東京・汐留の電通本社。財務状況の悪化を受けて、海外事業の大規模な再編に着手する。
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- 電通が海外事業の大規模な整理を行う。グループ傘下のうち、「生き残る」企業が見えてきた。
- 従来型のクリエイティブエージェンシーや小規模なメディアエージェンシーは消滅する可能性が高い。
グルーバルで6万人以上の従業員を抱える広告大手の電通グループが、近年の財務状況の悪化から、160ある傘下のエージェンシーを6つに統合再編する。
従来型のクリエイティブエージェンシーやメディアエージェンシーの重要性は低くなり、データフォーカス型のエージェンシーが柱となる。
再編後に存続するのは、カラ(Carat)、マークル(Merkle)、電通X(エックス)、アイプロスペクト(iProspect)、マクギャリーボウエン(Mcgarrybowen)、アイソバー(Isobar)の6社。
統合再編対象の企業のなかでも、電通グループ内で一段と影響力を増しつつあるのが、データマーケティングで実績を積み重ねるマークル社。
電通は2016年に15億ドル(約1600億円)でマークル社のマジョリティ株を取得。2020年4月には完全子会社化する方針であることが報じられている。主要クライアントには、プロクター・アンド・ギャンブル、マイクロソフト、ゼネラル・モーターズ、インテルといったグローバル大手が名を連ねる。
デジタルパフォーマンスエージェンシーのアイプロスペクト社や、グループ最大のメディアエージェンシーであるカラ社も、電通の海外事業展開の主力を担う重要な存在であり続ける。
こうした統合再編の背景には、広告主(の企業)が広告投資効果の計測にきわめてシビアになってきている現状がある。
電通関係者によれば、従来型のクリエイティブエージェンシーや小規模なメディアエージェンシーは、サービスがコモディティ化しており、消滅するか影響力を失う可能性が高い。
電通は12月上旬に海外の従業員4万7000人のうち12.5%に相当する約6000人を削減すると発表しており、電通マクギャリーボウエン社のようなクリエイティブエージェンシーが主な削減対象になる。存続する6社のうち、データやメディアを柱とするカラ社やマークル社への影響は軽微とみられる。
Business Insiderは、電通グループが12月11日に開いた集会に参加した従業員から、当日のメモの提供を受けた。また、ここ数年かけて行われるアメリカ事業の統合再編とリブランディングに関する資料も入手した。
電通は事業整理の内容について、12月14日(米国時間)に従業員向けの説明を行うが、公式発表は行わない予定だという。
電通の広報担当にコメントを求めたが回答は得られなかった。
(翻訳・編集:川村力)