料理配達サービスのドアダッシュが上場。初日の終値は売出価格の2倍近い好発進となった。写真右が共同創業者で最高経営責任者(CEO)のトニー・シュー。
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- 米料理配達サービスのドアダッシュ(DoorDash)が12月9日、上場を果たした。複数の投資家がその恩恵にあずかった。
- ドアダッシュはこれまでに数十億ドル規模の資金調達を行っている。出資者はセコイア・キャピタル、クライナー・パーキンス、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)、シンガポールの政府系投資ファンドなど。
- 3人の共同創業者、トニー・シュー、アンディ・ファン、スタンレー・タンはスタンフォード大学時代の友人どうし。彼らも大金を手にすることになる。
ドアダッシュがニューヨーク証券取引所に上場を果たした。
公開価格は102ドル、3300万株を売り出し、完全希薄化後の評価額は380億ドルを予定していたが、初値は予想を大幅に上回る182ドル。ブルームバーグによると、終値は189.51ドルで、時価総額は終値ベースで600億ドル(約6兆3000億円)。完全希薄化後ベースでは想定の2倍にあたる713億ドル(約7兆5000億円)に達した。
ドアダッシュは上場までに総額25億ドル(約2600億円)の資金調達を行ってきた。今回の上場に伴う調達額は33億7000万ドル(約3500億円)。
同社が米証券取引委員会(SEC)に提出した書類には大株主のリストが記載されているので、Business Insider編集部では、(手堅いところで)公開価格102ドルをベースに各株主が保有する株式の価値を計算してみた。
なお、ドアダッシュの評価額は各株主の利益を直接示すわけではない。例えば、シードステージで出資した投資家は1株あたり0.15ドルで購入しているが、評価額10億ドルを超える結果となったシリーズDラウンドの出資者は1株あたり5.51ドルで購入しているからだ。
また、株式は種類によって性格が異なることにも留意されたい。ドアダッシュは今日の他の企業と同様、2層構造で株式を発行している。一般投資家に公開される「クラスA」普通株式は、1株に1議決権が付与されるものだが、創業者や経営幹部、主要投資家向けに発行される「クラスB」普通株式は、1株に20議決権が付与される。
トニー・シュー(共同創業者兼CEO):1600億円超
ドアダッシュの共同創業者兼CEO、トニー・シュー。
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シューは食品ビジネスに関して門外漢というわけではない。彼は少年時代、母親の経営するチャイニーズ・レストランで皿洗いをしていた。その後、スタンフォード大学ビジネススクール時代の同級生たちと2013年に料理配達アプリをローンチさせ、(シュー個人で)ビジネススクールの学生たちを客にピザとパッタイの配達サービスまでやっていた。
シューの保有する株式は「クラスB」1488万5415株。ただし、440万株はストックオプション(新株予約権)の形で保有している。公開価格102ドルをベースにすると、その価値は15億ドル(約1600億円)を超える。
アンディ・ファン(共同創業者兼CTO):1400億円超
ドアダッシュ最高技術責任者(CTO)のアンディ・ファン。
DoorDash
ドアダッシュ最高技術責任者(CTO)のアンディ・ファンは、スタンフォード大学でコンピューターサイエンスを専攻。学生時代に最初のスタートアップ「パロアルト・デリバリー」を立ち上げ、地元レストランの料理宅配サービスを提供した。
これがのちのドアダッシュへと展開していく。ファンが卒業する以前の段階で、シードアクセラレーターのYコンビネーターから資金提供を受けている。
ファンの保有する株式は「クラスB」1351万1765株。ただし、290万株はストックオプションで保有。公開価格の102ドルをベースにすると、その価値は13億ドル(約1400億円)を超える。
スタンレー・タン(共同創業者兼CPO):1400億円超
ドアダッシュ最高プロダクト責任者(CPO)のスタンレー・タン(写真左)。
DoorDash
ドアダッシュ最高プロダクト責任者(CPO)のスタンレー・タンは、アンディ・ファンCTOのスタンフォード大学工学部コンピューターサイエンス学科の同級生で、学生時代には同大学ビジネススクールにいたトニー・シュー、エヴァン・ムーアとアプリ開発に取り組んだ。
ドアダッシュの前身であるパロアルト・デリバリー設立のおよそ2年後に大学を卒業。ファンはコードに惹かれていったが、タンはサービスデザインやユーザーおよびパートナーとの関係構築に力を注ぐようになっていった。
タンの保有する株式は「クラスB」1341万2235株。ただし290万株はストックオプションで保有。公開価格の102ドルをベースにすると、その価値は13億ドル(1400億円)を超える。
ソフトバンク・ビジョン・ファンド(投資家):6700億円超
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長。ドアダッシュへの出資は傘下のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から。
Reuters
コロナ禍も続く激しい「食品宅配戦争」で、ウーバーイーツ(Uber Eats)、グラブハブ(GrubHub)、ポストメイツ(Postmates)ら並みいる競合を追い抜いて首位に立つための資金を提供したのがソフトバンク。
ドアダッシュが5億3500万ドル(約560億円)を調達し、評価額10億ドルを超えを果たした2018年のシリーズDラウンドではリードインベスターを務めた。同社は2ラウンド連続で資金調達に加わり、総額6億8000万ドル(約710億円)を出資している。
ソフトバンクはドアダッシュの筆頭株主で、発行済み株式の24.9%、すなわち「クラスA」6297万3485株を保有する。公開価格の102ドルをベースにすると、その価値は64億ドル(6700億円)を超える。
ちなみに、初日の終値189.51ドルベースで計算すると、119億ドル(約1兆2500億円)と倍近い金額になる。
セコイア・キャピタル(投資家):5500億円超
セコイア・キャピタルのパートナー、アルフレッド・リン。
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セコイア・キャピタルのパートナー、アルフレッド・リンは、ドアダッシュのシードステージに投資するチャンスを一度見逃している。トニー・シューがまだスタンフォード大学の学生寮で料理配達サービスを地道に営んでいた時代の話だ。
ただし、世界を代表するベンチャーキャピタルは、同じ過ちをくり返さない。2014年、セコイアはドアダッシュのシリーズAラウンドでリードインベスターを務め、1株あたり0.73ドルで出資。以後、すべての資金調達ラウンドに参加してきた。
いくつかのグロース(成長株)ファンドに分散させているが、セコイアの保有する株式総数は「クラスA」5177万7269株。公開価格の102ドルをベースにすると、その価値は52億ドル(5500億円)を超える。
シンガポール政府(投資家):2800億円超
シンガポールのリー・シェンロン首相。政府系ファンドを通じてドアダッシュ上場の恩恵を受けた。
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シンガポールの政府系ファンドGIC(シンガポール政府投資公社)は、ソフトバンク、セコイア・キャピタルに続く第3位株主。保有する株式は「クラスA」2659万7250株。公開価格の102ドル換算で27億ドル(約2800億円)超。
クライナー・パーキンス(投資家):650億円超
クライナー・パーキンスのジョン・ドエル会長。
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世界を代表するベンチャーキャピタル、クライナー・パーキンスは、ドアダッシュが評価額でおよそ6億ドル(約630億円)に達した2015年の資金調達ラウンドでリードインベスターを務め、3500万ドル(約37億円)を出資。会長のジョン・ドエルはドアダッシュの取締役に就任している。
クライナー・パーキンスの保有株式は2つのファンドに分かれるが、いずれも「クラスA」で合計605万6525株。公開価格の102ドルベースで6億1700万ドル(約650億円)超。
ショナ・ブラウン(取締役):2億8000万円超
マッキンゼーのパートナー、グーグルのシニアバイスプレジデントなどを経て、ドアダッシュ初の女性取締役に。保有する株式は「クラスA」2万5980株。102ドルベースで260万ドル(約2億8000万円)超。
クリストファー・ペイン(最高執行責任者):280億円超
保有する株式は「クラスA」269万2640株。102ドルベースで2億7400万ドル(約280億円)超。
キース・ヤンデル(最高法務責任者):53億円超
ウーバー出身。ウーバーイーツ立ち上げ時の訴訟担当責任者。保有する株式は「クラスA」49万4785株。102ドルベースで5000万ドル(約53億円)超。
スタン・メルスマン(取締役):7億円超
シリコンバレーの黎明期からスタートアップの経営幹部に対し、新規株式公開(IPO)などの支援を続けてきた。この10年の上場実績としては、クラウドフレア(Cloudflare)、リンクトイン(LinkedIn)、スナップ(Snap)などがあげられる。
保有する株式は「クラスA」6万9251株。公開価格の102ドルベースで700万ドル(約7億3500万円)を超える。
(翻訳・編集:川村力)