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眞子さまを「結婚」に傾斜させる制度。女性宮家よりも唐突に「皇女」議論が出る理由

秋篠宮さまは、55歳の誕生日を迎えるに先立って行われた記者会見で、延期されている長女眞子さまの結婚について、「結婚することを認める」と述べられた。結婚に向けて、一歩前進とも受け止められている一方で、結婚で皇室を離れる女性皇族に対して、唐突に「皇女」という名称を使った制度を創設する話が浮上している。

眞子さまと結婚、そしてこの「皇女」という制度。どう関係しているのだろうか。

眞子さま、小室さん

延期になっている眞子さまと小室圭さんとの結婚。眞子さまは改めて文書で結婚の意思が固いことを公表された。

Reuters/Shizuo Kambayashi

「私たちにとっては、お互いこそが幸せな時も不幸せな時も寄り添い合えるかけがえのない存在であり、結婚は、私たちにとって自分たちの心を大切に守りながら生きていくために必要な選択です」

秋篠宮家の長女眞子さま(29)の、小室圭さんとの結婚を強く望むお気持ちが文書で公表されたのは11月13日のことだった。眞子さまの結婚については、反対する世論も強い。そのことはご自身も文書の中で、

「様々な理由からこの結婚について否定的に考えている方がいらっしゃることも承知しております」

と触れていた。

だが、それでも結婚したいという強い思い。そのことと遠く近く関係していると思う、皇室をめぐるある動きが報じられたのは、眞子さまの文書公表から11日経った、24日のことだった。

唐突に出てきた「皇女」という制度

秋篠宮一家

減り続ける皇族の数。そのことは公務の担い手がいなくなってしまうということでもある。

Reuters

「皇女」という名を使う、新たな制度が政府内で検討されていると突然、報道された。結婚で皇室を離れる女性皇族に「皇女」という呼称を贈り、公務を続けてもらうことを検討しているという。このことが、眞子さまの結婚への思いとどう関係しているか。そのことを書いていきたい。

「皇女」という制度が検討される背景から説明するなら、第一には皇族数の減少だ。皇室は現在18人で構成されているが、うち30代以下は7人。そのうち悠仁さま以外の6人は女性。女性は結婚すれば皇族でなくなるから、将来的に公務の担い手が減ってしまう。

このことはだいぶ前からわかっていた。だから2017年に上皇さまの退位を決めた「皇室典範特例法」の付帯決議で、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」と「女性宮家の創設」を速やかに検討せよと、政府に求めていた。それなのに、この検討がどうなっているのかは、「お代替わりの儀式が優先」ということでほとんど表に出ていなかった。

だが、新型コロナウイルスの影響で延期されていた「立皇嗣の礼」が11月8日に終わり、いよいよ政府も何らかの動きを示さざるを得なくなってきた。そこで報じられたのが、「女性宮家」ではなく「皇女」だった。「女性宮家の創設」は当面見送る方針、と報じたメディアもあった。

「女性宮家」を困難にする「男系男子」の考え

こちらの背景にあるのは、安倍晋三前首相の支持母体であるコアな保守層だ。女性宮家とは、結婚した女性皇族が皇室に残り、「宮家」をつくるということ。すると、結婚相手である一般男性も皇族とするのか、生まれた子どもはどうなのか、などを決めなくてはならない。子どもを皇族とすれば、それは「女系天皇」への道を開くことになる。コアな保守層は、「男系男子による皇位継承」に強くこだわっている。政府にすれば、これは厄介なのだろう。

その点「皇女」の場合、報道によると結婚した女性皇族は皇族でなく、特別職の国家公務員になるという。これなら「男系男子」の人たちも反対しない。そして公務の担い手は減らずにすむ。これは楽チン、と政府関係者は考えたに違いない。

「皇女」という存在はパートタイム勤務

皇室一家

「女性宮家」ではなく、唐突に浮上した「皇女」という名称の制度。皇族ではないが、公務を担えるという立場だという。

Reuters

そしてここから、眞子さまの「結婚を願う強い思い」の話をするために、失礼とは承知しつつ、皇室というものをひとつの「会社」に置き換えてみる。

この“会社”の第一の特徴は、女性の結婚退職が明文化されているということだ。皇室典範第12条に「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と結婚したときは、皇族の身分を離れる」と定められている。続いて第二の特徴は、先ほど書いたが「深刻な人手不足」だ。

この観点で「皇女」の制度を一言で表すと、「結婚退職した後も、パートタイムで働いてね」になると思う。結婚→退職は不変。ただし、退職後も働いてもらうというのだから、それは正社員でなくパートタイムだろう。パートタイムというのは、それを積極的に選ぶ人がいて、初めて一つの勤務形態になる。だが「皇女」は違う。結婚→退職→パートタイム勤務。それを選ばざるを得ない。皇室がそういう“会社”になる、ということだ。

と説明したら、「それでは安倍政権の『女性活躍社会』みたいではないですか」と言った女性がいたが、言い得て妙だと思う。とにかく働く女性が増えればいい。だから非正規雇用も問題なし。そんな「女性活躍社会」。女性一人ひとりがどう活躍したいのか、その視点がない。

結婚退職が決まっているからこその選択

黒田清子さん

黒田清子さん。2005年にご結婚され、皇室を離れられた。

Getty images/Koji Sasahara

皇室に話を戻すと、眞子さまは皇室という会社で活躍したいのだろうか。お気持ちは、わからない。

代わりに、皇室という会社で働いたことを、率直に語った黒田清子さん(51)の思いを紹介する。清子さんは1969年、上皇さまの長女紀宮さまとして生まれた。成人してからは誕生日ごとに会見、または文書で折々の思いを述べた。以下は2002年、33歳のお誕生日にあたっての文書回答。少し長いが引用する。

「皇族という立場において、男女の差やその役割の違いというものは特別にはないと感じています。(略)内親王という立場も、他の皇族と変わるところはないでしょう。私の場合、宮中の行事など以外では、独りのお務めが多いため、これまであまり女性皇族ということを意識することも少なかったように思います。ただ、内親王という立場は、先行きを考えるとき、将来的にその立場を離れる可能性がどうしても念頭にあるため、中途半端に投げ出してしまうことのないように、継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」

紀宮さまを一人の働く女性ととらえるなら、なんと切ない言葉だろうと思う。

だって「男女の差やその役割の違いというものは特別にはない」と感じている。それなのに、「継続的な責任ある立場に就いたりすることは控えてきた」という。その理由は「将来的にその立場を離れる可能性」があるからで、「中途半端に投げ出してしまうことのないように」するためだというのだ。責任感があるがゆえの、責任ある立場の回避。結婚退職が明文化されているから、紀宮さまはそういう選択をしてきた。

「人手不足が深刻だから」と言われても

「女性宮家」は、「結婚退職」という制度を改めるものだ。紀宮さまのような切ない社員を出さないためには、一歩前進だ。とはいえ、不完全だと思っていた。「とにかく結婚しても辞めないで」だけに見えたからだ。

仮に私が、これから結婚する女性社員だったとしよう。「人手不足が深刻なので、とにかく辞めないで」と言われても、テンションが上がらない。「これからは、責任ある立場についてもらいたい。制度を変えるから残ってほしい」なら、前向きに考えたくなる。だから、政府のみなさまには、紀宮さまの言葉をよく噛みしめてほしいと思っていた。

ところが、出てきたのが「皇女」。結婚→退職→パートタイム勤務という制度。「退職の心配をせず、責任ある立場につきたい」という人、「もうここでの仕事はいいから、結婚を機に別な道を歩みたい」という人、どちらの思いにもこたえない。そういうあんまりな制度に見える。

「結婚退職」は守るべき規範だったが

眞子さま

眞子さま世代にとって「結婚=退職」はもはや当たり前の選択ではない。

Getty images/Carl Court

話を眞子さまに戻す。どんな働き方をしたい女性なのか、それはわからない。ただし眞子さまは、紀宮さまに似ているところがある人だと想像している。

なぜなら眞子さまは今、「インターメディアテク」という博物館の特任研究員をしている。紀宮さまも学習院大学卒業後、山階鳥類研究所に非常勤職員(のちに非常勤研究員)として勤務した。叔母と姪。まじめで働き者の系譜だと思うし、そういう女性にとって、結婚→退職を前提にする会社はどう映るのだろうと思う。

紀宮さまは、「そんな会社、やだ」などと言うことはもちろんなかった。将来、辞める可能性があるから、「責任ある立場に就いたりすることは控えてきたということはあるかもしれません」と、ごく抑制的に気持ちを語ったことは前述した通りだ。母である上皇后美智子さまは、紀宮さまが生まれて4カ月後に、

「結婚までは皇族として生活させていただくのだから、それにこたえるような人になってほしいと思います」

と述べている。そのような母のもと、昭和に子ども時代を過ごした紀宮さまだから、「結婚→退職」は疑問に思うより「守るべき規範」だったと思う。

「結婚」への思いが強くなる制度

眞子さまが生まれたのは、紀宮さまに遅れること22年、1991年=平成3年だ。男女雇用機会均等法が施行された1986年から5年も経っている。「結婚→退職」を当たり前ととらえる世代ではない。

であれば、眞子さまにとって皇室という会社は、働きがいを感じられる職場とは言いにくいのではないだろうか。公務の一つ一つは充実し、喜びも与えてくれるに違いない。だけど、女性の位置づけがそもそも結婚退職前提で、それでも働いてほしいと求められているのは、「女性宮家」にしても「皇女」にしても、人手不足解消の一点からだ。

女性が働く気持ちは二の次の職場にいれば、結婚への思いは強くなる。どんな女性でも、理解できることだと思う。仮に「結婚」より先に「転職」を考えたくても、眞子さまはそれもできない。となれば、ますます結婚への思いは強くなる。当然のことだろう。

最初の方に、「眞子さまの結婚したいという思いと、遠く近く関係している皇室をめぐる動き」と書いた。「遠く、近く」についての説明は以上だ。そしてこのことは、眞子さまに限った話ではない。佳子さまにも、愛子さまにも、「結婚→退職」は既定の事実で、その先にパート勤務という道が決まるかもしれないのだ。

それはすべて、「男系男子による皇位継承」からきている。その事実にどんよりしてしまうのは、私だけだろうか。

(文・矢部万紀子

矢部万紀子:1961年生まれ。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、「AERA」や経済部、「週刊朝日」などに所属。「週刊朝日」で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長を務めた後、2011年退社。シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に退社し、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』。最新刊に『雅子さまの笑顔』。

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