KDDI、ドコモ「アハモ」対抗検討も、新料金が「対抗プラン」ではなかった理由

新プラン料金

新発表の「データMAX 5G with Amazonプライム」は、月額1万285円(税込)の料金プラン。スライドのように月額3760円になるのは2年契約、自分を含め同居家族4回線以上の契約、KDDIの固定回線とセット契約の「auスマートバリュー」、契約翌月から月額1400円(税別)を6カ月間割引く「スマホ応援割III」、契約翌月から月額1000円(税別)を12カ月間割引く「5Gスタート割」適用時となるため、契約7カ月目までの期間のみだ。

出典:KDDI

KDDIは12月9日、スマートフォンのデータ無制限にAmazonプライムをセットにした新料金プランなどを発表した。

会見に登壇したKDDI副社長の東海林崇氏は、NTTドコモが発表した新料金プラン「ahamo(アハモ)」に関する記者の質問に答え、対抗策として「それなりにご満足いただけるものを出していきたい」と、新たな施策を検討していることを明らかにした。

同社では、あくまでauとUQ mobileなど複数ブランドで進める「マルチブランド戦略」でドコモのahamoに対抗していく考えだ。

総務省お墨付きのドコモ「ahamo」、KDDIの「マルチブランド戦略」の今後は?

ahamo発表会

NTTドコモが発表した新料金プラン「ahamo」。

撮影:小林優多郎

今、通信業界では、菅義偉首相がかねてから携帯料金の値下げを政策課題としてアピールしており、それを受けて武田良太総務大臣が携帯キャリアに対して値下げの圧力を強めている。

そうした中、NTTドコモが月額2980円でデータ容量20GBの料金プラン「ahamo」を発表し、大きな話題になっている。

サブブランドではなく「ドコモの料金プラン」であることを武田大臣は評価する一方、サブブランドでの料金プランを用意したKDDI、ソフトバンクに対して不快感を示している……というのがこれまでの流れだ。

髙橋誠社長

KDDIの髙橋誠社長(2020年10月撮影)。

撮影:小林優多郎

KDDIの髙橋誠社長は、これまで「マルチブランド戦略」を強調する路線をとってきた。

KDDIは直近も、本体のauとサブブランドのUQモバイルに加えて、今後「デジタルネイティブ層向けのサービス」(東海林副社長)として新ブランドを立ち上げる。

新ブランドは「eSIMで完全オンライン型、シンプルでスピーディな手続き、料金カスタマイズができるという特色がある」(10月30日の決算会見における髙橋社長のコメント)とされている。これに「仲間のMVNO」(東海林副社長)を加えたマルチブランドで、複数のニーズに対応していきたい考えだ。

東海林崇氏

KDDI副社長の東海林崇氏。

撮影:小山安博

なお、新料金プランは「データMAX 5G with Amazonプライム」で、スマートフォンでのデータ使い放題に加えてAmazonプライムと映像配信サービスTELASAの月額料金をセットにして月額1万285円(税込)。

Amazonプライムは月額500円、TELASA見放題プランは月額618円で、データMAX 5Gが月額9515円のため、セットだと348円ぶん割安になる。プランを継続するかぎりはAmazonプライムも継続する。

auのデータ使い放題プランは、「20代だと毎月20GB以上を使う人が61%、データの平均使用量は全体で30GBぐらい、20代は36GBを毎月使っている」(東海林副社長)という。いくら使っても料金が変わらないという安心感が重要で、使い放題の中でもセットプランの方がユーザー満足度が高くなる、と言う。


新料金が「ahamo対抗」ではなかった理由

比較表

ahamo発表時に掲載した類似プラン比較表。KDDIの新料金プランはこのカテゴリーではないため、表の更新はしていない。

作成:Business Insider Japan

時系列的にドコモが突然、ahamoを発表したためチグハグ感があるが、KDDIからしてみると、今回発表するAmazonプライムのセットプランは、それ以前から準備していたもの、ということになる。

ahamo発表の翌週の新料金プラン発表なのに対抗プランではなかった理由は、その辺の事情にある。

とはいえ、KDDI側もahamoを見据えて、急遽の対応を余儀なくされている。東海林副社長は、「市場に対して一定のインパクトはある。ドコモのサービス設計の全体が分かっていないので、詳細なコメントはできない」としつつ、基本的にはサブブランドで対抗していく意向と見られる。

今後予想されるKDDIの「ahamo対抗」3つの秘策

発表内容

新料金プランを含め、KDDIが今回発表した内容。

出典:KDDI

現時点で対応の内容は明らかになっていないが、武田総務大臣は12月8日の定例会見で「同じ事業者(のサブブランド)でありながら、その乗換えの時に手間と手数料を取ることは、いかがなものかと、私は常に問題視してきたところ」と話している。

武田総務大臣の意向に対応すると想定すると、以下3つの対抗策を打ち出す可能性はある。

1. 各種手数料の無料化・Web手続き化

auからUQへ乗り換える際に、MNP、契約変更など、「各種手数料を無料化」や「Web上でより簡単に乗り換えられる」ということを打ち出す可能性はある。

(2020年12月9日19時30分追記)
KDDIは12月9日18:45頃、auとUQ mobile間の「契約解除料」「番号移行手数料」「新規事務手数料(「SIMパッケージ料金を含む)」の無料化を発表。実施時期は2021年2月以降、あわせて各種手続きの簡素化も2021年夏以降に実施する見通し。

2. 低容量・低料金プランは「新eSIMブランド」で吸収

加えて、今後登場するeSIMを基本にしたという新ブランドは、オンラインでのカスタマイズ性に優れるとされる。低容量で低料金といった「格安プラン」はこの新ブランドでカバーする可能性もある。

3. au本体の値下げ可能性もゼロではない

ドコモの井伊基之社長は、ahamo発表会で既存プランの値下げにも言及していた。

「そうなる(ドコモが値下げする)とソフトバンクも動くだろうし、そういったものを見ていかないといけない」(KDDIの東海林副社長)と、ドコモの既存プラン値下げを見て、本体のauの料金値下げも検討する考えを示している。

井伊基之社長

NTTドコモの井伊基之社長。

撮影:小林優多郎

ドコモはahamoの開発に1年をかけたと言い、利益構造や既存のショップとの関係も含めて、他社がすぐに対応できる話でもない。ドコモ自身も当初はサブブランドでの提供を検討していたとみられ、KDDI側は少なくとも当面、サブブランドへ移行するための障害を取り除くことで対応していくことが想定される。

ドコモは12月中にも「ドコモ既存料金プランの値下げ」を発表する予定だが、その対応を含めてKDDIの動向が注目される。

(文・小山安博


小山安博:ネットニュース編集部で編集者兼記者、デスクを経て2005年6月から独立して現在に至る。専門はセキュリティ、デジカメ、携帯電話など。発表会取材、インタビュー取材、海外取材、製品レビューまで幅広く手がける。

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