- アメリカ航空宇宙局は、地球の近くを通過したの謎の物体が、1960年代のセントール・ロケットのブースターであることを確認した。
- 地球の重力がブースターを一時的に捉え、太陽を周回する軌道に戻る前に地球を2周することになる。
- 科学者は、この物体の「指紋」を宇宙空間にある既知のセントール・ブースターと比較することで同じものだと確認した。
2020年12月1日、謎の物体が地球から5万kmほどの距離にやってきた。何カ月も頭を悩ませていた科学者はついにこの訪問者をが何者かを特定することに成功した。
小惑星ではない。彗星でもない。エイリアンの宇宙船でもない。12月2日、NASAは「2020 SO」と呼ばれていたその物体が1966年に打ち上げられたセントール・ロケットのブースターであることを確認した。
このロケットは1966年9月20日、月着陸船 「サーベイヤー2号」を載せて打ち上げられたが、着陸船はスラスターの1つが噴射できなかったために月面への着陸に失敗した。「サーベイヤー2号」は月面に衝突したが、ロケットブースターは着陸船を月の目的地に向かって推し進めた直後に分離していた。ブースターはその後、宇宙の深淵に落ちていき、見えなくなった。
地球の重力は、地球を周回する小さな月のように、ロケットブースターをつかまえた。ブースターは2021年3月に地球の重力から離脱する前に地球を2周し、その後、太陽を周回する新しい軌道に入る。
12月1日はブースターが我々の最も近くを通過してフライバイを行った日だった。
ハワイ・マウイ島の望遠鏡は、9月にこの新しい物体を最初に発見した。その軌道は、地球に異常に近く、地球と同じ軌道平面にあるという不自然なものだった。太陽の周りを回っている小惑星の多くは、地球の軌道平面の上や下に傾いた軌道を描いている。
「私はすぐに不審に思った」とNASAの地球近傍天体研究センターのポール・チョダス(Paul Chodas)所長はニューヨーク・タイムズに語った。
チョダス所長と同様に、多くの科学者がこの物体を「サーベイヤー2号」を打ち上げたブースターだと疑っていた。それはその物体の軌道を1966年9月まで遡ると地球に非常に接近していたため、地球から打ち上げられた可能性が高かったからだ。
この理論を検証するために、科学者はハワイのマウナケア島にあるNASAの望遠鏡を使って、2020 SOを観測した。彼らは物体のスペクトルデータ(宇宙にある物体の指紋のような働きをする電磁波の波長)を記録した。もし異なる波長であれば異なる化合物であることになる。
その後、科学者が、2020 SOのスペクトルを1971年に人工衛星を打ち上げた後、地球を周回している既知のセントール・ロケットのブースターと比較したところ、一致した。
「この結論が得られたのはチームの多大な努力があったからだ」と、この研究を率いたアリゾナ大学の惑星科学者、ヴィシュヌ・レディー(Vishnu Reddy)はプレスリリースで述べた。
「我々はついに、この謎を解くことができた」
(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)