ふたご座流星群。
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JAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」が地球へと届けたカプセルは、オーストラリア上空で、ほぼ定刻である12月6日午前2時半に、流れ星として観測された。高度80kmというはるか上空で人工的に発生させたあの美しい現象に、思いを馳せた人も多いだろう。
実は12月、今度は自然が、その美しい姿を私たちにあらためて見せつけてくれる。
12月14日午前10時、2020年最後の天文イベント「ふたご座流星群」が見頃を迎えようとしている。この週末が、流れ星を観測する絶好のチャンスだ。
13日夜が観測に最適。月明かりも少ない、絶好の観測日和
ふたご座は、オリオン座の赤い星「ベテルギウス」の近くにある。オリオン座を目印に、放射点を確認してみよう。
提供:国立天文台 天文情報センター
ふたご座流星群は、1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群と並ぶ三大流星群のうちの一つ。
最も多くの流れ星が発生する「極大」のタイミングは、12月14日(月)の午前10時頃と、日本では昼間に当たる。そのため、観測に最も適しているのは前日13日(日)の夜から14日(月)の早朝にかけて。
国立天文台によると、13日(日)の夜、日付が変わるころに暗い場所で観測すれば、最大で1時間あたり55個前後の流れ星が観測できるとしている。
ただし、翌日の朝から学校や仕事があると考えると、日曜夜に流れ星を見に行くのは気が引ける。12日(土)の夜でも、1時間あたり20個を超える流れ星が出現すると考えられているため、翌日が気になる人は土曜日の夜に観測にチャレンジしても良さそうだ。
幸いにして、15日は「新月」。つまり、極大となる14日前後数日は、月明かりをほぼ気にせずに観測を楽しめる、絶好のチャンスなのだ。
国立天文台によると、いずれの夜も流星は20時頃から現れ始め、本格的な出現は22時頃からになるという。
冬の大三角「プロキオン」「シリウス」「ベテルギウス」。写真左上の明るい星が「プロキオン」。写真中央、下にある明るい星が「シリウス」。中央にある三連星が特徴の星座がオリオン座で、オリオン座の左上にある黄色い星が「ベテルギウス」だ。双子座は、ベテルギウスの左上付近にある。
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ふたご座は、冬の星座として知られているオリオン座を構成する赤い星「ベテルギウス」の近くにある星座だ。流れ星は、このふたご座付近の点(放射点)を中心に、空全体に広がっていく。
観測する際には、ふたご座付近だけではなく、夜空をまんべんなく見渡してみよう。
また、目が屋外の暗さに慣れるまでには、一般に15分ほど時間がかかるといわれいてる。冬の寒空の中ではあるものの、暖かい格好や新型コロナウイルスへの感染対策をしっかりしたうえでぜひ観測にチャンレンジしてみて欲しい。
関東を中心に、太平洋側では観測のチャンス。
提供:ウェザーニュース
また、気になるのは週末の天候。
気象情報サイトウェザーニュースは、見頃となる13日夜〜14日明け方の全国の天気傾向を発表。
「九州から北陸の日本海側と北日本では雲が広がりやすいため観測は難しいですが、太平洋側では雲の隙間からチャンスがありそうです」
と、関東を中心とした太平洋側では、流れ星を観測する条件は整っているとしている。
できるだけ街明かりの少ない場所を探して、観測に挑んで欲しい。
ふたご座流星群の源は、すでに「彗星の成れの果て」に……
ネオワイズ彗星。こういった彗星がばらまいたダストがまとめて地球に落下してくると、流星群となって見える。
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「流星群」とは、その名の通り流れ星が大量に生じる現象だ。
1月のしぶんぎ座流星群、8月のペルセウス座流星群をはじめ、基本的に流星群の名前の最初には星座の名前がついている。
ただし、星座の名前と観測される流れ星の間には特別な関係は無い。流星群は、あくまでも、たまたまその時期に特定の星座の方向から流れ星がたくさん観測されることから、その星座の名前を冠しているだけだ。
ふたご座流星群もまた、ふたご座の方向から、たまたまこの時期に流れ星がたくさん飛んでくることからその名がつけられている。
一般的に、流れ星の「原料」は、かつて地球の近くにやってきた「彗星」が残していったダスト(ちり)だとされている。
彗星は、ダストと氷でできた“汚れた雪玉”のような天体だ。
彗星が太陽の近くにやって来ると、その表面にある氷が蒸発して、内部に閉じ込められていたダストをはじめとしたさまざまな物質が宇宙空間に解き放たれる。このダストは、密集した状態で、宇宙空間を漂っている。
このダストの密集した領域に地球が突入すると、ダストが地球へと落下しはじめ、大気との摩擦によって発熱・発光し、無数の流れ星「流星群」となるわけだ。
規模は違うものの、流れ星として観測される原理は、はやぶさ2から分離されたカプセルが発光した原理と基本的に同じだ。
なお、ふたご座流星群の原料を供給する天体は、「フェートン」と呼ばれる太陽の周囲を1.43年周期で公転している「小惑星」だということが分かっている。
国立天文台によると、フェートンは、現在でも太陽の周囲を周るたびに、わずかに物質を放出していることが分かっている。つまり、フェートンはかつて「彗星」だったものの成れの果てであり、彗星と小惑星の中間的な特徴を持つ過渡的な天体である可能性が高い。
私たちがこの時期に観測できるたくさんの流れ星は、かつてまだフェートンが活発にダストを振りまいていた頃の残滓なのかもしれない。
実は、JAXAと千葉工業大学によって、フェートンに近づいて観察するための探査機を送り込む「DESTINY+計画」が準備されている。探査機の打ち上げは、今のところ2024年度になる予定だ。
(文・三ツ村崇志)