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新作VRゲーム「アルトデウスBC」開発秘話 ── クリエイター夫妻に仕事も家庭も円満のコツを聞いてみた

ALTDEUS:Beyond Chronos

Facebookの新型VRヘッドマウントディスプレイ「Oculus Quest 2」のローンチタイトルとしても紹介され、世界でも注目されているタイトル「ALTDEUS:Beyond Chronos」が発売となった。価格はOculus Quest Storeで3990円。

出典:MyDearest

世界的な注目VRプラットフォームの話題ゲーム開発を、「コロナ禍の大混乱の中」「夫婦で開発」したら家族には何が起こるのか?

クラウドファンディング「CAMPFIRE」で達成率811%にあたる支援総額2028万円超でサクセスした日本発のVRゲーム「ALTDEUS:Beyond Chronos」(以下、アルトデウスBC)が12月4日、ついに全世界で発売となった。

アルトデウスBCの開発秘話を通して、監督の柏倉晴樹さん(30代)と、その妻であるゲームデザイン・演出を担当する柏倉夏実さん(30代)に公私共にパートナーであるクリエイター夫妻に、新たな夫婦の関係性について聞いてみた。

1.「ルールを決めない」ルール……「〇〇ができなかったらダメ」をやめる

柏倉夏実さん

ゲームデザイナーで演出も担当している柏倉夏実さん。

撮影:小林優多郎

「仲が良すぎる」

柏倉夫妻に対して、アルトデウスBCの開発会社・MyDearestのスタッフは、みな口をそろえてそう話す。

仲睦まじい家庭と言うのは簡単だが、それを実現するのは難しい。筆者もフリーランスのデザイナーの妻と暮らしているが、公私ともに四六時中一緒にいれば小さなことで口論になる。

それを避けられるルールづくりについて、妻の夏実さんは逆に「あまりルールを決めないようにしている」そう。

夏実さん「お互いの役割分担は決めていない。できそうなときにやり、できなさそうなときにお願いする」

晴樹さん「『●●ができていなかったらいけない』というのをやめた。『やらなきゃいけない』という社会的な基準に照らし合わせると、『だらしない』ということになるが、社会人として当然のことは除いて、『余裕があるときにやればいい』と思うことにしている」

柏倉晴樹さん

「東京クロノス」「アルトデウスBC」監督の柏倉晴樹さん。

撮影:小林優多郎

こうした「ルールを決めないことというルール」は、11年間の夫婦生活の中で醸成されたものだと晴樹さん。

この記事の取材時期は11月中旬で、アルトデウスBCはまさに開発終盤。追い込み時期だった。

夏実さんが基本的に開発チームの指揮をとり、晴樹さんがその間に4歳娘さんの保育園の送迎や世話を担当。その時点の家の散らかり様を「状態はヒドい」と夏実さんは話していたが、怒ったそぶりは全くなかった。

夏実さん「ルールを決めてしまうと、なぜ守れなかったのかという気持ちになる」

晴樹さん「自分たちはどう楽しく、幸せになるかを重要視している」

2. ストレスを溜めない、文明の利器をとにかく使う

コロナ

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で発令された緊急事態宣言で、生活は一変した。

撮影:竹井俊晴

ルールを決めないことにも通ずるが、夫妻がこころがけていることの1つに「ストレスを溜め込まない」というものがある。

とくに5月の緊急事態宣言前後においては、家族の生活は一変した。MyDearestも原則テレワークを導入しただけでなく、娘さんの通う保育園も一時休園となったからだ。

娘さんは4歳の超育ち盛り、遊び盛りで、「ずっと構ってもらいたがる子」(夏実さん)。2人が同時に家で仕事をしているようなら、両方に構ってもらおうとしてくるタイプだという。

結果的に、一方が仕事をしているときは、一方が娘さんの面倒を見るといった体制になったという。晴樹さんは「1日の仕事をする時間がかなり減った」と振り返る。

娘さん

緊急事態宣言前後、多くの児童や生徒は登園・登校ができなかった(写真はイメージです)。

撮影:今村拓馬

そして当然だが、そんな中ではどんな大人でもストレスが溜まる。

それを解決するために活用したのは「文明の利器」。Uber Eatsなどの食事の配達サービスや冷凍食品の購入はもちろん、シャープの調理器「ヘルシオ ホットクック」や食洗機は「秒で買った」(晴樹さん)。

夏実さん「保育園から(登園自粛の)お知らせがきたとき、これを乗り越えるためなら、何をしてもいいと思った

晴樹さん「世界中が不安になるのは間違い。自分たちがそれに乗じて不安になるのは仕方がないが、できるだけ和らげたかった」

3. 100%どちらかが悪いというのはあり得ない

柏倉夏実さん

撮影:小林優多郎

インタビューを通じて、筆者の目には柏倉家は逆境に強く、お互いを信頼する理想的な関係に映ったが、つい「本当に喧嘩はしないのか」と聞いてしまった。

公私・職住が近すぎる環境はかえって問題が起きやすいという声もあるからだ。

この質問に対し、両者共に「大きくぶつかって気まずくなることはない」と応えたが、同席していたスタッフは開発終盤にあったある「事件」を明かしてくれた。

柏倉晴樹さん

撮影:小林優多郎

それは、ゲーム発売前の最終状態にする"マスターアップ”と呼ばれる作業の直前の話。ある仕様について変更するかしないかで揉めたのだ。

ゲームデザイナーである夏実さん側は、監督である晴樹さんの承認を“変更する”でとっていた認識だったが、開発終盤で多忙を極める晴樹さんはその内容を忘れていた……という内容だ。

「事件」のやり取りはビジネスチャットであるSlack上の作業チャンネルで行われ、活字でその様子を読んでいたスタッフは「少しヒヤヒヤする内容だった」と語る。

そんな話が暴露されたあとでも晴樹さんは「全然バチってない(編集注:過度に喧嘩をしていないという意)」。

夏実さんも「実はDM(個別でやりとりするダイレクトメッセージ)では、(チャンネルと)並行して相談していて、その後お互いに謝った」という。

晴樹さん「業務の関係上、すべてを覚えられないというのは分かってもらえている。その上で、そのときにどう対応するか。失敗は忘れなければ今後の成長に生かせる」

夏実さん「100%どちらかが悪いというのはあり得ない。喧嘩している状態は楽しくないから、なるべく早く終わらせるようにしている」

最後に、柏倉夫妻は"夫婦生活が長続きする秘訣”をこう語る。

夏実さん「やってもらって当然と思わないこと」

晴樹さん「(アニメーターの)師匠から教わったことだが、『ありがとう』と『ごめんなさい』。この2つ

(文、撮影・小林優多郎

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