いまごろ「逃した魚は大きい」と感じているだろうか。ソフトバンクの孫正義社長兼会長。
REUTERS
- ソフトバンクが今年の第2四半期から第3四半期にかけて、保有するスラック(Slack)株を売却していたことが明らかになった。セールスフォース(Salesforce)による買収プレミアムをみすみす逃したことになる。
- 売却金額は10億ドル以上、9月4日には保有するすべての株式を手放した。
- セールスフォースは12月1日にスラックを277億ドルで買収すると発表している。
ソフトバンクは、スラックがベンチャーキャピタルなどから巨額の資金調達を行っていたスタートアップ時代からの出資者だ。
スラックは2019年6月、ニューヨーク証券取引所に上場を果たし、9月までは引き続き大株主であり続けた。
しかし今年9月、ソフトバンクは保有するスラック株をすべて手放したことを投資家向けの説明会で明らかにした。同社はセールスフォースがスラック買収のために準備していたプレミアムをみすみす逃したことになる。
セールスフォースは12月1日(米国時間)、スラックを現金と株式合わせて277億ドル(約2兆9000億円)で買収すると発表。
スラックの既存株主は1株あたり26.79ドルの現金と、セールスフォースの0.0776株を手にすることになる(セールスフォースの株価は12月1日の終値で241.35ドルなので、スラック株主が受け取る株式は45.51ドルに相当)。
ソフトバンクが保有するスラック株を売却したのは2020年第2四半期から第3四半期にかけてのことで、夏には40ドル弱で取り引きされた時期もあったものの、それ以外はほぼ25ドル前後で推移していた。すべての株式を手放した9月4日時点の株価は34ドル弱だった。
それでも、ソフトバンクは総じてうまくやったと言っていい。
2017年10月の資金調達ラウンドではリードインベスターを務め、そのあとのラウンドでも出資を続けた。結果として、計3億3400万ドル(約350億円)を支払い、最後は10億ドル(約1050億円)強で売り抜けたのだから。
実際の出資金の出元はソフトバンク傘下のビジョン・ファンド(SVF)で、この1000億ドル規模の巨大ファンドはコワーキングオフィスのウィーワーク(WeWork)や配車サービスのウーバー(Uber)、ロボットピザのズーム(Zume)にも投資している。ファンドを率いるのはソフトバンクのシニアマネージングパートナー、ディープ・ニシャールだ。
セールスフォースによるスラック買収手続きは2021年7月に完了する予定。ベンチャーキャピタルのアクセル(Accel)やベンチャー投資家のチャマス・パリハピティヤらスラックの既存株主はプレミアムの恩恵に預かることになる。ソフトバンクは抜け出すのがちょっと早すぎたようだ。
Business Insiderは現在、ソフトバンクにコメントを求めているが、現時点で回答を得られていない。
(翻訳・編集:川村力)