撮影:伊藤有
M1版MacBook Air/Proが驚きの性能で話題になった発売から3週間。
12月8日、ついに待望だった、アドビの写真現像ソフト「Lightroom」にM1対応のユニバーサルアプリ版が登場した。
ユニバーサルアプリ版は個人的にも待望だった。発売時の先行レビュー記事にも書いたように、日常的に使うアプリの中で、数少ない「M1版MacBook Proでまともに動かないアプリ」の1つだったからだ。
先行レビューの時点では同じく動作に問題のあった「Lightroom Classic」についてもアップデートされ、インテル互換エミュレーター“Rosetta2”上でちゃんと動作するようにもなった。
M1版MacBook Proで動くようになったLightroom/Lightroom Classicがどんなものか、早速触ってみた。
ユニバーサルアプリ版はCreativeCloud上でこんな表示に
それぞれアップデートを適用し、早速実戦投入してみた。双方ともにアップデートは、アドビ CreativeCloudの通常更新として降ってくる。
まずはM1チップにネイティブ対応(=ユニバーサルアプリ化)したLightroomから。
アップデートを済ませても、一見すると何も違いがないように見えるが、マウスカーソルをアプリの名前の上に持っていくと、ツールチップでユニバーサル版であることがわかる。
ツールチップでの表示が「Apple Silicon/Intel」に変わりユニバーサルアプリであることがわかる。
撮影:伊藤有
ユニバーサルアプリになったことは、見た目ではこの表示くらいの違いしかない。
ユニバーサル版「Lightroom」の処理速度は?
M1対応版のLightroomの操作画面。
撮影:伊藤有
Lightroomを起動して、適当な写真データをドラッグ&ドロップで読み込ませると、以前のように読み込みに異常に時間がかかるようなことなく、普通に読み込まれた。
試しに現像処理を十数枚試してみると、動作はサクサクとスムーズで、ArmベースのM1チップだから…と思わせるようなネガティブ要素は(当たり前だが)ゼロだ。素晴らしい。
取材写真の現像に慣れた良いアプリがない、という問題はこれで解決できた。さて、気になるパフォーマンスについてもついでに計測してみよう。
1枚の取材写真を使って、色調補正を「自動」、「レンズ補正」「収差補正」を全画像に適用して、書き出し設定「JPEG小」にて、処理完了するまでの時間を計測した。比較対象は、少し古いが、前出の記事と同様のlate2016のMacBook Pro15インチだ。
結果は次の通り。
- M1版MacBook Pro 13インチ 13秒36
- インテル版MacBook Pro 15インチ(late2016、Core i7搭載) 25秒16
発売後、さまざまなベンチマークテストで目にしたように、なかなか残酷な結果が出た。手元の比較対象が古めなので、なおのこと差がついた形だ。
Rosetta2動作に対応した「Lightroom Classic」でも十分速い
アドビブログでもLightroomのM1チップ(とArm版Windows)への対応、Rosetta2での動作検証済み報告が掲載されている。
撮影:伊藤有
「Lightroom」という名前がついたもう一方のアプリ「Lightroom Classic」は、前述の通り、インテル版であることには変わりがないが、インテル互換エミュレーターRosetta2上で動作するようにアップデートされている(先行レビュー当時は、記事にあるように読み込みがうまく機能していなかった)
個人的に常用しているのはLightroom Classicの方なので、こちらの動作比較もしてみた。
補正の方法や書き出しの解像度設定をLightroomと合わせて、「ほぼ同じ設定」での操作として比較した結果は次のような処理時間になった。
- M1版MacBook Pro 13インチ(Rosetta2動作) 19秒94
- インテル版MacBook Pro 15インチ(late2016) 33秒28
Rosetta2上でLightroom Classicを動かした比較でも、やはりM1版MacBook Proは十分速い(LightroomとLightroom Classicでは画像処理アルゴリズムが同一か不明で、厳密な比較ではないため、M1版でのLightroomとClassicの速度比較はあまり意味がない)。
いずれにしても、Lightroomが(ネイティブにしろRosetta2にしろ)M1版MacBook Proで軽快に動作するようになったことは、写真の画像処理をする人にとっては大きなアップデートと言える。
個人的にも、これでM1版MacBook Proを100%実戦投入できる環境が揃った。
M1版MacBook Proの最大のメリットは「電源ストレス」からの解放?
撮影:伊藤有
原稿の最後に、この数週間で見えてきたM1版MacBook Proの利点についても触れておきたい。
先行レビューで比較したlate 2016のMacBook Pro15インチは、今でも取材や原稿執筆、写真の加工や編集作業という使い方では基本的に不自由はほとんど感じたことがない。
だから、M1版MacBook Proとの比較でも、「体感でココが激変した」というよりは、ベンチマークテストでの大差に驚く、ということが多かった。
この数週間M1版を使う中で日に日に感じるようになった一番の違いは、「十分な性能を長時間バッテリー駆動で使える」ことによる快適性だ。
M1チップ(写真はMacBook Airのもの)。SoCなのでコンパクトなチップにPCの主要な半導体が収まっている。
出典:アップル
M1版MacBook Proがもつ、「満充電になっていなくても、気楽に外に持ち出せる」という安心感は、手持ちのデバイスだと、iPad Pro(バッテリー駆動で約10時間使える)を使っているときの感覚に非常に近い。
iPad Proはスタミナ性能によって、「たまに充電しておきさえすれば、いつでも持ち出して仕事ができる」という電源レス的な気楽さを手に入れている。
過去レビュー機材も含めて何台も使ってきたインテル版Macではこうはいかなかった。やはり外出作業がある時は、80%以上は残量がないと不安…という感覚が付きまとう。
例えば、M1版MacBook Proの場合、電源のない場所でZoom打ち合わせを2時間した後でも、まだ8時間以上(ほとんど負荷のかからない作業なら、おそらくは10時間以上)使えるわけだ。正直、自分の集中力の限界のほうが先に来る。
電源ストレスからの解放、というのは実は実機を使っている人にしかわからないM1版MacBook Proの大きなメリットの1つだというのが、最近肌身に染みて感じていることだ。
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(文・伊藤有)