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- 新型コロナウイルスによって、企業は働き方や事業のあり方について再考を余儀なくされている。
- 経営コンサルティング会社ウェストモンローパートナーズは、年商2億5000万円ドル以上の企業の経営幹部150人を対象にアンケート調査を行った。
- 本稿ではその調査結果を分析し、経営幹部たちが2021年に向けて描いている戦略を4つ抽出した。
パンデミックを契機に、企業は2021年の予算を見直している。働き方はもちろんだが、投資すべき分野、来年の事業のあり方についても再考を余儀なくされている。
例えばグーグルは、リモートワークをハイブリッドな形で取り入れるよう物理的オフィスの見直しを進めている。ボストンコンサルティンググループ、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、KPMGなどのプロフェッショナルサービスファームは、出張費を削減し、クライアントとオンラインでやり取りする新しい手法を取り入れている。
オフィスを全廃する企業もある。Business Insiderが以前、従業員200人未満の企業のCEOを取材したところ、オフィスをなくすことで従業員の働き方がより柔軟になり、費用も削減できるとの声があった。
経営コンサルティング会社ウェストモンローパートナーズは、年商2億5000万ドル以上の企業の経営幹部150人を対象に四半期ごとのアンケート調査を行っている。
Business Insiderは、2020年9月4~7日に集計された直近の調査結果に基づき、コロナ禍を機に経営陣が強化している投資分野を特定した。
ウェストモンローパートナーズのマネージングディレクター兼テクノロジー部門責任者グレッグ・レイヨークは次のように記している。
「事業活動が通常に戻る時期について皆が予想を示している。今回の調査の目的は、経営幹部の優先事項や懸念が、パンデミックによってどう変化したかを知るためだ」
来年に向けて経営幹部が注目している4つの大きなトレンドがある(調査レポートの全体はこちら)。
経営幹部の40%超が不動産関連予算とオフィス面積を削減
ウェストモンローパートナーズ
経営幹部の70%近くが出張費を削減し、約40%がオフィス賃貸のための不動産関連予算を停止していると回答した。また、削減した費用を、テクノロジーやデジタル・イノベーションに振り向けていることが調査から分かった。
こうした流れも当然だろう。ツイッターやジロウ(Zillow)のような大企業は、すでに在宅ワークの永続化を決めた。レイヨークは次のように記している。
「働き方はハイブリッドな形に行き着くだろう。100%がリモートになることはない。最良の事業成果を出すためには、直接会ってコラボレーションすることが時には必要とされるからだ」
ハイブリッドなオフィス形態になると、企業はWeWorkやConvene(コンビーン)といったシェアオフィスに費用をかけるかもしれない。こうした物理的な場によって、従業員はコミュニティ意識を醸成し、必要に応じて集まることが可能となる、とレイヨークは述べる。
約43%が今後6〜18カ月の間にM&Aを積極的に検討
ウェストモンローパートナーズ
ウェストモンローの調査によると、43%の経営幹部はM&Aを推進するとい う。M&Aがコロナ禍の影響から抜け出す方途と考えているのだ。この傾向は世界中で見られる。金融情報会社リフィニティブのデータによると、2020年7〜9月におけるM&A件数は、世界的にロックダウンが実施された前四半期に比べ80%増加した(ロイター報道)。
「企業は、デジタルに秀でることが事業にプラスとなると考えており、皆こぞって業績改善、顧客対応、柔軟性向上に資するデジタルツールを模索している」とレイヨークは記している。
さらに、不況時は、企業評価や期待値が多少低下するため、M&A交渉の好機ともなり得るという。
長期的な経済見通しは前向き
ウェストモンローパートナーズ
今回の調査では、経営幹部たちはコロナ禍が教育システム、旅行、サプライチェーンを含むアメリカ経済に対して永続的な影響を及ぼすと考えている。
例えば、実に75%もの経営幹部が、企業の事業スピードと機動性が以前より上昇すると考えている(4月の調査では65%)。47%の経営幹部は、家庭や企業の学び方が変化すると考えており、既に改革が進行中だという。
園児・小中高生向け教育ツールを提供するパワースクール(PowerSchool)のマーシー・ダニエル最高製品責任者は、コロナ禍を機に3つの大きな変化が起きると予想している。その3つとは、教育のパーソナライズ化、標準テストに代わるプロジェクト型学習、早期に子どもの専門性を育てる専門教育だ。
リモートワーク、社員研修、企業文化の見直しが生産性を左右する
ウエストモンローパートナーズ
レイヨークは次のように述べている。
「ナレッジワーカーと今日の経済を考えると、重要課題に取り組むうえで最も効果的なコミュニケーションと最高のコラボレーションが期待できるのは、皆が一堂に会することだ」
調査対象150人の経営幹部の見解によれば、仕事のスピードを高めるうえでハードルとなっているのは、従業員のスキルアップ、リモートワーク、組織内の根回しの3つだという。社会的隔離、ソーシャルディスタンス、完全なリモートワークを組み合わせると従業員の生産性が低下する、とレイヨークは言う。
レイヨークは、企業がテクノロジー投資を続けることで、コラボレーションに役立つデジタルツールが見つかると予想し、次のように述べている。
「今では誰もが自宅にPCを持っており、リモートワークの基本環境は整った。しかし、コラボレーションするために必要な次の段階のテクノロジーについてはまだ明らかになっていない」
リモートワークが長引くと、従業員の引き留めやケアに関する懸念が高まる。アメリカではコロナウイルスの次の波を迎えるなか、従業員の心身の健康を守ることが、来年、経営者に課せられた最大の課題となるだろう。
(翻訳・住本時久、編集・常盤亜由子)