極小住宅「シリル」。
Build Tiny
極小住宅を手掛けるニュージーランドのBuild Tinyは、新型コロナウイルスの感染が拡大し、ロックダウン(都市封鎖)が課される中、家族に迎え入れた保護猫用のアメニティーと在宅勤務に適した環境を求めるクライアントのために、車輪付きの極小住宅「シリル(Cyril)」を作った。
Build Tinyのディレクター兼デザイナーのジーナ・スティーブンス(Gina Stevens)さんによると、シリルの建設には13週間かかったという。
「この極小住宅のデザインは、ニュージーランドが『レベル4』のロックダウンだった時に完成しました」とスティーブンスさんはBusiness Insiderに明かした。
「3月のパンデミックが始まった頃は、不確実なことばかりで…… ホームオフィスに対するニーズが高かったんです」
クライアントからはインテリアに関して、足を下ろせるスペースのある仕事用のロフト、高めのキッチンカウンター、折り畳み式のフロントドア、ねこ用のブリッジといった要望があり、Build Tinyはその全てに応えた。
愛するねこたちとともにリモートワークができる極小住宅をのぞいてみよう。
「わたしたちのクライアントにはいずれも、パンデミックの前から家で仕事ができる柔軟性があったので、ホームオフィスは常に選択肢にありました。クライアントの1人は現在、イラストレーターとして完全に自宅で仕事をしているので、よく利用されています」とスティーブンスさんは明かした。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)の最中、Build Tinyでは国内需要が急増したという。
スティーブンスさんによると、ニュージーランドはパンデミックの前から住宅問題に直面していた。
その結果、人々は迅速な解決策を探し始めた。
「わたしたちのもとには普段からたくさんの問い合わせがあり、約9カ月先まで予約が埋まっているため、この状況で人々のニーズに対応するのが難しくなっています」とスティーブンスさんは話している。「心が痛みますが、待ってもらえない場合はお断りしなければなりません」
Build Tinyには海外からの問い合わせも相次いでいるが、そうした人々には現地の他の建設業者を紹介しているという。
新型コロナウイルスのパンデミックで極小住宅がトレンドとなる中、Build Tinyが作る家への需要が高まるのも自然な流れだ。
ウォール・ストリート・ジャーナルの報道によると、極小住宅のレンタル会社とメーカーに対する関心はともに急激に高まっている。
Source: Wall Street Journal
「不動産投資データ分析」会社を自称するMashvisoのブログによると、極小住宅メーカーの中にはコロナ禍で需要が2倍になったところもあるという。
Source: Mashvisor
「シリル」に戻ろう。
10月に正式に完成したこの車輪付き極小住宅の費用は11万8490ドル(約1200万円)ほどだろうと、スティーブンスさんは話している。ソーラー設備は含まれていない。
Build Tinyによると、この家の名前「シリル」は、極小住宅が大好きだというクライアントの祖父にちなんで命名されたという。
Source: Build Tiny
「シリル」は鉄骨フレームと波型のアルミニウムクラッドでできている。
トレーラーは長さ約26フィート(約8メートル)、幅約9フィート、高さ約14フィート。
Build Tinyが手掛ける大半の家に比べて、シリルは幅が広いため、L型のキッチンや大きめのバスルーム、異なる目的向けの2つのロフトなどを取り入れることができる。
人間だけでなくクライアントの2匹の飼いねこ用のアメニティーも揃っている。ねこたちはロックダウン(都市封鎖)中に保護されたという。
ねこ用のアメニティーとしては専用ドアや、寝室と仕事用のロフトの間を行ったり来たりできる、壁に取り付けられたブリッジなどがある。
スティーブンスさんによると、チームが最初にこの極小住宅をデザインし始めた時には、クライアントはまだねこたちを保護していなかったという。
クライアントが2匹のねこを家族に迎え入れたことでBuild Tinyはデザインを見直し、ねこ用のブリッジや専用ドアなどをプランに取り入れた。ちなみにねこ用のドアはバスルームにある。
バスルームには他にも、シャワーや収納、コンポストトイレ、シンクなどがある。
「トイレの目の前に縦長の窓があることが、みなさん気になるようです」とスティーブンスさんは言う。「プライバシーに欠けるのではないかと思われるようですが、わたしたちのクライアント含め、中には用を足している時に外を眺められるのは素晴らしいことだと考える人たちもいます」
シャワーは外にもある。
バスルームのドアの向こう側はキッチンだ。
キッチンには冷蔵庫やオーブン、レンジフード付きの4口のガスコンロ、シンクなどがある。
収納も充実している。パントリー、飾り戸棚、キッチンユニットの上の壁には保管棚もある。
キッチンで作った食事は、竹材を使ったカウンターで食べることができる。
もう少しスペースが必要な時には、カウンターを一部折り畳むこともできる。
外で食事を楽しみたい時のために、Build Tinyでは取り外し可能な屋外用のカウンタートップも用意した。カウンタートップは、キッチンの前の窓を開けると室内から動かすことができる。
リビングにはソファやコーヒーテーブルもある。
はしごを上がれば仕事用のロフトだ。
このロフトにはロングデスクと足を下ろして座れる椅子が2つある。目の前の窓からは自然光が入る。
もう1つのロフトはキッチンの上にある。階段を使ってアクセスするそのスペースは寝室として作られた。
限られた空間を活用するため、この階段は収納としての役割も果たす。
寝室にはクイーンサイズのベッドや複数の収納がある。
仕事用のロフトは、必要な時にはゲスト用の寝室にもなる。
洗濯機や暖炉を置くスペースもあるが……
暖を取るためのガスヒーターはすでについている。
洗濯が終わったら、天井から吊るした乾燥用ラックを使って洗濯物を乾かすことができる。ラックは必要に応じて、下におろすことができ……
使わない時にはしまっておくこともできる。
Build Tinyによると、シリルの全てのアメニティーは「オフグリッドのリチウムソーラー設備」で動くという。
Source: Build Tiny
オフグリッドでいる必要がない時には、電気を引き込むこともできる。
クライアントは現在、この極小住宅で2匹のねことともにフルタイムで生活している。近く犬も加わる予定だ。
(翻訳、編集:山口佳美)