日本にマグロを送るための冷凍庫、改造してワクチン輸送用に

サーモキングの冷凍庫は、普段は生鮮マグロを日本に輸送するために使用されている。COVID-19ワクチンを輸送する際にも有効だ。

サーモキングの冷凍庫は、普段は主に生鮮マグロを日本に輸送するために使用されている。

Trane Technologies

  • マグロのような生鮮食品を日本に輸送するために作られた工業用冷凍庫が、ファイザーのCOVID-19ワクチンを輸送するために改造された。
  • CNNによると、スーパーやレストランで売られているマグロは、海外からの輸送時に摂氏マイナス60度以下に保たれているという。
  • ファイザーのワクチンはmRNA(メッセンジャーRNA)を使用しているため、効果を維持するためには極低温に保つ必要がある。

厳重な温度管理が必要なマグロを日本に輸送するための冷凍庫を開発したサーモキング(Therma King)社は、その食品安全技術の新たな用途を発見した。COVID-19ワクチンの輸送だ。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は12月11日(現地時間)、ファイザー(Pfizer)のCOVID-19ワクチン使用を承認し、効果を維持するために摂氏マイナス70度のドライアイスを使って輸送しなければならないという複雑な出荷プロセスを開始した。

CNNによると、サーモキングの冷凍庫は、海外のスーパーやレストランに高級マグロを輸送するために摂氏マイナス60度を保てることが証明されており、ワクチン用冷凍庫の役割を担えるという。

サーモキング・ヨーロッパ・中東・アフリカのフランチェスコ・インカルザ(Francesco Incalza)社長がCNNビジネスに語ったところによると、アイルランドを拠点とする同社は、差し迫ったワクチン輸送に対応するために冷凍庫の設計を変更し、数カ月前から中国での生産を増強していたという。

その巨大な冷凍庫は長さ6メートルで、ファイザー社のワクチン30万回分を収納でき、船、飛行機、トラックなどに載せて、国内外に配布することができる。

アメリカのすべての州でのCOVID-19ワクチン接種が14日から始まる予定で、最前線で働く医療従事者、必要不可欠な労働者、65歳以上の人、重度のCOVID-19感染症になりやすい既往症のある人に対して投与される。ちなみに、このワクチンの効果を最大限発揮させるためには、3週間の間隔をおいて2回接種する必要がある。

COVID-19ワクチンの効果維持には極低温が必要

ファイザーのCOVID-19ワクチンは、細胞にタンパク質の合成方法を指示する遺伝物質、メッセンジャーRNA(mRNA)を使用した初めてのワクチンだ。

インフルエンザワクチンのような現在使用されている他のワクチンは、ウイルスの能力を失わせた不活性化ワクチンか、弱毒化した生ワクチンだ。しかし、COVID-19には重症化の危険があるため、科学者たちは新しい方法を開発した。これは10年間にわたって研究されてきたものだ。

ファイザーのワクチンには、弱ったコロナウイルス細胞や死んだコロナウイルス細胞ではなく、コロナウイルスのmRNAが含まれており、このmRNAは注射されるとウイルスが細胞へ侵入するのを助けるスパイク状のタンパク質を作り出すように体に指示する。生成されたこのタンパク質に反応して、体の免疫システムが抗体を作り、将来のコロナウイルスとの戦いから身を守れるようになる。

サーモキングは、mRNAワクチンなどの極低温を必要とする医薬品によって、改造したマグロ冷凍庫の需要が高まると予想している。

「こういった極低温で輸送する必要のある製品はますます増える。この種の機器の新しい市場は発展するだろう」とインカルザ社長はCNNビジネスに語った。

FDAが17日にレビューする予定のモデルナ(Moderna)のワクチンも、低温での輸送が必要だ。凍結する必要はないが、冷蔵庫に保管することで最大1カ月間保存できる。



[原文:The COVID-19 vaccine has to stay ice-cold, so it's being shipped in retrofitted tuna freezers

(翻訳、編集:Toshihiko Inoue)

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