新型コロナウイルス感染拡大による就活のオンライン化。急激な変化に対応できず、選考活動を延期した企業も多々存在する。
撮影:今村拓馬
新型コロナウイルスで「第3波」とも言われる感染拡大が、都市部を中心に押し寄せている。第1波と違い、冬に入るタイミングから感染が増えていることを考えると、2022卒の就活は2021卒同様、大きな影響を受ける可能性がある。
筆者は「UZUZ」という就職エージェントで、第二新卒や新卒といった20代を中心にキャリア支援を行っている。今年のコロナショックにより、2021卒(新卒)の就活はもちろんのこと、入社したばかりの2020卒も大きな影響を受けた。
企業は緊急事態宣言による経営環境の悪化、合同企業説明会の中止、WEB面接への対応と、急激な変化に対応できず、選考活動を延期するしかなかった。
また、新入社員の受け入れも、オンライン研修の対応ができない企業は、ただ新入社員を自宅待機に。
その結果、2021卒は未内定者が前年同期比でまだ多く、2020卒は内定取り消しや短期離職で転職活動に苦戦している人もいる。
コロナが変えた就活の風景、Twitterシフト
撮影:今村拓馬
そんなコロナショックの2020年、企業説明会やWEB面接など、採用活動もオンラインに移行しつつある。一方、就活生の間では「Twitter就活」が定着した。
今までもTwitterで「就活垢(アカウント)」を作って情報収集を行うことはあったが、コロナショックによってより活発に就活に利用されるようになった。
さらに、そこに企業側の人事採用担当者や就職エージェントもTwitterアカウントを作って参入している。具体的には、次のような状況が発生している。
- 就活生同士がTwitterでつながり、情報交換や悩みを共有し合っている
- 人事採用担当者が企業や採用に関する情報を発信
- 就活生と人事採用担当者が直接つながり、そのまま選考に進む
- 就職エージェント、キャリアコンサルタントも積極的な情報発信、相互フォローをしてつながりを創出
- 内定者がTwitterアカウントを作成し、次年度の新卒向け採用活動を主導(2021卒内定者10名ほどが「#22卒」で活動)
- 新卒向けだけでなく、中途採用における候補者にもTwitterでアプローチ
このように、コロナショックによってTwitterが就職活動(採用活動)のツールとして一気に定着したように思う。
「自分を第三者に見てもらうきっかけ」
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就職活動で実際にTwitterを利用している就活生に、その用途を聞いてみたところ、大半は次の用途で利用していた。
- 就活、企業の情報収集(面接ノウハウ、採用情報など)
- 就活生とのつながりづくり(例:#22卒と繋がりたい)
- 企業へのアプローチ(経営者、人事へのDMなど)
ただ、他にこのような意見もあった。
- 自分の目標設定を発表する
- 色々な人の考え方を知る
また、就職活動でTwitterを利用するメリットも聞いてみた。
自分の目標や意見を第三者に見てもらい、評価してもらう目的や、情報収集、イベントなどの機会創出という目的がある。
・人脈が増えるのはもちろんのこと、自分の目標をTwitter上に書き込むので「必ず達成しなければ」という戒めにもなります。
・Twitter経由で多くのイベントに参加できる。
・自分の考えをつぶやき、第三者に見てもらうきっかけになる。
・周りの就活生の動きがわかる。
逆にTwitterを就職活動に利用することのデメリットも答えてもらった。
・しつこい勧誘など誘導される危険性があること。
・Twitterによるストレスを感じることがある。
・勧誘が多い。情報の取捨選択が難しい。
しつこい勧誘、膨大な情報によりストレスや危険を感じていることが分かる。
採用は「いきなり選考に誘導しないこと」
一方、採用側のメリットや注意点はどうだろう。
人事アカウントとしてフォロワー数1.5万人を抱える「山森 拓実(人材教育コンサルティング企業「アチーブメント」/人事)」さんに、Twitterでの採用活動に関して、話を聞いた。
Twitterを活用した採用活動の成果、手法についてまずは聞いてみた。
Twitter経由で今年度は1名が内定。さらに最終面接まで1名が進んでいます。学生に泥臭くアプローチして、コミュニケーションを重ねながら、双方の信頼関係を醸成できたら、学生向けセミナーや選考に進んでもらっています。
学生にアプローチする際に意識していることとして、「いきなり選考に誘導しないこと」と山森さんは説明する。
お互いの信頼関係が築けていない状態で、一方的に選考を勧めても相手にとっては迷惑だし、場合によってはブロックされてしまう可能性もある。
雑なコミュニケーションは取らず、初対面の人と取る上での最低のマナーを守って信頼関係を築いていきます。具体的にはこんな感じです。
1.まずは気になる学生アカウントをフォロー
2.学生のツイートでいいものに「リプ(返信)」を送る
3.定期的にアカウントを見に行き、「いいね」を押す
4.「リプ(返信)」「いいね」が双方向で発生し始めたら「いつもありがとう」とお礼を伝える(※双方向のコミュニケーションが発生するのが信頼関係のバロメーター)
5.「DM(メッセージ)」を送り、オンライン面談に進む
Twitterでは気軽にフォロー、リプ(返信)、DMを送ることができるが、その気軽さに甘えて一方的なコミュニケーションを取ってしまうことには注意したほうが良さそうだ。
Twitterを本格的に始める前には、Twitterに対してあまりポジティブなイメージは持っていませんでした。採用対象者となるような優秀な学生はほとんどいないだろうと。ただ、知人の経営者から強く勧められたこともあり、最初は個人ブランディングの目的でTwitterを始めました。
はじめはあまり良い印象を持っていなかったTwitterだが、今となっては1.5万人のフォロワーを抱えるアカウントにまで成長させることができたという。個人的な利用から採用活動への活用には、どうつなげていったのか。
Twitterをやっていると、同業の人事アカウントが多いことに気づきました。さらにツイートを見たり、絡んでみると優秀な人が多く、Twitterの印象が変わりました。これであれば人事の人脈ができるだけでもちゃんとやる価値があるぞと。
すると、フォローしていた人事アカウントの周りにフォロワー2000人以上の学生アカウントがあることに気づきました。学生側にも優秀で意識が高い人がいると知り、「これは採用活動でも使えそうだ」と思いました。
個人ブランディング目的から始め、最終的には個人ブランディングだけでなく、本業の採用活動においても活用できるようになり、山森さんにとって一石二鳥のSNSとなったわけだ。
最後に、これから人事アカウントを運用したいと考えている人事採用担当者の方々のために、Twitter運用のアドバイスをしてもらった。
1.まずはフォロワーを増やす(最低でも3000フォロワーくらいまでは)
2.学生とのコミュニケーションが目的なので、相互フォローして積極的に絡む
3.ツイートする際には、会社の宣伝はあまりせずに、自分のことを発信する(日々の仕事、生活で感情が動いた瞬間を切り取る)
心理的にちょっとだけ楽になれるツイート中心
山森さんには劣るが、筆者もキャリア支援目的でTwitterを利用している。具体的にはどのようなツイートをしているかと言うと、就職活動や転職活動、キャリアに悩む20代向けにノウハウだけでなく、心理的に楽になるツイートを中心に発信している。
極論だけど、仕事には「人ができない仕事」と「人がやりたくない仕事」しかない。自分ができないからお金を払うし、自分が「やりたくないから」お金を払ってやってもらう。だから、「やりたいことを仕事に」と考えている人は、他人がお金を払ってでもやってもらいたいレベルにならないと仕事はない。
「学歴で見ないでほしい」と言う就活生がいるけど、学歴を見ないのは逆に不公平。生まれ持った地頭の差はあるかもしれないけど、目標に対して努力した成果として学歴を評価するのはむしろ自然。学歴で負けてるのであれば、その分スキルや経験といったアピール材料を増やしたり、伝え方を工夫しよう。
面接苦手な人に共通してるのが「面接だからってかしこまりすぎ」問題。敬語は「ですます」ができれば全く問題ないし、噛んだって止まったって面接官は大して気にしない。「よく見せよう」とするから緊張して失敗するわけで「会話を楽しむ」くらいのスタンスで臨むのが結局一番良かったりする。
これらのツイートを見て、「面接を受ける際の気が楽になった」「働いていて同様のことを感じた」といった意見をもらえるのは、キャリア支援という仕事の面でもかなり役立つのは間違いない。
Twitterを運用して感じる、4つのメリット
撮影:今村拓馬
本格的にTwitterの運用を始めたのはここ半年だが、すでに運用メリットを感じる点がいくつもある。
- 個別で伝えていたことを、Twitter上ではマス向けに効率的に発信できる
- 一方的な情報発信ではなく、双方向にやりとりができるため、反応が分かり議論できる(いいね、リプ、DM)
- 140文字に情報をまとめることで、より伝わりやすい情報になる(さらに文章をまとめる力が上がる)
- 就業支援のユーザー、新卒向け就活イベント(#UZUZインカレ)の集客に利用できる(ビジネスメリット)
就活に苦戦する学生がいる一方で、「マイナビ企業新卒内定状況調査」によると、企業側も10月1日時点で採用充足率は82%と、採用目標人数に達していない企業が相当数ある。こうしたミスマッチを解消する、有効な手段になり得るといえるだろう。
一方、不確かな情報が氾濫するというリスクも
ただし、Twitter就活には注意も必要だ。
Business Insider Japanの過去記事にもあるように、匿名アカウントによる情報発信や悪質な勧誘も発生している。
新型コロナウイルスの感染の影響が長期化すれば、よりTwitterを中心としたオンラインでの情報収集、就職支援が増える可能性はある。当然、こうしたリスクも踏まえた上で活用すべきだろう。
できる限り匿名アカウントよりも実名アカウント(個人が特定できるアカウント)を参考にしたり、執拗な勧誘はブロックしたり、自分の身は自分で守ることも求められる。便利なツールであることは間違いないので、うまく利用してコロナショックを乗り越えてもらいたい。
(文・川畑翔太郎)