記者会見する小池百合子知事。
撮影:吉川慧
東京都の小池百合子知事は11月24日、日本外国特派員協会(東京・千代田区)で記者会見し、2021年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた都の新型コロナ対策を説明した。小池知事は冒頭発言の中で「新型コロナウイルスの感染拡大は深刻な状況」とする一方、引き続き開催に向けて準備をすすめると強調した。
質疑応答では最近の感染者増加について「人の移動によって陽性が増えてきているのは明らかだ」とする一方、「諸外国と比べると重篤な人の数はかなり抑えられていると思う」と発言し、「ホストシティとしてコロナ対策はしっかりとっていきたい」と述べた。
小池知事は東京オリンピック・パラリンピックへの準備をすすめることを強調した。
撮影:吉川慧
海外メディアからは「どのレベルの感染であれば五輪を中止しなければならないか」と、中止条件の想定を問う質疑もあった。
小池知事は「主催のIOC、それぞれの競技のIF(国際競技連盟)やオリンピック委員会があり、日本政府、東京都、これらが話し合っていくことになると思う」と述べるにとどめた。
また、東京オリンピックで想定される「ワーストシナリオ(最悪のシナリオ)とベストシナリオ(最高のシナリオ)は?」といった質問も飛んだ。
ベストシナリオについて小池知事は「各国の選手の方々が安心して来られて、安心・安全な大会をフルの観客のもとでおこなうこと」と回答。選手村に医療施設を設置するなど検討中の対応策を説明したが「最悪のシナリオ」については言及しなかった。
会見は冒頭発言は英語、報道陣との質疑応答は日本語だった。報道陣との一問一答は以下の通り。
—— 今朝の報道でGoTo事業について菅首相に会うとの報道があった。報道は事実か。事実なら何を話す予定か。
このあと官邸に伺う。菅総理と現状におけるコロナ対策。東京都と国の連携のために伺う。
いくつかの経済を活性化させる国の政策があり、その一つがGoToトラベル、GoToイート。正しい日本語ではないが、日本人にはとてもよく食事にいらしたり旅行にいらしたりということが見られている。
東京については先程も少し紹介したが、今日本のどこの都市よりも検査をしている。陽性者がそれによって発見されている。
最近の傾向としてお年を召した方の陽性率も増えてきている。主に家庭の中でうつしあいをしている。けれどもそれはどこかから持ち込まれたものであるという分析をしている。
陽性が東京でも増えている。1400万人の(日本)最大の都市である東京の陽性者の数は非常に多いが、最近は他の都市がその数を上回る陽性者の数を出しているという傾向が見えてきている(※1)。
人の移動によって陽性が増えてきているのは明らかだ。
活発な人の移動をどうやって抑制をするのか。人の移動もさることながら、会食などでの飛沫が飛ぶことによる感染が多いと考えられている。
会食から感染したウイルスが家庭に持ち込まれて免疫力の低い高齢者にうつるという流れが見えている。
東京都は、GoToは国の制度なので、東京で出現している問題をどう抑えていくのかを先程は西村(康稔)担当相と、これから菅総理と話し合って対策を講じる。
諸外国と比べると重篤な人の数はかなり抑えられていると思う。これは医療機関の皆さまのご努力のおかげ。
東京においては、重篤患者(※2)は昨日の時点で41名。さまざまな国々、非常に感染が広がっているところからすれば重症者の数は抑えられていて、さらに死亡者の数も抑えられていると考えている。
一方で経済も逼迫をしている。今日、日経平均株価は上昇を見せているが、実体経済は前期がひどい、38%GDPマイナスだった。そこが低すぎたということもあって、今回は28.3ポイントの上昇を見せている(※3)が、これからどうやって経済と感染症対策を両立させていくか。
どの国も暗中模索の状況。これらのことについては良いレッスンはお互いに共有していきたいと考えている。
記者会見で紹介された1920年「アントワープ五輪」のポスター。「スペイン風邪」のパンデミック後の大会だった。
撮影:吉川慧
—— 2021年にどのレベルの感染であれば五輪を中止しなければならないのか。
それについての判断は主催がIOC。それぞれの競技のIF(国際競技連盟)やオリンピック委員会がある。日本政府、そして東京、これらが話し合っていくことになると思う。
先日バッハ会長がいらしたのも、どのような形で開いていくのかという話し合いだった。安全・安心な大会開催のためのさまざまな施策についての考え方の意見交換をした。
よって、全ての判断は、その会議体で進んでいくものと考えている。
バッハ会長は滞在中、また私との会談の際にも、IOCとしてワクチンを選手や関係者に提供する用意があると強調していたのが印象深かった。
私個人としても、最近のワクチン開発についてのニュースには敏感に反応している。
日本においてはワクチンも強い法律もないが、皆さんの協力によってかなり抑えることができた。国内における対策はこういったかたちで、ホストシティの東京としても安全対策、コロナ対策はしっかりとっていきたい。
—— 東京オリンピックのニューノーマルについて話があった。予測される「最悪のシナリオ」と「最高のシナリオ」について。また具体的なコロナ対策について。
対策については、コロナの状況は各国によって違う。現状がどうなのかなど、状況に応じて考えなければならない。
ベストシナリオは各国の選手の方々が安心して来られて、安心・安全な大会をフルの観客のもとでおこなうこと。
これまでの形でありながら、そのためにも徹底したコロナ対策をとっておく。
例えば、いま準備をしているのが世界各国の選手の皆さんをお迎えして選手村に滞在をされる。選手村における医療施設、検査施設を整えること。
また食事の提供の仕方がこれまではビュッフェスタイルだったが、それをどうやって個々に分けていくのか。一つ一つの対応策について話し合いをしている。
小池知事は、東京五輪のベストシナリオについて「各国の選手の方々が安心して来られて、安心・安全な大会をフルの観客のもとでおこなうこと」と述べた。
撮影:吉川慧
—— 知事はイスラムの国の大学を卒業されている。イスラム教徒の人たちが五輪について期待している。イスラム教徒の人々にはどう貢献しようと考えているか。
イスラムの国々から素晴らしい選手をお迎えできる、そのために安全・安心な大会である準備をおこなっている。
その中には、当然ながら食事についてはハラールを。選手村やさまざまな会場における礼拝堂の施設などの準備を行っている。
これらのイスラム諸国からの観光客であれアスリートであれ、お迎えすることについては東京はすでにさまざまなおもてなしの準備をしている。歓迎したい。
いつもラマダン中の情報交換会をイスラムの方々をお迎えをして、ともにお祝いしている。この状況の中で会を開けていないのは残念に思う。
—— 日本政府はすでに1.2億人のワクチンを確保していると報道がある。国と都の間で、ワクチンの優先順位・地域などの話し合いはあるか。外国籍の住民はどうなるか。
まずワクチンの確保は、国が責任をもって進めていると聞いている。それをどのような割り振りにするのかはまだそれぞれの自治体等には知らされていない。東京には54万人(※4)の外国からの方々がお住まいだ。
それぞれの方の安全・安心をお守りするのは都として当然のこと。方法についてはこれから話し合いというか、国のほうがお決めになってくると思うが、都についてはそういったことも要望としてお伝えする必要があるかと思う。まずは本当に有効な安全なワクチンが1日でも早くできることを祈っている。
—— 知事は日本の政界ではまだ若い。今後、総理大臣になるつもりはあるか。
1400万人の都市の東京都をお預りしている、その責任を果たすことが最大・最重要なこと。今日もオリンピック・パラリンピック開催のことを申し上げた。これについてはホストシティとして何としてでも実現していきたい。その役目を担っていると考えている。
(文・吉川慧)