ahamoはドコモによる「楽天モバイル・格安SIM潰し」だ ── 家族ユーザーは様子見すべき理由

発表会

写真左からahamoの発表会に登壇したNTTドコモ サービスデザイン部の佐々木千枝氏、社長の井伊基之氏、マーケティング部の髙山賢人氏。

撮影:小林優多郎

NTTドコモが「楽天モバイル潰し」を仕掛けてきた。

ドコモは新料金プラン「ahamo(アハモ)」を2021年3月に提供する。月間20GBで月額2980円(以下、いずれも税別)。リーク報道通りの金額だが、驚きは1回5分以内の音声通話が何回でも無料になっている点だ。

従来は「光回線とのセット割」「家族の複数回線割」などを適用した後の金額が強調されているが、この2980円はそうした複雑な仕組みは存在しない。シンプルに誰もが2980円で使えるのが特徴だ。

「月額2980円」「2021年3月開始」は楽天を意識か

2980円

ahamoの月額料金は2980円(税抜)。

撮影:小林優多郎

NTTドコモが「月額2980円」という値付けをした背景にあるのは、おそらく楽天モバイルを意識したのだろう。

楽天モバイルは月額2980円でデータ通信・音声通話が使い放題。しかし、データ通信が使い放題となるのは楽天モバイルが自社で建設したエリアのみとなる。

楽天モバイルでは計画を5年前倒して、2021年夏には全国の人口カバー率96%の達成を目指すが、すでに99.999%以上の人口カバー率となるNTTドコモには遠く及ばない。楽天モバイルの自社エリア外ではKDDIのネットワークに接続され、月間5GBまでが無料で使える。

楽天モバイル

楽天は、300万人限定で5Gプランも1年間無料で提供している。

出典:楽天

楽天モバイルは現在、300万名限定で1年間の通信料無料キャンペーンを展開しているが、2021年4月以降には、無料キャンペーンの適用が終わるユーザが出てくる。NTTドコモのahamoは2021年3月からのスタートであり、「そろそろ2980円の無料が終わるけど、楽天モバイルを継続しようか悩む」というユーザーをahamoで一気に取り込むつもりなのだろう。

ahamoは、オンラインのみの受付となっている。リアル店舗でのサポートなどをなくすことで、人件費や店舗運営コストを削り、低コストを実現した。

この考え方は楽天モバイルとほぼ一緒だ。楽天モバイルの新規契約ユーザーの多くがオンラインで申し込みをしている。

一度、楽天モバイルでオンライン契約を経験済みのユーザーであれば、すぐにahamoに乗り換えることに障壁はない。ahamoでは今のところ、契約情報をデータとして読み込む「eSIM」の対応は表明していないが、今後eSIMにも対応できれば、楽天モバイルをeSIMで使っているユーザーも取り込める。

「通話1回あたり5分無料」は格安SIM事業者に衝撃

通話料無料

ahamoの通話料は1回あたり5分は無料。5分以降は20円/30秒。

撮影:小林優多郎

ただ、ahamoは、楽天モバイルだけでなく、格安スマホを提供するMVNO各社にも大きなインパクトを与えるのは間違いない。月額2980円で1回5分の無料通話がついたプランを、(回線や通信設備を大手から間借りしている)MVNOが真似をするのは、ほぼ不可能に近い。

例えば、日本通信が「合理的かけほプラン」として、音声通話かけ放題で月額2480円というプランを提供しているが、データ容量は3GBしかない。20GBまで使い切ると料金は月額6730円まで跳ね上がる。

イオンモバイルの場合、20GBで3980円だが、10分以内のかけ放題オプションを追加すると4830円になる。

ahamoでは1000円を追加し、月額3980円を支払えば、何分かけても無料になるオプションも用意してきた。これではMVNOはとても太刀打ちできない。

ドコモがahamoを「サブブランド」だと言わない理由

ahamoのMNP

ahamoには「既存のプラン」とは明らかに違う部分がある。

撮影:小林優多郎

今回、ドコモはahamoを「メインブランドの料金プラン」として提供する。しかし、プランや説明のフレーズなどを細部にわたって見てみると「サブブランドとして準備していたのではないか」という痕跡が残っている。

例えば、ahamoを紹介する動画では「ahamoの料金プランはひとつだけ」というアピールがされている。メインブランドの料金プランであれば、なぜ「ahamoの料金プランはひとつ」という言い方になるのか。

また、2021年3月から5月までは一時的にプラン変更であってもMNPの手続きが必要になっていたり、端末ラインナップがメインブランドとは別になっているなど、単純な「NTTドコモの料金プラン」では説明のつかないところが散見される。

ahamoが公開しているコンセプトムービー。

出典:ahamo

しかし、ドコモの関係者に「サブブランドとして準備していていたのか」と突っ込んでも「最初から料金プランとして考えていた」と頑なにサブブランドではないことを強調する。

おそらくは、先行する事例を見て路線変更をしたのではないか。KDDIとソフトバンクがそれぞれのサブブランド「UQ mobile」と「ワイモバイル」で政府の要請に応えた料金プランを発表したところ、武田良太総務大臣から「高いプランから低廉のプランに移る時には、複雑な手続と1万5500円という手数料を取る。これでは低廉化に向けた動きに対して、利用者は乗ってこない」とこっぴどく怒られた経緯があるからだ。

NTTドコモとしては「サブブランドではない」とメディアに強調しておかないと、武田総務大臣に目をつけられると警戒しているのかもしれない。

既存のドコモのプランと「同じでない」ことの弊害

ahamoの契約

新規契約や乗り換えなど、すべてオンラインで作業をおこなうahamo。

撮影:小林優多郎

メインブランドの料金プランのひとつとなれば、ドコモショップのリアル店舗で契約したいという人が店頭に殺到する可能性がある。ドコモショップで「別ブランドなのでオンラインしか受け付けません」ときっぱりと断ることができるのか。別ブランドにしておけば、いろいろと整理できたはずなのに、メインブランドにした弊害が出てきそうだ。

みんなドコモ割

NTTドコモが公開している「みんなドコモ割」のモデルケース。4人家族でカウント対象の3回線のプランを契約していると、割引対象のプランのユーザーはそれぞれ1000円割引かれる。

出典:NTTドコモ

例えば、ahamoでは家族割引が適用されないことは理解できるが、ドコモ契約回線としてのカウントはして欲しかった。

本来、家族3人でドコモを契約している場合、「みんなドコモ割」で家族3回線ならぞれぞれ1000円、累計で3000円が割り引かれる。

だが、2回線はドコモ契約・1回線がahamo契約になった場合は、計3回線とはカウントされず、2回線分となり1回線あたりの割引額は500円、つまり累計1000円しか割引かれない。

「ahamoはドコモの料金プラン」と言い張るなら、このあたりは配慮してほしかった。

いずれにしても、2021年3月スタートで、まだ詳細は詰められていない点も見受けられるahamo。提供開始までに、より具体的な運用方法などが明らかになるだろう。それまでは、まだ様子を見ておくのが得策かもしれない。

(文・石川温、撮影・小林優多郎


石川温:スマホジャーナリスト。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜22時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演。近著に「未来IT図解 これからの5Gビジネス」(MdN)がある。

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