グーグルのサンダー・ピチャイCEO
Stephanie Keith/Getty Images
- グーグルとアマゾンは、ユーザーの許可を得ずにサイト閲覧履歴を追跡していたことでフランスの法律に違反した。その結果、両社に総額1億6300万ドルの制裁金の支払いが命じられた。
- 「我々はこれまで、最新の情報、明確なコントロール、社内の強固なデータガバナンス、安全なインフラ、そして何よりも、有用な製品を提供してきた」とグーグルの広報担当者はBusiness Insiderに対してメールで述べた。
- またアマゾンも同様に、「我々は、CNIL(フランスの情報処理・自由委員会)の決定に同意できない」と述べた。「アマゾンでは常に、顧客のプライバシーを保護することが最優先事項だ」
グーグル(Google)とアマゾン(Amazon)は、ターゲティング広告を配信するために、ユーザーの許可を得ずにサイト閲覧履歴を追跡していた。
フランスの情報保護機関の「情報処理と自由に関する国家委員会」(CNIL)は12月10日、この行為はフランスの法律に違反するとして、グーグルに1億2000万ドル(約125億円)、アマゾンに4200万ドル(約44億円)、合計で総額1億6300万ドル(約170億円)の制裁金の支払いを命じたと発表した。
CNILによると、両社はユーザーに事前の同意を得ることなく、そのコンピューターにトラッキング用クッキーを保存し、クッキーの設定を変更する方法についての情報も提供していなかったという。
両社は、設定変更のために必要な情報をユーザーに提供しようとしていると述べ、自らを擁護した。
「我々はCNILの決定に同意できない」とアマゾンの広報担当者はメールで述べた。
「アマゾンは常に、顧客のプライバシーを保護することを最優先事項としてきた。ユーザーや規制当局の進化するニーズや期待に応え、我々が事業展開しているすべての国の関連する法律を遵守するために、プライバシーの取り扱いについて継続的に更新している」
また、グーグルの広報担当者もメールで「グーグルの利用者はグーグルアカウントを持っているかどうかに関わらず、彼らのプライバシーが尊重されることを期待している」と述べた。
「我々はこれまで、最新情報、明確なコントロール、内部の強固なデータガバナンス、安全なインフラ、そして何よりも、有用な製品を提供してきた。フランスのeプライバシー法に基づく今回の決定は、これらの努力を見落としており、フランスの規則やガイダンス自体が常に変化しているという事実を考慮していない。我々はCNILの懸念事項をよりよく理解するために、継続的な改善を図りながら、CNILと交渉を続けていく」
CNILの調査員が3月にgoogle.frにアクセスした際、「ユーザー側が何もしなくても、自動的にクッキーがユーザーのコンピューターに保存される」ことがわかった。これらのクッキーのいくつかは、広告の配信に利用されていたという。
2019年12月から2020年5月の間に、CNILの調査員がamazon.frにアクセスした際にも、同様にクッキーが保存された。
CNILが12月10日に発表した声明によると、両社はフランスのデータ保護法第82条に違反し、「ユーザーの事前の同意を得ることなく」クッキーを保存させ、クッキーがどのように使用されるのかについての「完全な」情報も提供しなかったという。
サイトにアクセスした際の免責事項について、グーグルは「プライバシーについてのお知らせ」、アマゾンは「このウェブサイトを利用することで、我々がサービスの提供とその向上を図るためにクッキーを利用することを、あなたが認めたものとみなす。詳細はこちら」と掲げて文面を示しているが、いずれもユーザーがトラッキングを停止させるための明確な方法を示していなかったとCNILは述べた。
アマゾンが12月10日に述べたところによると、amazon.frだけでなく、その他のEU諸国、イギリス、トルコなどのアマゾンサイトにアクセスするユーザーは、クッキーの設定を「いつでも」変更することができるとしている。アマゾンは、クッキーを広告配信のために使用しているが、それだけでなく買い物客にアマゾンでのショッピング体験に「欠かせない機能」を提供するためにも使用しているという。
CNILは、グーグルは3つ目の違反も行ったと述べた。CNILの調査員が広告のパーソナライズ設定を解除した後も「クッキーの1つはまだコンピューターに保存され、それに紐づいたサーバーに向けて閲覧情報を読み続けていた」とCNILは述べている。
グーグルによると、フランスや欧州連合(EU)におけるトラッキング規制は長年にわたって度々更新されており、特にこの18カ月間の変化は大きく、対応が難しい状況となっていた。同社は、クッキーやその他のユーザートラッキングについて随時議論し、規制に合わせたポリシーの更新などの対応を検討しているという。
制裁金の支払いが命じられたのは12月7日だが、その発表は10日に行われた。グーグルとアマゾンの両社は、3カ月以内にクッキーの設定を更新しない場合、遅延するごとに1日あたり12万ドル(約1250万円)の追加制裁金が科されるとCNILは述べている。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)