グーグルクラウドのトーマス・クリアン最高経営責任者(CEO)。セールスフォースによるスラック買収報道はどう影響するのか。
Insider Intelligence
- セールスフォース(Salesforce)がスラック(Slack)の買収交渉を進めていると米ウォール・ストリート・ジャーナルが11月25日に報じた。
- アナリストの分析によれば、セールスフォースは買収を実現させれば、マイクロソフトとの競争を優位に展開できるとともに、グーグルクラウドに圧力をかけることができる。
- グーグルクラウドは他にもコラボレーションツールを手がけるスタートアップの買収を検討している模様。
- グーグルクラウドは今年前半、セールスフォース傘下のタブロー(Tableau)の競合にあたるデータ分析企業、ルッカー(Looker)を24億ドルで買収している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは11月25日、顧客管理ソフトウェア大手セールスフォースがビジネスチャットアプリのスラック(Slack)買収を検討していると報じた。
実現すれば、マイクロソフトと同社が展開する競合チャットアプリ「チームズ(Teams)」に会心の一撃を与えることになる。同時に、潜在的競合ともいえるグーグルクラウドにも大きなプレッシャーをかけることができる。
ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイブスによれば、2019年に157億ドル(約1兆6500億円)で買収したデータ分析企業タブローに続いてスラックを傘下に入れることで、セールスフォースはクラウドプラットフォームの強力な一角として新たに存在感を示すことになる。
アイブスはクラウド市場の現状について、まず、(2019年1月に就任した)グーグルクラウドのトーマス・クリアン最高経営責任者(CEO)は過去1年の間に「賞賛に値する成果」をあげたものの、マイクロソフトやアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とは「まだ距離がある」と分析する。
アマゾンとマイクロソフト、グーグルはクラウドビジネスの業績をそれぞれ異なる形で発表しているため、条件を揃えて比較するのが難しいものの、アマゾンとマイクロソフトの大きな優位は変わらない模様だ。
セールスフォースがスラック買収を実現させれば、この緊迫感のある勢力図に強力なプレーヤーがもう1社加わる形になる、というのがアイブスの見方だ。
グーグルクラウドも2021年、大きな買収に動く
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セールスフォースの忍び寄る影を一番気にしているのは当然、業界3位のグーグルクラウド。
「グーグルおよびグーグルクラウドは、マイクロソフトやセールスフォースにように機能の増強や製品ラインナップの拡大に動かざるを得ないだろう」(ダン・アイブス)
グーグルクラウドはチャット機能を含む「Googleワークスペース」(旧G Suite)をすでに展開しているが、(セールスフォースら競合のプレッシャーが強くなれば)成長のための収入源を新たに生み出していく必要があり、コラボレーションツールを手がけるスタートアップを新たに買収する動きも予想されるという。
「問題はツールだけにとどまらない。本丸のクラウドコンピューティングサービスについても、クリアンCEOに大きなプレッシャーがのしかかる。グーグルクラウドプラットフォームはここから半年、シェアを維持するためにユーザー拡大の努力が必要になるだろう」(ダン・アイブス)
グーグルが必要としているのは必ずしもチャットアプリを手がけるスタートアップというわけではなく、マイクロソフトとセールスフォースに対して優位に立てる可能性のあるソフトウェアであれば、買収に動く可能性は十分にある。
グーグルクラウドは2019年、セールスフォース傘下のデータ分析企業タブローと競合する、同じくデータ分析企業のルッカーを24億ドル(約2500億円)で買収している。
アイブスは、グーグルクラウドが大規模な買収戦略にのり出す「機は熟した」と見ており、2021年にはクラウドソフトウェア会社の買収が相次ぐと指摘する。
(翻訳・編集:川村力)