ウォール街の近くにある「チャージング・ブル」で記念撮影する人々。
Reuters / Lucas Jackson
- JPモルガンのストラテジストは、10月と11月の相場変動には、高齢の個人投資家が「部分的に責任があり」、若いトレーダーは「かなり控えめな役割だった」とみている。
- 若いグループは個別銘柄やオプションに投資する傾向があるが、高齢のグループは投資信託(ファンド)に資金を投じている。
- 高齢のグループは2020年のほとんどの期間、株式ファンドを売って、債券ファンドを購入しており、これが株式市場の足かせになっているとJPモルガンは指摘している。
- 個人投資家の割合は、6月の市場全体の約23%から9月にはわずか16%に減少した。この減少は、個人投資家が夏に相場の上昇を支えていたという「物語に疑問を投げかけている」とJPモルガンは述べている。
JPモルガンのストラテジストによると、2020年の夏にミレニアル世代の投資家が注目を集めたが、実際に市場の変動を促進する大きな役割を担っていたのは年配の投資家だった。
個人投資家の取引活動の急増が、9月に株式が史上最高値を更新したことと重なり、ウォール街は個人投資家が市場の牽引役になったのではないかと考えるようになった。実際、初めて投資をするミレニアル世代やZ世代の投資家たちが、リスクの高いデイトレードやボラティリティの高い株への関心を見せたことで注目を集めていた。
レオン・クーパーマン(Leon Cooperman)やウォーレン・バフェット(Warren Buffett)といったウォール街の伝説的な投資家たちが、若い投資家に向けてリスクの高い取引をしないように注意を促していたが、JPモルガンによると、最近の市場の乱高下では、年配の個人投資家が大きな役割を果たしていたという。
ニコラオス・パニギルツォグロウ(Nikolaos Panigirtzoglou)らによると、高齢のグループは年間を通じて株式ファンドを売って、債券ファンドを購入しており、株式市場の足を引っ張っている。10月の調整局面や11月の反発では彼らに「部分的な責任がある」という。そして、ファンドよりも個別銘柄やオプションに投資する傾向のある若い投資家は、市場の動向に関して「かなり控えめな役割」だったと付け加えた。ニューヨーク証券取引所(NYSE)の信用取引口座のデータによると、9月の買いは約300億ドルと、8月の400億ドルから減少しており、若い投資家が「ほとんど役割を果たさなかった」ことを示唆しているという。
10月の信用取引口座データはまだ公表されていないが、コールオプションのフローが少ないことから、過去2カ月間に渡って若年層のトレーダーによる影響は軽微であったことを示唆していると彼らは述べている。
10月の信用取引口座データはまだ公表されていないが、コールオプションのフローが少ないことから、過去2カ月間に渡って若年層のトレーダーによる影響は軽微であったことを示唆していると彼らは述べている。
取引量の減少を示すデータは、個人投資家が市場を席巻しているという主張に反するものだ。人々は経済の再開と市場の急速な上昇から利益を得ようとしたため個人向け証券会社の取引量は夏の間に急増した。ロビンフッド、Eトレード、チャールズ・シュワブ、TDアメリトレードを通じて行われた取引は、6月のアメリカの株式市場全体の取引高の23%を占め、過去最高を記録している。しかし、個人投資家のシェアは9月には16%にまで落ち込み、パンデミック前の水準をわずかに上回っているレベルになった。
JPMorgan
第3四半期の個人投資家による取引量の急激な減少は、「アメリカの個人投資家による個別株買いが2020年の株式市場の上昇の主な原動力となっているというストーリーに疑問を投げかけている」とJPモルガンは述べている。
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)