米リングセントラルの新たなプロダクト「ビデオ会議+ビジネスチャット」はコラボツール業界に地殻変動を引き起こすか。
Screenshot of Glip by RingCentral website
- 業務用コミュニケーションツールの米リングセントラル(RingCentral)は12月15日、「会議疲れ」を避ける、無料のビデオ会議・ビジネスチャットサービスを発表した。
- 最高プロダクト責任者(CPO)のウィル・モクスリーによると、新製品「グリップ(Glip)」は、ビデオ会議に参加したユーザーが、そこで話された内容を受けて解決すべきタスクを作成するといった、他のアプリにはない機能を備えている。
- モクスリーはセールスフォース(Salesforce)で13年間を過ごし、2019年にリングセントラルにジョイン。両社の共通点は、エンドユーザーの体験を最優先し、アップデートのほとんどがユーザーからの提案に基づいて実現することだと語る。
8カ月前の2020年4月、ズーム(Zoom)に対抗して企業向けビデオ会議・ビジネスチャットプラットフォームを公開したリングセントラルが、「会議疲れからの解放」をテーマに掲げ、無料版をローンチさせた。
リングセントラルのウィル・モクスリーCPOは、「グリップ」と命名されたこのプラットフォームについて、マイクロソフトのチームズ(Teams)よりユーザーフレンドリーで、ズームとスラック(Slack)より直感的に操作できて使いやすいと自画自賛する。
リングセントラルの強みは「スマートミーティング」と表現され、チャットモードからビデオ会議やファイル共有モードへの切り替えが瞬時にできる。
ビデオ会議のアジェンダ設定からプレゼンでのコラボレーション、会議後のフォローアップタスクの作成などもひとつのプラットフォーム内で完結する。
米リングセントラルが展開する「グリップ(Glip)」の紹介ムービー。
RingCentral Official YouTube Channel
モクスリーは、このグリップこそが、「ビデオ会議疲れ」問題に対するリングセントラルの答えだと強調する。
「ほとんどのビデオ会議プラットフォームは、我々が会議前にどんなふうに準備を行うのか、会議で話し合われた要対処事項や議論の中身をどうフォローアップしているのか、深く考えずにつくられている」
そこで、「そうした一連の流れをすべて、ひとつのビジネスチャットプラットフォームに組み込んだ」。モクスリーはグリップの特徴をそう説明する。
同社の主力製品はビデオ通話とチャット、電話サービスを統合したクラウドベースのコミュニケーションシステム「リングセントラル・オフィス」。そのうちビデオ通話とチャットをグリップにまとめた理由のひとつは、パンデミックのもとでナレッジワーカー(=専門知識から付加価値を生み出す労働者を指す)からのニーズが高まったからだ。
グリップにはセキュアなユーザー認証サービスなどがセット提供される有料版もあるが、今回無料版がリリースされることで、企業にとっては試用のチャンスになる。
無料版ながら「40分で終了しない」「ダウンロード不要(ブラウザで使用可)」「最大100人参加OK」と、競合打破を意識したフレーズが並ぶ。
Screenshot of Glip by RingCentral website
無料版で使えるビデオ会議は、24時間無期限で100人まで参加可能。7日間の録画保存機能、グーグルやマイクロソフトのオフィススイートとの統合機能も付いている。
なお、グリップをリリースしても、他の競合製品との統合機能は廃止されなかった。有料版では引き続きスラックやズーム、ゼンデスク(Zendesk)に直接アクセスできる。
リングセントラルはビデオ会議機能を自社開発する以前、ズームとの統合機能を利用してビデオ会議をユーザーに提供していたこともあり、現在もズームは同社にとって最大のパートナー企業のひとつであり続ける。
「エンドユーザーの存在を忘れてはならない」
「グリップ(Glip)」のユーザーインターフェース(日本語)。ガイドなしでも(SlackやZoomの使い方に慣れたことも大きいが)直感的にサクサク使える。
Screenshot of Glip by RingCentral
モクスリーCPOはセールスフォースで13年間勤務し(同社は最近ビジネスチャットアプリ大手のスラックを過去最大規模の金額で買収することを発表したばかり)、2019年8月にリングセントラルにジョインした。
入社後、セールスフォースの「アイデア・エクスチェンジ」(=顧客やパートナー企業との意見交換を行うオンラインフォーラム)をベースに、「リングセントラル・アイデアズ」を立ち上げ、製品アップデートにユーザーの意見を反映させている。
リングセントラルが提供するビデオ会議に加わった70を超える新機能の大半(背景変更、絵文字によるリアクション、ダークモードなど)は、ユーザーからの提案から生まれたものだ。
「エンドユーザーの存在を軽視してはいけない。当然のことながら、エンドユーザーがあるアプリに不満を抱けば、それを使わなくなる。企業のIT部門や契約企業のニーズだけでなく、実際に機能を使うエンドユーザーのニーズを汲み取ることで、すべてはうまくいく」
(翻訳・編集:川村力)