米ゼネラル・モーターズのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)。2014年の就任以降、GMの大変革を主導する。
Screenshot of General Motors website
- 米ゼネラル・モーターズは電気自動車と自動運転車へのシフトに対応するため、3000人規模の新規採用を行う。
- 同社は270億ドルを投じて2025年までに30車種の新型EVを市場投入する方針を明らかにしている。
- 採用する職種は、大半がソフトウェア開発のためのエンジニアで、そのほかデザイナーやIT部門の社員も募集する。
- 新卒と経験者のいずれも応募可能。経験者については自動車業界での経験を問わない。
- GMバイスプレジデントのケン・モリスは「我々は動きを加速する。かつて以上に多くのことを同時に進めていく」と語る。
GMが電気自動車(EV)や自動運転車へのシフトを加速している。
同社のメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)は最近、EV分野に270億ドル(約2兆8500億円)を投資し、2025年までに30車種の新型EVを市場投入すると発表している。従来計画では2023年までに22車種の計画だった。すでに年間研究開発予算の半分(およそ70億ドル)はEVと自動運転分野に充てている。
EVや自動運転車、コネクテッドカーへの移行を見据えた集中的な人材登用も始まっている。バーラCEOは11月、将来の製品ラインナップのシフトとソフトウェア・アズ・ア・サービス(SaaS)開発のため、エンジニアリングやデザイン部門、IT部門で、3000人規模の新規採用を行う考えを明らかにした。
自動運転と電気自動車の開発を担当するバイスプレジデントのケン・モリスはBusiness Insiderの取材に対し次のように語った。
「新卒と経験者の両方を採用する。自動車業界での経験は不問だ。我々は動きを加速する。かつて以上に多くのことを同時に進めていく」
高給の上、ミシガンに転居する必要なし
GMが2022年に市場投入を予定している電動ピックアップトラック「ハマーEV」。
Screenshot of GMC website
採用する職種の大半は、これまでも自動車ビジネスの大黒柱であり続けてきたエンジニア(技術者)だが、モリスによれば、モバイルアプリやユーザーインターフェースなどに関連した募集も行うという。内燃機関中心で100年以上もの間ビジネスを展開してきたGMにとっては、革命的な変化だ。
求める高いスキルセットに対して、GMはそれに見合うだけの、他社と一線を画する高水準の給与を用意しているという。ただし、同社は具体的な金額については明らかにしていない。
GMが11月初旬に新規採用計画を明らかにして以来、モリス自身のネットワークから関心を示す声が多数寄せられているという。「私のリンクトイン(LinkedIn)アカウントでは間違いなく大きな動きが出てきている」。
ただし、応募を考えている人はモリスのアカウントを通じてうるさく問い合わせたりしないよう。GMの採用ページを開けば募集中のポジションはすべて掲載されている。
https://search-careers.gm.com/
新型コロナウイルス感染拡大の第二波、第三波が続く昨今の状況を踏まえ、採用プロセスはほぼ完全にオンライン上で行われる。また今回募集されるのは、ほとんどが「知識経済(ナレッジエコノミー)」的なスキルが要求されるポジションのため、採用後にGMが本拠を置くミシガン州に引っ越す必要はない。
「採用も勤務も、ほとんどはリモートで完結する。なのでわざわざGMで働くからといってデトロイトに引っ越してくる必要もない。素晴らしいことだ。おかげで地理的な問題にしばられることなく、最高の人材を採用できる」(ケン・モリス)
カギは「ダイバーシティ」
GMのバーラCEO。ミシガン州の同社工場でテクノロジー投資についてスピーチ。彼女自身がGMの目指すダイバーシティの象徴となっている。
REUTERS/Rebecca Cook
GMは今回の採用のもうひとつの重要な指標として、ダイバーシティを掲げる。同社は採用計画の発表時に以下のようなステートメントを付している。
「すべての車種をEV化するという目標の達成は、多様な視点と才能を受け入れ、投資していく以外に実現するすべはないと考えている」
モリスによると、上記のステートメントは、企業においてダイバーシティの確保が深刻かつ喫緊の課題として求められるようになるなか、言葉を選び抜いて準備されたものだという。
「メアリー(・バーラ)自身がその精神を体現している」とモリスは語る。なお、バーラは2014年にCEOに就任する前(の2000年代後半)、GMの人事部門の責任者としてダイバーシティ推進をリードした実績を持つ。
「会社の行く先を自ら選択する」機会に
コンピューターテクノロジーこそがGMの新たなフロンティアであり、それゆえに今回の新規採用の焦点もそこになる。
「EVというと誰もが車載電池やモーターを想起するが、それ自体は間違いではない。ただ、EVは以前と比較にならないほどさまざまな部分にソフトウェアが組み込まれている。EVのほとんどすべての機能は、ソフトウェアに支えられている」(ケン・モリス)
GMにとっては新たなビジネスチャンスだ。
「ソフトウェアというアプローチはつまり、自動車に何を(物理的に)組み込むかを考えるだけでなく、どうやってユーザーとつながるかを考えるということだ」(同)
今回の採用強化は、社内に可能な限り多くの優秀な人材を集めることで「会社の行く先を自ら選択する」機会を生み出すことにつながる、モリスはそう見る。
「GMはゼロエミッション(=CO2排出量ゼロ)の会社に生まれ変わる。そのために資本とエンジニア人材に投資する。私たちがやろうとしていることはそういうことだ」
(翻訳・編集:川村力)