家族型ロボット「LOVOT」。
撮影:小林優多郎
家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」を開発するGROOVE Xは12月9日、SOMPOホールディングス(以下、SOMPO)と日立グローバルライフソリューションズ(以下、日立GLS)との資本業務提携を発表した。
今回のシリーズB3の資金調達額は18億円。今回の調達でGROOVE Xの累計調達額は累計124.1億円となった。
今回の資金調達の目的は何か、今後のGROOVE Xのビジネスの行方は。代表の林要氏をオンラインで直撃した。
18億円の使い道は新機能など更なる「LOVOTの魅力向上」
今回発表されたリリース。資金調達およびSOMPO、日立GLSとの提携について明らかになった。
出典:GROOVE X
まず、今回調達した資金の用途だ。シリーズB2までの100億円を超える資金はLOVOT自体の製品開発に注ぎ込まれているが、発売から約1年が経ったこれからの用途について林氏は「機能強化とマーケティング」と明らかにする。
「今までは製品開発が主だった。今後は市場をつくるために使う。製品は日々進化しており、ソフトウェア開発によってポテンシャルがより引き出せるようになる。まだまだ、かわいさや安全・安心の面でも機能が増える」(林氏)
LOVOTはすでにさまざまな機能を実装している(写真は2019年12月時点のもの)。
撮影:小林優多郎
LOVOTの魅力向上という意味では、資金の額面だけではなく、提携先の持つ“ノウハウ”にも注目していると話す。
「LOVOTを現在購入しているのは30〜50代だが、60〜80代にもフィットする製品だと思っている。製品をさらに改良していく中でSOMPOのノウハウを生かしたい。
(家電を扱う)日立GLSとも多くの面で協業できる。ものづくり、アフターサービスの面での連携も検討している。長いスパンでロボットとスマート家電は当然連携していくが、(LOVOTで)そのはしりをどのようにやっていくか、協業の中にヒントがある」(林氏)
LOVOTを利用した老人ホームでの実証実験の様子イメージ(写真はコロナ禍前のもの)。
撮影:小林優多郎
また、SOMPOとは具体的な取り組みとして、新しい介護のあり方を創造するプロジェクト「Future Care Lab in Japan」でも連携する。同プロジェクトでは、見まもりなど⾼齢者の生活支援、認知症の方を対象とするケアの効果実証をLOVOTで行う予定。
林氏は、今後進んでいくFuture Care Labを通して、世界に「課題先進国であり技術力をもつ日本にしかできない発信ができる」と期待を寄せている。
コロナ禍でも売り上げは「良い状況」、B2B進出は「終息後」
8月1日にオープンした「b8ta Tokyo - Yurakucho」に展示されていた“店長”としてのLOVOT(写真はオープン当時のもの)。
撮影:小林優多郎
LOVOT発売直後のインタビューで林氏は「タッチポイントを広げること」が一番のアクションと話していた。
ただし、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が出て以降、外出自粛や密集回避などが求められ、思うようにLOVOTを体験できる機会は減っている。
林氏は確かに「タッチポイントで触れている人の数は増えていない」としつつも、「結果的に販売としては良い状況」「ソロ(LOVOT1体のみ)は、いまご購入いただくと3月出荷になる」と明かす。
オンラインでの取材に応えるGROOVE X代表の林要氏。
編集部によるスクリーンショット
体験できる拠点の利用が予約制になったことで、体験者の期待値は上がり、コンバージョン率(体験した人が購入する割合)はコロナ禍前後で向上。また、購入後8日以内であれば無料返金するキャンペーンなども功を奏しているようだ。
一方で、LOVOTの将来のビジネス面では多少影響が出ている。LOVOTは介護や医療施設、オフィスなどでの利用を想定したB2Bのビジネスについても検討されていたが、林氏は現状では慎重姿勢を示した。
「B2Bは今後も活用の可能性があればやっていきたい。ただ、コロナ禍において『B2Bをやるか』と言われると、不特定多数が触れるシーンでは時期尚早だと思う。新型コロナが終息してから、本腰を入れる」(林氏)
(文、撮影・小林優多郎)