10月23日に発売したソニーの「α7C」。ボディのみの直販価格は22万9900円。
撮影:林佑樹
スマートフォンに搭載されるカメラの進化は進んでいる。いずれも目標としてミラーレスや一眼レフを挙げており、またユーザー側も「背景がボケる」要素を求めたりと、気が付けばカメラはスマホにおける重要なファクターになった。
2020年は自宅で過ごすことや、仕事をすることが多くあった。オンラインミーティングや在宅の余暇の時間といったように出番が増えたのは「カメラ」ではなかっただろうか。
α7Cはソニー純正アプリ「Imaging Edge Webcam」に対応(Windows/Mac)。PCにアプリを入れ、本体付属のUSBケーブルとPCをつなげば、α7CでZoomなどのWeb会議やビデオ配信が可能だ。
出典:ソニー
2020年10月に発売されたソニー「α7C」は、スマホのカメラからのステップアップや動画撮影、会議などの配信用といった用途への訴求が強いカメラだ。
より小型になり、外に出る際に持ち運びやすいだけでなく、Webカメラとして使用する際もコンパクトな環境で済む。
スマホとセットでも使えるコンパクトさ
背面モニターはぐるっと回すとレンズ側にも向けられる。ビデオ会議に使用するときやウェビナー用動画を収録する際に便利。
撮影:林佑樹
ほんの少し前まで、ミラーレスは一眼レフに比べてコンパクトだったため、出し入れが楽で撮影までも早く、いまでいうスマホのような立場にあった。が、日常のシーンをサッと撮影する……、2020年現在ではスマホが圧倒的に有利だ。
では、α7Cはどうなのだろうか。「少しじっくり撮ってみたいとき」「高画質で残しておきたいとき」が重視されており、スマホとセットで使用する場合がほとんどになるだろう。
遠くの細かい部分までスマホよりきれいに記録される。
撮影:林佑樹
屋内で質感が露骨に出る点もスマホとは異なる部分だ。
撮影:林佑樹
暗所でもノイズ少なめに記録できるため、表現の幅を広げやすい。
撮影:林佑樹
α7Cのサイズは124(W)×59.7(D)×71.1(H)ミリ。カバンに入れるとスマホとモバイルバッテリーほどのスペースになる。重量は約509グラム。
これに付属のキットレンズ「SEL2860」を取り付けると、45ミリでっぱるが重量は約676グラムと軽量の部類に収まり、携行性が犠牲になりにくい。画素数は約2420万のフルサイズセンサーを搭載する。
プロ向け機能を載せつつ、オートでもキレイに撮れる
Xperiaユーザーであれば馴染みのある機能だが、エントリーラインのミラーレスカメラながら、機能はプロ向けの「α9」にも採用されている機能や瞳AFなどを備えている。端的にいえばオートモードのままでも普通に撮れる。
例えば、画面の93%がフォーカスエリアになっており、動体にフォーカスを合わせ続けるといったことが得意だ。
リアルタイムトラッキングは人だけでなく、物にも適用される。背面モニターはタッチパネルになっており、スマホライクに追いたいところをタップすると、そのままフォーカスを合わせてくれるため、被写体を追いかけることだけに集中すればいい。
子どもやペットを追う場合は、あらかじめ準備しておく必要アリ。
撮影:林佑樹
また、被写体の「瞳」をフォーカスするリアルタイム瞳AFは人間だけでなく、動物の瞳にも対応しており、低い姿勢での撮影にも強く、ペットの撮影にも強力だ。
ちなみに、瞳AFは瞳に近い形状であれば検出してくれやすく、ぬいぐるみなどでも同機能が動作することがある。壁に目と似た模様があると反応してしまうが、怪奇現象ではない。
キットレンズは、このように使用する際にはレンズが繰り出てくる。
撮影:林佑樹
といった機能を使用する際、意識しておきたいのは、スマホに比べて「じっくり撮る」スタンスによっていることだ。
例えば、撮りたいと思ったとき電源を入れて、キットレンズの場合であればレンズを繰り出す必要があり、スマホのようにサクッとはいかない。
撮影時にはレンズの繰り出し動作が必要なため、スマホのようにスピーディーな撮影はできない。そういう意味でも、単体のカメラは「じっくり撮る」という立ち位置だ。
撮影:林佑樹
どう撮影しようかと考える時間が必然的に生まれるため、リズムのひとつとしておくと付き合いやすいだろう。もちろん、電源を入れっぱなしで、レンズも繰り出しっぱなしであればすぐに撮れる。
ただ、バッテリーライフは相応に短くなってしまうため、旅行のように充電するタイミングが難しい場合には不向きだ。
microUSBかUSB Type-Cで充電しながらの撮影もできる(が、ゆるやかにバッテリー残量は減っていく。
撮影:林佑樹
「前ボケ」などまだカメラが強い部分はある
iPhoneやPixelなどのスマホカメラとのわかりやすい違いは、絵の細かさ、グラデーションの豊富さ、ボケになる。細かいものを撮影した場合に顕著で、拡大しても違和感のない絵にやりやすい。
グラデーションについても同様で、日中に関してはカメラもスマホに似ているのだが、薄暗くなってくると事情は変化する。
もっともわかりやすいのはボケだ。人のように検出しやすい物体の場合は双方ともそれぞれの特徴を活かす形になるが、植物や柵など、または細いものになると2020年時点ではカメラのほうが強い。下記写真を見てみよう。
α7Cで撮影した写真。
撮影:林佑樹
iPhone 12 Proのポートレートモードで撮影した写真。画像処理で「ボケ」を表現しているため、こういった複雑な造形では輪郭の処理に不自然さが残る。また前ボケもしていない。
撮影:林佑樹
コンピュテーショナル・フォトグラフィー(Computational photography)の進化は続くものの、2020年時点だと複雑な植物に弱いほか、茎と葉の隙間なども処理もまだ苦手だ。
スマホのほとんどはフォーカスポイントから後ろをボカすのみで、前ボケの処理はスキップされがちだ。
これは計算の難しさも影響しており、センサーサイズと光学性能に依存する。この点は、単体のカメラの表現力に軍配が上がる部分だ。
よく聞かれるのだが、モードについては、AUTOかPモード、つまりカメラ任せから慣れていくといい。
撮影:林佑樹
選択の幅が広がるマニュアルレンズも使える
Voigtlander COLOR-SKOPAR 21mm F3.5 Aspherical E-mount。α7Cによく似合うレンズのひとつ。
撮影:林佑樹
少し踏み込んだ遊び方としては、マニュアルレンズを選んでみよう。
ピント合わせが手動で難しい印象ばかりが先行するが、ピントの合っている部分を色をで示す機能があり、時間はかかるが難しくはなくなっている。いわゆるオールドレンズから、最近のレンズまで幅広く、価格帯も比較的安めだ。
スマホのカメラだけで十分とも言えるが、凝ってみたり子どもやペットをしっかり記録したい場合は、スマホとミラーレスカメラの併用がほどいい。
今回チェックしたα7Cはコンパクトで、かつフォーカス性能も高く、扱いやすい製品だ。Webカメラにもなるし、4Kビデオの収録にも使える。自宅にいることが増え、スマホの出番が減っているのであれば、記録に特化したデバイスに投資してみるのもありだろう。
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(文、撮影・林佑樹)
林佑樹:1978年岐阜県生まれ。東京在住。ITサービスやPC、スマートフォンといったコンシューマから組み込み、CPS/IoT、製造、先端科学までに適応するほか、ゲームやゲーム周辺機器のライティングも行なう。フォトグラファーとしては、ドラマスチルや展示会、ポートレートをこなしつつ、先端科学研究所の撮影をテーマとしている。