい半年から1年)を置くところもあります。その間に、フィードバックをもとにしてスキルアップをしたり、もっと自分にマッチしそうなポジションを探したりしてみましょう。
凍結期間が終わったら、再度採用担当者に連絡して、気になっている別のポジションでまた面接してもらえないか訊いてみましょう。LinkedInでつながっておき、頃合いを見て今後の採用についてコンタクトをとるのもいいでしょう。
(翻訳・田原真梨子、編集・野田翔)