電通インターナショナルのウェブサイト。買収先から8000万ドル超の支払いを求められていることが明らかになった。
Screenshot of Dentsu International website
- 電通インターナショナルが2018年に買収した米ブランドデザイン会社「キャラクター(Character)」の共同創業者4人が、8240万ドルの支払いを求めて裁判所に仲裁を申し立てた。
- キャラクター社の主要クライアントにはインスタグラム、グーグル、ドアダッシュなどが含まれ、電通は買収時に、ブランドコンサルティング領域での強みを得ることになるとしていた。
- キャラクター社の創業者によれば、電通は契約条件に違反し、買収時の1760万ドルに加えてアーンアウト条項に基づき支払うべき追加の買収対価を支払っていないという。
電通インターナショナルが2018年に買収したシリコンバレーのブランドデザイン会社キャラクターの創業者が、電通には8240万ドル(約87億円)の支払い義務があるとして、裁判所に仲裁を申し立てた。
キャラクター社は1999年に創業、ナイキやアマゾン、ネットフリックス、ドアダッシュといった著名企業をクライアントとしてきた。買収直前の2017年12月期の通期売上高は930万ドル(約10億円)。
買収時のプレスリリースで、電通は「ブランド・コンサルティング領域において確固たる強みを得ることになる。キャラクター社と電通グループ傘下の各ブランドとの協力関係を強化し、相乗効果を高めることで、世界最大の広告市場・アメリカにおける成長戦略を加速させていく」としていた。
「事実上、島に一人取り残された状況」
電通インターナショナルが2018年に買収した米キャラクター社のウェブサイト。クライアントには錚々たる企業の名前が並ぶ。
Screenshot of Character website
キャラクター社の共同創業者、オリバー・ラルフ、ベンジャミン・ファム、パトリシア・エバンジェリスタ、リシ・ショウリーの4人は、2020年9月にニューヨークの裁判所に仲裁申し立てを行った。
電通が買収合意時に約束した成長支援を行わず、「事実上、島に一人取り残された状況」に陥ったというのがその主旨だ。
仲裁申し立ての書類には、電通インターナショナルとキャラクター社が2018年に結んだ買収契約書類が含まれている。
そこには、電通側が4人の共同創業者に前払金として1760万ドル(約19億円)を支払い、その後「追加支払い分として」キャラクター社のその後の成長と利益率に応じ、5種類のアーンアウト(=あらかじめ設定した指標の達成度に応じて発生する追加の買収対価支払い)が発生すると記されている。
また、電通側の支払い金額は、キャラクター社の2022年までの業績に連動し、最大1億ドル(約105億円)とされている。
仲裁申し立て書類によれば、電通インターナショナルは、キャラクター社の財務状況が「信頼性を欠き」「監査できない」としてアーンアウトの支払いを延期し、最終的に拒否。
また、電通側は一時、2019年分のアーンアウトとして360万ドル(約4億円)を支払う意思を示していたが、その後、条件を満たしていないとして取り下げている。
同書類には、電通がキャラクター社に入れ替わりで5人の経営幹部を送り込んだものの、いずれもブランドデザイン事業について何ら知見を持ち合わせておらず、成長をサポートする上で何の役にも立たなかったとの記載がある。
また、電通側はキャラクター社にニューヨークでのオフィス開設を勧めておきながら、賃料支払いをキャラクター社の共同創業者らに押しつけ、結果として利益を増やしてアーンアウトを獲得する妨げになったとの記載もある。
ビジネス支援もオフィス開設も「契約上の義務ではない」
電通側が2020年9月に仲裁手続きの差し止めを申し立てたため、裁判所はキャラクター社の共同創業者による仲裁申し立てを非公開とし、現在では関連書類を閲覧することはできない。ただし、Business Insiderは公開されていた時期に同書類を入手し、本記事の資料としている。
電通インターナショナルが裁判所に提出した書類によれば、キャラクター社へのビジネス支援も、ニューヨークでのオフィス開設に伴う支援も、契約上の義務ではないと電通側は主張。アーンアウトの支払い関連については、仲裁人ではなく会計士が対応すべき問題としている。
電通インターナショナルの広報担当は、仲裁に関する手続きは非公開であることを理由にコメントを避けた。また、キャラクター社の共同創業者4人およびその代理人の法律事務所リード・スミスにもコメントを求めたが、回答はなかった。
(翻訳・編集:川村力)