ジェフ・ベゾス氏の純資産は714億ドル増えた。
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- 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)で、アメリカのビリオネアたちの純資産は全体で4兆ドル(約416兆円)増えた。
- 最も裕福なビリオネア10人の純資産は合計1兆ドル以上増えていて、協議中の追加の経済対策の規模を上回っている。
- 一方で、低所得層はパンデミックの深刻な打撃を受けている。
アメリカのビリオネアたちは、新型コロナウイルスのパンデミックで莫大な利益を上げている。その純資産は全体で4兆ドル増えた。
Americans for Tax Fairness (ATF)とInstitute for Policy Studies(IPS)の最新レポートによると、アメリカのビリオネアたちの純資産は3月18日から12月7日で36%増えたという。
そして、アマゾンのCEOジェフ・ベゾス氏やテスラとスペースXのCEOイーロン・マスク氏、マイクロソフトの共同創業者ビル・ゲイツ氏ら、最も裕福なビリオネア10人の純資産は合計1兆ドル以上増えている。
「これほどわずかな人間の手に富が集中しているのをアメリカは経験したことがない」とATFのエグゼクティブ・ダイレクター、フランク・クレメンテ(Frank Clemente)氏はプレスリリースで述べている。「彼らの富の増大はあまりに大きく、それだけあればこの国の全ての男性、女性、子どもたちに1人3000ドルを支給でき、それでも彼らは9カ月前より裕福でいられる」という。
実際、ビリオネアが増やした1兆ドルという金額は、協議中の追加の経済対策の規模9080億ドルを上回っている。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、連邦準備制度理事会(FRB)のレポートは2020年の第3四半期の時点でアメリカ人の純資産の合計が123兆5200億ドルだったとしている。ビリオネアたちが増やした4兆ドルは全体の3%にあたる。つまり、残りのアメリカ人全体の純資産が公平に分配されていたなら、全てのアメリカ人は純資産36万1000ドルを持っていただろう。これはジェフ・ベゾス氏の純資産の0.1%以下だ。
もちろん、国全体の純資産は公平に分配されていない。2018年の時点でFRBは、アメリカ人の10人のうち4人が借金をせずに400ドルの急な支出をカバーすることはできないとしていた。
ピュー・リサーチ・センターによると、新型コロナウイルスのパンデミックで、低所得層のおよそ半数が請求書の支払いに苦労していて、約3分の1の人々は家賃や住宅ローンの支払いに困っているという。そして、低所得層の人々は、高所得層の人々に比べて、レイオフされてもなかなか再就職ができないという。
IPSのProgram on Inequality and the Common Goodのダイレクター、チャック・コリンズ(Chuck Collins)氏は、ビリオネアの富の集中の高まりはパンデミック後の世界にとって、"不吉の前兆"かもしれないとBusiness Insiderに語った。
「コロナ後の世界では、多くの実体経済のビジネスがこうした新たな独占所有権やビリオネアの政治力の集中と競合できないだろう」とコリンズ氏は指摘した。
「わたしたちは今、何百万という世帯が立ち退き、差し押さえ、富の喪失に直面する"痛みの冬"に入ろうとしている。この富の不均衡が最終的に経済と社会の健全性を危険にさらし、中間層、低所得層の購買力はさらに低下する」
[原文:American billionaires' net worths have grown to $4 trillion during the coronavirus pandemic]
(翻訳、編集:山口佳美)