強い「ローカルコンテンツ」はどう作る?ウィズコロナの時代に選ばれるスモールビジネスとは?

下北沢商店街

下北沢一番街商店街

2020年春の新型コロナウィルス感染拡大を防止するための外出や会食の自粛は、あらゆる業界に打撃を与えた。特に深刻だったのは個人商店や商店街といったスモールビジネス。この未曾有の事態に、スモールビジネスを営む人々はどのように立ち向かったのか。

変化の大きかった観光業界で奮闘する「HOTEL SHE,」の龍崎翔子氏、ステイホームで街の人出が減る中でも商店街と店の魅力づくりに注力した下北沢一番街商店街の文具店「きくや」店主・大塚智弘氏、近年スモールビジネスや商店街を支援するプログラム「SHOP SMALL」をともに展開しているアメリカン・エキスプレスの印南裕二氏、ジェーシービー(以下、JCB)の三宮維光氏に、2020年を振り返ってもらった。

(モデレーターはBusiness Insider Japan統括編集長・浜田敬子)

「非常事態」で選ばれる場所、選ばれない場所

スーパーマーケット

GettyImages

浜田敬子(以下、浜田):龍崎さんはホテルの運営を通して地域の魅力発信に注力されてきました。コロナ禍ではホテルも大きな影響を受けましたが、緊急事態宣言が発令された期間をどのように乗り切ったのかを伺いたいと思います。

龍崎翔子さん(以下、龍崎):自粛期間中は世の中の感覚が変化し需給バランスが大きく崩れたため、今まで通りにホテルの営業を続けたところで売り上げが伸びることはまずないと思いました。けれどこんなときだからこそ生まれる新しいニーズはあるはず。既存のアセットを使ってできることをやっていこうと頭を捻りました。

アウトプットとしては「未来に泊まれる宿泊券」を作ったり、海外発の雑貨やアパレル製品をセレクトして販売するECを立ち上げたり、ホテルを使ったオンライン演劇サービスを始めてみたりと、自分がやってみたいと思っていたことや、社会にポジティブな働きかけができる活動を始めました。

コロナ禍だから特別なことをしたというわけではなく、今まで通り、その時々で需要があることを考え、その中でもまだ誰もやっていないようなことに取り組みました。

龍崎さん

龍崎翔子(りゅうざき・しょうこ):ホテルプロデューサー。株式会社L&Gグローバルビジネス代表取締役。ホテルに宿泊することを特別な体験にするべく、コンセプトのあるホテルづくりに取り組む。旗艦ブランド「HOTEL SHE,」を通して地域の魅力を発信し続けている。座談会には層雲峡温泉よりリモート参加した。

浜田:地域の商店街には、どのような影響がありましたか?

大塚智弘さん(以下、大塚):大きな打撃を受けたのは飲食店です。下北沢は2020年3月中旬までは例年通りの人出でしたが、4月になると若い人も街を歩くのを止めてしまいました。まだテイクアウト営業の準備が整っていなかったため、その間はほとんど営業ができなかったのではないでしょうか。

一方、私が営む文具店は都市部にある大型店などが営業自粛した影響でお客様が増えました。地元の方々がネットで文具店を検索して「今日営業していますか」と電話をかけて来てくださったんです。休校であっても勉強はしなくてはいけないし、在宅ワークをするには自宅に事務用品を揃える必要がある。客単価が上がり、営業時間は短縮したのに売り上げが上がるという現象が起きました。

浜田さん

Business Insider Japan統括編集長・浜田敬子。

浜田:コロナ禍によって新たな需要が生まれたんですね。事務用品はオンラインショップでも購入できるはずですが、なぜリアルな店舗に来店されたのでしょう?

大塚:一度手に取って品物を確かめたいのでしょう。ファイルの使い方などは店の人に相談した方がよくわかりますから。商品をよく知っている場合はネットでも買い物ができるんですが、初めて手にする物は店で買った方が安心なのでしょう。

改めて見直されるコンテンツの力

大塚さん

大塚智弘(おおつか・ともひろ):「きくや」代表取締役。サブカルチャーの発信地・下北沢できくや文具店を営む。180店舗が加盟する下北沢一番街商店街振興組合の副理事長として、商店街の活性化にも取り組む。60円の消しゴムからサッカーゴールまで取り扱う商品の幅は広い。

浜田:緊急事態宣言が解かれた後は街に人が戻ってきたのでしょうか。

大塚:少しずつ戻ってはきましたが、ただ人が歩いているだけの状態では商店街の店は売上が上がらないんです。大切なのは足を運んでみたくなるようなイベントを開催すること。クリスマスにキャンドルを灯火するといったものがその例です。イベントによって気持ちが高揚してこそ人の消費活動は活発になるんです。

龍崎:ホテル業界でも明確な価値を提供し、お客様の心に居場所をつくって「どうしてもあそこに行きたい!」と思われるようなホテルはあまり悪影響を受けていないようです。能動的に選ばれるブランドを作っていれば、コロナ禍にあっても選ばれ続けるのでしょう。

「人との接点を減らしたい」消費者の不安感に店側ができること

印南さん

印南裕二(いんなみ・ゆうじ):アメリカン・エキスプレス 加盟店事業部門副社長。入社以降、30年以上にわたりクレジットカードビジネスに携わり続けている。コロナ禍の影響により2020年3月からはほぼ在宅勤務をしており、地元の店で買い物をする頻度が増えた。

大塚私個人の店では特需はありましたが、商店街全体を見ると自粛期間中に人と人との接点を少なくしなければならなかったことは物販に悪影響を及ぼしました。店舗としては少しでも店に長く留まっていただくことで「あれもいい、これも買おう」とついで買いを促したいのですが、コロナ禍ではそうはいきません。これはリアルな店舗にとっては致命的です。

Amex印南裕二さん(以下、印南):そこで、私たちは2020年7月からJCBさん協力のもと小さな個人店舗などを支援するプログラム「SHOP SMALL」の取り組みを大々的に開始しました。キャッシュバックによる集客促進や、コロナ禍においてお店を営業していただくのに必要な衛生資材を無償提供するなどの取り組みです。もともとは「SHOP LOCAL」という名称で2017年から展開し、地元の店舗の魅力を発信して楽しんでいただくための施策として行っていたんです。今年に入りコロナ禍に立ち向かう地域のお店をより多面的に支えていかなくてはならないという機運が高まったところで、SHOP SMALLにネーミングを変更して、支援に乗り出しました。

浜田:クレジットカードを使うことが小さな店への支援になるような施策を取られたのですね。

JCB三宮維光さん(以下、三宮):カード会社と加盟店は目的を共にしていて、両者とも店の売り上げを伸ばしたいと考えています。だから加盟店への送客はカード会社の大切な役割で、これまでは長らく「カードを持ってこの店へ行こう」というキャンペーンを行ってきました。けれどコロナ禍においてはなかなかそれができない。コロナ禍で私たちは改めて加盟店サイドの視点に立ち、どのようにお客様の行動を促すのが適切なのか、どうすればお店の売り上げを安全に確保できるのか、これまで同様の送客支援ばかりではなく消費形態の変化に加盟店が対応できるような協力を考えなくてはと思いました。

ハンドスプレー

SHOP SMALLの応援施策の一環として商店街の全店に配布された除菌用ハンドスプレー。

お店への支援施策の1つとして実際に実施したのは除菌用ハンドスプレーやソーシャルディスタンスを保つための足型マークの配布などです。今後取り組みたいのは接客なしで決済を終えられるインフラの用意。ECやデリバリーサービスなどと連携して、物品のやり取りは店内であったとしても決済は店頭ではしない方法を提案しています。

大塚: 決済にかかる時間がなくなることも確かにメリットがあります。買い物に使う時間のうち、会計にかかる時間が短くなればその分を商品を選ぶ時間に使っていただくことができるので。うちの店でも、クレジットカードのタッチで決済ができるようになっているのですが、まだお客様がご存知ないんですよ。私たちのような小さな店はタッチ決済自体も宣伝ツールとして活用し、「この店は何でもできるのね」と思ってもらえるようになれば、お客様のなかで店の存在感がより増していくと思います。

ローカルな小売店の買い物シーンに起きた変化

下北沢商店街の街並み

大塚氏の営む文具店がある下北沢一番街。アメリカン・エキスプレスとJCBは商店街全体を支援し、加盟店以外にも除菌用ハンドスプレーなどを配布した。

印南:かつてはクレジットカードって旅行や高額なショッピング、リッチな食事などで利用されることが主だったと思うんです。けれど政府によるキャッシュレス推進のためのポイント還元事業やコロナ禍でのライフスタイルの変化、オンラインショッピングの拡大などにより利用シーンの裾野が急拡大しました。

ここ数年でこれまで現金しか使えなかった病院や地方のスーパーマーケット、ファストフード店でも取り扱いが広がり、さらに現金を触らなくてもいいことがカード利用の動機になったのだと思います。

浜田:クレジットカードで少額決済をするのは店に悪いような気がしていました。

大塚店にとって重要なのは手間の有無です。少額決済が多い店はそれだけ回転が多いということ。60円の消しゴム1個を販売するのに、例えばクレジットカードでもタッチ決済なら簡単でありがたいんです。

三宮さん

三宮維光(さんのみや・これみつ):JCB代表取締役兼専務執行役員 加盟店事業統括部門長兼イノベーション統括部担当。JCBカードの加盟店に関する事業全般を統括し、カードの利用機会を増やしながら加盟店の利益を増幅する方法を考案している。新橋の自営業の家庭で育った。当時の小学校も同様の環境で育った子どもたちが多かったと話す。

浜田:店にとってのメリットもあるのであれば安心して使うことができますね。

三宮:QUICPay(クイックペイ)や交通系電子マネー、スマートフォンを介した非接触決済の登場で、クレジット決済の処理時間も昔に比べると格段に速くなっています。少額決済でも素早く、ストレスなく、人手を介さずご利用いただけるようになったと思います。

印南:私たちアメリカン・エキスプレスでは、お客様へのお約束として近年では「バッキング(Backing=応援)に力を入れます」と掲げています。日本で働く私たち社員全員が合言葉として日々の仕事に臨んでおり、加盟店、会員のみなさま、そして社会のために何ができるかを考えるようになりました。

例えば店舗だけでなく医療従事者へのBackingとして、アメリカでは、ヒルトンやマリオットなどのホテルの部屋をまとめて借り切って医療従事者に提供するといったことを行いました。日本では自粛営業中のレストランと連携し、コロナの治療にあたる医療従事者に食事を提供させていただきました。またポイントプログラムで医療活動への寄付を選択できるようにもしています。決済をすることが、特別な意味を持つようになった1年だったと感じますね。

三宮:スモールビジネスも、それを支えるクレジットカード会社も、経験したことのない変化に直面しながら、対応を迫られた2020年でした。


コロナ禍という未曾有のハンデミックに直面した2020年。ウィズコロナの時代に、感染拡大の防止に最大限の配慮をしながら、どのように営業を続けていくべきか、あらゆる店舗が試行錯誤を続けている。

アメリカン・エキスプレスとJCBは「SHOP SMALL」プログラムを通じて街の中の小さな店舗を支援。街に人を惹きつけるうえで大きな役割を担う地域に根付いた個店を応援し、地元の魅力発見やローカル経済の活性化につなげている。

2021年以降、スモールビジネスを取り巻く環境はどうなるのか。ウィズコロナ時代のスモールビジネスについて語る続編はこちら。

SHOP SMALLについてはこちら。

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