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働き方は、今日から変えられる

「できて当たり前」では士気は上がらない。富士通が導入したポジティブを引き出す仕組み

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渡辺大介氏

国内グループ社員約8万人を抱える富士通。日本を代表する大企業だが、大企業であるがゆえに特有の組織、コミュニケーションの課題を抱えてきた。

世界との競争になる中で、どう生き残るのか──。

同社は今、強い思いで全社的な変革に乗り出している。

富士通の総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター長の渡辺大介氏が語るユニークな取り組みを通して、大企業のコミュニケーションの未来像を描く。

イノベーションを起こせる大企業になるには?

渡辺大介氏

富士通の総務・人事本部 人材開発部 人材採用センター長の渡辺大介氏。

「富士通グループはこれまで、競合他社に追いつけ追い越せを目標に、みんなで一丸となって、がむしゃらに走って来たんです」

渡辺氏は創業から高度成長期を経て、現在に至るまでの富士通をこう振り返る。だが、その「がむしゃら」な仕事ぶりは、2000年以降、徐々に時代にそぐわなくなっていった。

「『仕事はやって当たり前』という感覚があり、社員同士で褒め合うという文化がありませんし、大きな組織体のため縦割りの仕事の進め方になり、隣のチームが何をしているのか近くにいてもわからない」(渡辺氏)

しかし将来がどう変化するのか見通せない「VUCA(Volatility=変動性、Uncertainty=不確実性、Complexity=複雑性、Ambiguity=曖昧さ)の時代」と呼ばれる現代は、従来の “当たり前”や“正解”が通用しなくなってきた。これまでにない事業を自ら創り出すことが求められるようになっている。

「今まで自分たちがやってきたことを進化させるだけでは足りない。さまざまなチームの知見を活用しながらみんなの力を集結させていくことが、今後、富士通が生き残るために必要だと感じたのです」(渡辺氏)

2019年、代表取締役社長に時田隆仁氏が就任。社員の行動の原理原則となる「Fujitsu Way」を2020年に12年ぶりに刷新した。

「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にしていくこと」

これを社員の行動の原理原則の中心に置くパーパスドリブンの会社を目指すというメッセージを強く打ち出した。

そして、製品やサービス、ビジネスモデルだけでなく、業務プロセスや人事制度からマネジメント、一人ひとりのキャリア形成、オフィスのありかた、企業文化、風土までも変革する全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(フジトラ)」を、2020年10月より本格始動させている。

「褒め合う」カルチャーが仕事の満足度を高める

オフィスで談笑する人々

Getty Images

全社をあげての変革。そのためには組織を活性化し、コミュニケーションを変えていかなければならない。総務・人事本部は「大きな挑戦」に乗り出した。そのひとつが「TeamSuite(チームスイート)」の導入だ。TeamSuiteは、社内コミュニケーション活性化ツールを開発、運営するコミュニティオが提供するHRサービスで、Microsoft Teamsと連携して「感謝」や「称賛」の気持ちを表すステッカーやメッセージを送り合えるのが特徴。チームの価値観を深め、従業員エンゲージメントの向上とチームパフォーマンスの最大化を目的とする。富士通の総務・人事本部約500人が試験導入を始めている。

TeamSuiteは3つの機能から構成されている。1つ目は、メンバーのいい行動に対して感謝や称賛のステッカーを付けたサンクスカードを送ることができる「チームステッカー」、2つ目はメンバーに行ってもらいたい行動を明確にする「クエスト」、3つ目は社内ポイントが貯まり表彰されたり福利厚生で利用できたりする「ポイント」である。中でも渡辺氏が注目しているのはチームステッカーだ。そこには、コロナ禍におけるテレワークという背景がある。

「もともとテレワーク制度はありましたが、コロナ前の利用率は1〜2割程度。それが、緊急事態宣言後に一気に9割に急増。そのため、コミュニケーションでの不安が生じました。単純に会話の量が減っているということもありますが、目の前にいればすぐに分かるようなメンバーの状態も、ビデオ会議だけでは読み取れない」(渡辺氏)

富士通は2022年までにオフィス半減を掲げており、今後、オフィスと社員の距離感やあり方を変えていこうとしている。このコミュニケーション不足を補っていくことがマネジメント層に求められる。

「そのためにはマネジメントの方法も変革しなければなりません」(渡辺氏)

そこで渡辺氏はチームステッカーの利用を促し、マネジメント層に率先して「褒める文化」に変えようと呼びかけている。

「まだ試験段階なのでメンバーそれぞれの温度差は多少あるものの、チームステッカーは年代を問わず幅広く使われており、互いに褒め合う空気が少しずつ生まれているように思います」(渡辺氏)

ミスのない給与計算、正確な事務処理……。特に人事のようなバックオフィスの仕事は『やって当たり前』と思われがちだ。そんな中で小さな行動でも褒めてもらえると『誰かの役に立っているんだ』『自分の仕事は価値ある仕事なんだ』と実感でき、『もっといい仕事をしていこう』という原動力になる。

「カードは当人以外のみんなも見ることができ、それに対して共感を表す『いいね』ボタンを押すこともできます。それらのやりとりを見た人事担当役員も『人事ってこんなに素敵な仕事をしている部門なんだ』と改めて気づいたと喜んでいました。しかし、コミュニティオの分析によると、当社のチームステッカーのやり取りは『まだ少ない』そうです。小さなチーム内だけでなくその外側にも目を向けて、『自分たちはこんなにいい仕事をしているんだ』と気づいて欲しい。グループ全体をみんなが意識してくれるように仕掛けていくことが今後の課題です」(渡辺氏)

リスクを恐れずに挑戦する人を讃える文化を

渡辺大介氏

渡辺氏はTeamSuiteのトライアル期間で感じたことをもとに、どうすれば使いやすくなるか、どうすればもっと使いたくなるのか、アイデアを練り上げて全社展開に備える。

「TeamSuiteは、感謝や称賛だけでなく独自のステッカーを作ることができるので、『技術がすごい人』『アイデアがすごい人』『ビジネス推進がすごい人』『データ活用がすごい人』など、さまざまな意味のあるステッカーを作りたいですね」(渡辺氏)

誰がどのステッカーをたくさんもらっているかが分かれば、その人が持つ強みが見えやすくなる。新しい事業を始めようという時に適切な人を誘うこともできるだろう。

「また、『ファーストペンギン』というステッカーを作ろうとも考えています。リスクを恐れず行動する人のことを指しますが、新しいことにチャレンジした人を讃えたい。たとえそれがうまくいかなくても、それは『失敗』ではなく『うまくいかないやり方をみつけた』ということ。褒めることでチャレンジする背中を押してあげられるならどんどん褒める。そんな文化を作っていきたいですね」(渡辺氏)

グループ全社への展開にあたっての懸念点は、8万人に拡大したときにチームステッカーが効果的に機能するかどうか。カードの送受信によって形成されるコミュニケーションマップ「つながりMAP」という機能では、送受信が頻繁なメンバー同士は線が太く表示され、人材や部門をつなぐキーマンを可視化することができる。

現在は500人規模で使っているので分かりやすく表示されるものの、8万人規模になると線が複雑に入り組んで、分かりにくくなるだろう。

「個人ではなく組織単位でつながりが見えると分かりやすいのではないか。組織と組織のつながりが可視化されたら、想定していなかった反応があるかもしれない」(渡辺氏)

渡辺氏は今、大きな組織でより効果的に使うための方法の検討を重ねている。

イノベーションを起こしやすい大企業に変わるために。富士通全体の文化を変えていく取り組みに、渡辺氏は大きな希望を見出している。


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