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LINEオンライン診療は開始秒読み。日本人の7割使うアプリは医療DX「起爆剤」となるか?

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LINEヘルスケアの室山真一郎代表。

撮影:三ツ村崇志

「誰もオンライン診療がこんなに急に動くとは思っていませんでした」

通話アプリLINEを使った医療・健康サービスを提供するLINEヘルスケアの室山真一郎代表は、コロナ禍における医療環境の急激な変化についてこう語った。

LINEヘルスケアは、医療系プラットフォーマーのエムスリーとLINEの共同会社として2019年1月に設立。2019年12月にLINEで医師に相談できる「健康相談サービス」を提供開始し、「LINEで健康に関する相談を受けられる」という認知拡大を地道に続けてきた。

しかし、新型コロナウイルスの流行で状況が一変。

当初の開発計画を前倒しし、オンライン診療サービス「LINEドクター」の開発に多くの力を注ぐこととなった。

LINEヘルスケアの室山代表に、コロナ禍の1年間と、まもなく公開を控えるオンライン診療サービスへの参入に対する考え方を聞いた。

コロナがもたらしたオンライン診療の「初診対応」という変化

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撮影:三ツ村崇志

2020年。コロナ禍において、LINEヘルスケアはさまざまな支援を行ってきた。

2月には、横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗客・乗組員にLINEが入った端末を無償で提供し、医師に健康相談をできるよう支援。さらに、国内での感染が広がってきた3月には、経済産業省の支援事業に採択され、健康相談サービスが無償で提供されることになった(支援事業による無償提供は8月末で終了)。

「結果として、8月末の段階で(健康相談サービスの)ご相談件数も累計30万件を超えました。その時点で年間の目標を大きく上回るような状況でした」(室山代表)

オンラインでの健康相談サービスが世の中の突発的な需要とマッチし、受け入れられる一方で、2020年4月には、さらに医療業界に大きな変化をもたらす出来事が起きた。

コロナ前までは、一度病院で診断を受けた人にしか認められていなかったオンライン診療が、対象疾患は限られるものの時限的に「初診」から利用できるようになったのだ。

5年、10年の計画が前倒しに

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菅政権は、オンライン診療を初診への適用を恒久化する方針を打ち出している。コロナ禍でのオンライン診療の初診適用は、病院へ足を運ぶことが感染リスクと考えられるための対応だ。

Reuters/ KimKyung-Hoon

オンライン診療はそれまで、重症化の兆候などを見落としかねないなど、さまざまな理由から医師と患者の間で既にコミュニケーションが取れている(一度面識がある)ことを前提とした利用を基本としていた。

LINEヘルスケアも、将来的なオンライン診療への参入を検討していたとはいえ、

「初診もオンラインでやれるかどうか、対象疾患がどうなるか。この2軸によって大きくサービスを提供できる状況かどうか決まります。その規定なり、ガイドラインなりが変わっていくところを横目に見ながら、5年とか10年という単位で(オンライン診療に関する)プロダクトを出していこうという計画でした」(室山代表)

日本の医療業界の規制緩和の流れがそこまで早いわけではない以上、様子を見守っていた状況だった。

しかし、それがコロナで一変したわけだ。

「その時点で、数年分のプロダクトの計画をすべて変更して、まずは基本プランに絞ってサービスを提供しようと準備してきました

と室山代表は語る。

また、9月に菅政権が誕生すると、さらに事態は前進する。新型コロナの流行が落ち着くまでの「時限的な措置」だったオンライン診療の初診対応を恒久化する方針が示されたのだ。

LINEが参入しない理由は、どこにもなくなった。

「LINEであることがすべて」

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撮影:三ツ村崇志

LINEヘルスケアがローンチを間近に控えるオンライン診療サービス「LINEドクター」は、通話アプリLINEを利用して、ビデオ通話をするように医療機関を受診できるサービスになる予定だ。

通常病院を受診する際に生じる医療費以外、LINEドクターを利用することで発生する患者の追加負担は発生しない。医療機関側も、基本プランである「ベーシックプラン」の利用料は初期費用・月額費用ともに0円だ(決済手数料は別途発生する)。

この価格設定について、室山代表は次のように語る。

「サービスを使っていただくためには、『摩擦』をどれだけ取り払えるかが大事だと思っています。ユーザー、医療機関に対するお金に関する摩擦を、まずはなくすべきだろうということでスタートする予定です」

一方、今後の収益化については、「機能アップ」という形で対応していく予定だ。

「どんな機能をいつ出すかはまだ言えません。ですが、より便利に、より使いやすく、より効果的・効率的に使えるサービスにしていくことで、例えばプレミアムプランというようにお金をいただく形へ広げていくことはありうると思います」(室山代表)

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一番右のグラフが、国別の月間アクティブユーザー数を示している。日本のアクティブユーザー数は、8600万人だ。

出典:LINE

オンライン診療業界を見渡すと、既にサービスの提供を開始している企業はいくつかある。4月以降、どの企業も大きくサービスの提供数を伸ばしているのが現状だ。

こういった先行サービスに対して、室山代表はLINEドクターの最大のメリットを、

「ユーザーに対する絶対的なバリューとして、やはり普段からご利用頂いている『LINEである』ということが全てかなと思っています」

と語る。

LINEのユーザー数は10月時点で約8600万。単純計算すると、日本人の7割近くの人がLINEを利用していることになる。

電話やチャットツールとして、LINEが既に「日常」の存在となっていることは、これからオンライン診療サービスを普及させていく上で計り知れないメリットと言える。

「(オンライン診療を受けるために)アプリを探してダウンロードしてとなると、非常にハードルが高いんです。それならいっそ『電話で聞いてください』『直接病院に来てください』となってっしまいます。使ってもらうには、日常の存在になっていなければ難しいんです」(室山代表)

「オンライン診療はリアルの診療を代替するものではない」

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撮影:三ツ村崇志

LINEヘルスケアでは2020年8月、健康相談サービスに登録している医師が、相談者に暴言を吐くというトラブルが起きていた。

医療や健康に関係するサービスを提供するプラットフォーマーとしての信頼性が損なわれる出来事に、室山代表は、

「ユーザーさんがご不快に思われたことに対して、心から申し訳ないです」

と謝罪の言葉を語っていた(具体的な対応策についてはこちら)。

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撮影:三ツ村崇志

医療や健康に関係したサービスでのトラブルは、人の命に直結しかねない。そこで問われるのは、プラットフォームとしての関わり方だ。

「LINEドクター」というオンライン診療サービスの提供にあたり、室山代表は次のように考える。

オンラインだからこそ起きることと、オフラインでも起きていることを区別しなければなりません

大前提として、オンライン診療は、これまでオフラインで行われていた全ての診察を代替できるわけではない。

聴診器を当てても分からないからこそ、さまざまな検査手法が存在しているように、オンライン診療で分からないことがあれば、対面での診療へと移行する必要が出てくる。

「我々が提供するのは、医療者が提供する価値の拡張のためのオプションでしかないと思っています。テクノロジーというのはすべからくそうなんです」(室山代表)

医療従事者はもちろんのこと、サービスを利用する患者側もこの枠組を正しく理解しなければならない。プラットフォームとして関われるのは、この部分だ。

そこがうまく行けば、オンライン診療はこれまで時間的、物理的に制約があり、医療機関に足を運べなかった人にとって、重要なオプションになるだろう。

11月サービス開始予定も、現状は開発最終段階か

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出典:LINEヘルスケア

一方で不安も残る。

LINEドクターのサービス開始は、2020年9月の段階で「11月」と明言されていた。しかし、11月30日の段階でサービスは開始されておらず、開発の遅れに対する公式見解も発表されていない状況だ。

サービス開発の現状に対して問い合わせたところ、次のような回答があった。

「全国的に、多くのクリニック様に開放する前に、現在、一部のクリニック様を対象にサービス稼働について確認する検証期間を設けさせて頂いております。


本ローンチスケジュールが確定次第、別途ご連絡をさせて頂きます」(LINEヘルスケア広報)

サービスの開発は最終段階まで進んでいるようではあるものの、目処については明言を避けた。

新たなサービスに開発の遅れはつきもの。

ただし、LINEを利用したオンライン診療は、そのプラットフォームの認知度やユーザー規模から、期待度は高い。その分、サービス開始の遅れは事前に導入を表明している医療機関(登録医療機関数は未公表)へのオンライン診療の導入の遅れや、それを利用する可能性があった患者の受診機会の喪失にもつながりかねない。

新型コロナウイルスの感染が拡大している現状において、巨大プラットフォームによる医療サービスの開発は、その巨大さ故に、一般的なサービスの開発以上に社会的な責任がともなう。

LINEは医療DXを推進する起爆剤となるか?

LINEヘルスケアのイメージ

出典:LINEヘルスケア

皮肉にも、コロナの流行によって大きく進んだ医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)。この流れは、これから先も加速していくことだろう。

先行企業の中には、オンライン服薬指導や電子カルテなどと連携している企業もある。LINEヘルスケアとしても、オンライン診療の導入に留まらず、今後幅広く医療のDXを進めていく考えを示している。

8600万を超えるユーザーを持つLINEが参入することで、今後、医療のオンライン化はどう進むのか。

地殻変動が起きる瞬間は、もうすぐそこまで迫っているのかもしれない。

(文・三ツ村崇志

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