12月14日、アマゾン傘下に入った自動運転開発のズークス(Zoox)は配車サービスに投入するロボットタクシーを公開した。
Zoox
- アマゾンは2020年6月、ロボットタクシー開発のズークス(Zoox)を買収した。
- 同社の共同創業者で最高技術責任者(CTO)のジェシー・レビンソンはBusiness Insiderの取材に対し、アマゾンとはここ数年対話を積み重ねてきたが、具体的な買収の話におよんだのは2020年になってからだと明かした。
- ズークスはそのテクノロジーの強度を証明するため、アマゾンの担当者を自動運転試験車両に乗せ、サンフランシスコ市内を走り回った。
- 最終的に、ロボットタクシーサービスをローンチさせるというズークスの悲願を支援することを、アマゾンは約束するに至った。
自動運転開発スタートアップのズークスは、ここ数年断続的にアマゾンとの対話を重ねてきたが、新型コロナウイルスの感染拡大はある種の「転機」になった ——。ズークスの共同創業者でCTOを務めるジェシー・レビンソンは、Business Insiderの取材に対し、そう明かした。
4月、同社は従業員の10%をレイオフする判断をくだした。
レビンソンによれば、当時のズークスは破産寸前というわけではなかったものの、新たな資金調達ラウンドを前に難局に陥っていた(ただし、同社CEOのアイシャ・エバンズはニューヨーク・タイムズのインタビューで、レビンソンが語る以上に状況が緊迫していたと思われる表現を使っている)。
自動運転開発企業の経営には、何百人ものエンジニア、高価な設備の建設や購入、繊細なコンピューターを搭載した試験運転車のオペレーションが必要となる。もちろん公道上で安全に、だ。しかも、これといった収入がない期間が何年も続く。
「ズークスを経営するのは安くない」レビンソンはそう語る。
同社がそれまで以上に広く資金調達手段を確保する必要があると考え始めたころ、奇しくも、アマゾンもこれまで視野に入っていなかった自動運転車や電気自動車スタートアップへの投資に動き出そうとしていた。それがズークスの完全買収だ。
「いますぐにも買収が実現するんじゃないか、そのくらいの感じで、ウチもアマゾンもものすごく興奮していたよ」(レビンソン)
サンフランシスコ市内をアマゾン担当者とドライブ
ズークスのアイシャ・エバンス最高経営責任者(CEO)とジェシー・レビンソン最高技術責任者(CTO)、トップ2人がサンフランシスコ市内を試乗する動画(!)。
Zoox YouTube Offcial Channel
しかし、ズークスとアマゾンにはお互いをわかっていない面があった。例えば、アマゾンはズークスが買収するに値する(株主に対して正当性を示せる)技術と能力を兼ね備えているのかを知りたがった。
実力を証明することが交渉の決定的進展につながると考えたズークス側は、アマゾンの交渉担当者を試験運転車に乗せ、非常に厳しい運転環境で知られるサンフランシスコ中心部のごみごみした通りを、くまなく案内してまわった。
一方のズークス側は、同社が設立当初から到達点と考えてきたロボットタクシーサービスの実現を、アマゾンに邪魔してほしくないと考えていた。
「僕らにはとても大きなビジョンがある。そのビジョンを完全な形で実現することは、僕らにとって、とても重い意味を持っている。他はすべて些細なことにすぎない」
Zoox
ズークスにとっての「ビジョン」とは、タクシーという概念からドライバーを取り除くことだ。
自動運転の開発に取り組んでいるチームのほとんどは、コンピューターによる自動運転システムをつくって、それれをさまざまな車種に組み込むことにフォーカスしている。一方、ズークスは配車サービス一本に全力投球。もっと言えば、来るべきドライバーレス時代に向けて、乗り物の概念をつくり変えることに時間を費やしてきた。
その点、レビンソンによると、アマゾンはズークスに荷物の宅配に重点シフトするよう強制することはないと明言しているという。実際、アマゾンと買収契約を結んだあとで、長期戦略や日々のオペレーションに関して大きな変更を強いられるといった事態にはなっていない。
アマゾンがズークスのテクノロジーを宅配サービスに使う可能性を否定はしないが、それでも配車サービスの実現に全力を投じる姿勢が変わることはない、とレビンソンは断言する。
GMなど競合が「僕らに追いつこうと躍起に」
ロボットタクシー「Zoox」の客室。向かい合わせに座り、定員は4人を想定。
Zoox
ズークスは12月14日、社名と同じ名を冠した電動ロボットタクシー「Zoox」を発表し、航続距離など詳細を明らかにした。当初計画では2021年のローンチを予定していたが、14日の発表時点では具体的なスケジュールに関する言及はなかった。
シンメトリカルな形状や鉄道のように向かい合って座る客室、前後の区別なく双方向への走行能力など、同社の設立当初から示されていた特徴を維持したまま、初期のプロトタイプ(試験車両)からデザインが進化した形だ。
「超かっこよくなったゴルフカート、って感じだね」(レビンソン)
ズークスが今回発表したロボットタクシーは、米ゼネラル・モーターズ(GM)が開発を進めるロボットタクシー「クルーズオリジン(Cruise Origin)」によく似た形状だ。
米ゼネラル・モーターズが開発中のロボットタクシー「クルーズ・オリジン(Cruise Origin)」。ズークスに近い形状だ。
Cruise
レビンソンは、目的に合わせてデザインされた自動運転車が今後も続々と登場すると予想する。ただ、レビンソンの目には、クルーズやその他の後発はズークスに追いつこうと躍起になっているようにしか見えていないようだ。
「僕らが2014年から一貫してこだわってきたアイデアをみんなが採用してくれて本当に嬉しいよ。6年間ブレずにやってきた一貫性と(配車サービスに)フォーカスするスタンスがあったからこそ、僕らもここまで進化を遂げることができたんだと思う」
(翻訳・編集:川村力)