Zoom(ズーム)のエリック・ユアン最高経営責任者(CEO)。セキュリティに関する懸念などの障害を乗り越え、成長軌道に安定感が出てきた。
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- Zoom(ズーム)が8〜10月期の決算を発表。アナリスト予想を上回り、売上高は前年同期比367%増に達した。
- ただし、売上総利益率は前年同期比でわずかに減少。その理由について、同社の最高財務責任者(CFO)は、学生など無料ユーザーの比率が高まった一方で、クラウドコンピューティングへの支出が増加したことを挙げた。
- とはいえ、Zoomはリモートワークシフトがパンデミックの収束後も続くと想定している。足もとでは、既存ユーザーの解約率はわずかながら予想を下回り、好調に推移している。
Zoomは11月30日、2020年第3四半期(8〜10月)の業績を発表。売上高はアナリストの予想を上回り、7億7720万ドル(約820億円)で、前年同期比4.7倍(367%増)となった。
ただし、売上総利益率は前年同期の72.3%から68.2%へと減少。アナリスト向けの決算カンファレンスコールで、Zoomのケリー・ステッケルバーグCFOは、(同社が無償提供している)高校生以下の子どもたちを含め、無料ユーザーの比率が増加したことに加え、企業向けクラウドサービスの利用量が増え続けていることを理由に挙げた。
クラウドサービスに関して言えば、Zoomはユーザーの急増に対応するため、今年前半にアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)との契約を拡張し、新たにオラクル(Oracle)とクラウド契約を結んでいる。
決算発表のあった11月30日の午後、AWSは、同社がZoomの「推奨クラウドプロバイダー」に指定されているとコメント、両者の協業関係がきわめて密接であることを強調した。
なお、ステッケルバーグCFOは、無料ユーザー比率の増加とクラウドサービス利用量の増加、どちらがより(売上総利益率の減少に)大きな影響を及ぼしているのかとの質問に対し、いずれも同じくらいの影響があると説明。今後数四半期は現状の水準で推移し、その後「長期的なターゲットとしている水準を回復する」との見方を示した。
通期売り上げは「2700億円、前年比4倍増」へ
2019年4月18日に米ナスダック市場に上場を果たしたZoom。2年足らずでここまでの成長を遂げるとは、ユアンCEOですら想像していなかっただろう。
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Zoomについては以前から、無料ユーザーにどうやって課金していくのか、あるいは無料から有料への移行をどう促していくのか、疑問視する声があがっていた。
そうした見方に対する動きとして、同社は最近、ユーザーがオンラインイベントをマネタイズするための新たなプラットフォームをローンチ。2020年末までは同プラットフォームの利用について追加料金を課さないとアナウンスしているが、2021年以降はチケット売り上げから利用料を徴収する方向で検討中だという。
また、Zoomは企業がオフィスを再開して従業員が復帰したあとも、リモートワークのトレンドは続くと見ている。同社が今回発表した2021年1月期の通期業績見通しによれば、売上高は25億7500万ドルから25億8000万ドル(2700億円前後)の間で着地し、前年比でおよそ4.1倍(414%)の成長を見込む。
「2021年1月期の通期業績予想は、現在のビジネス環境をベースにしたもので、当社としては楽観的な見通しを持っているものの、新型コロナウイルスの影響とその程度、それに伴う経済悪化の懸念はほぼ予測不能であることにはくれぐれも留意されたい」(ステッケルバーグCFO)
同CFOによると、解約率は同社の予想を下回っており、ビデオ会議以外にクラウド電話システム(Zoom Phone)など他のZoom製品を使うユーザーが増え、より多くのユーザーが同社のエコシステムに組み込まれていく状況にある。
同社はさらに、月額プランから年間プランへの移行を促す取り組みを強化しているという。
(翻訳・編集:川村力)