「逆立ちしても勝てない」と言わせるファストリの切り札、GUの本当の強さ

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ファッションショーには柚木社長自らが登場(写真左から二番目)。

撮影:松下久美

コロナ禍のアパレルで、圧倒的な強さを見せつけたファーストリテーリング。売上高で1兆円近い差があるZARAを擁するインディテックスもファストリの射程圏内に入ってきた。

そのキーファクターとなるのが、1. アジア事業の比率の高いアジアの企業であること、2. 大きなポテンシャルを備えた「GU」の存在があることの2つだ。GUの大きな可能性について紐解いてみたい。

GUに逆立ちしてもかなわない…

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Shutterstock/ Ned Snowman

今年、主力ブランドを休止したある経営者は明かす。

「ユニクロはもちろん、GUにも逆立ちしてもかなわない時代。打ち手がなくなった」

しかも、ユニクロ、GUはコロナ禍を経て、その普遍性と時代対応力、存在意義が際立ってきている。

「ファッションは不要不急のものではない。人の本質に根ざした日々の生活をより豊かにするもので、これからはファッションフルネスの時代が来ると思っている。服やファッションが持つワクワク感を提供し、ファッションの力でより良い世の中を実現したい」(GUの柚木社長)

ファーストリテイリングの柳井正社長は「自画自賛だが」と前置きしたうえで、こう語る。

「われわれは、服の世界で多分、世界最高のポジションにいるんじゃないか。LifeWear、究極の普段着。仕事をするときにも家にいるときも、着心地が良くて、品質もいい、スタイルもいい。そういう服を世界中の人のためにつくることが一番大事なことだと思う」

大量生産の工業品だとか、機能優先の実用服だとか、いまだに揶揄をされることもある。

しかしながら実は、情緒的価値を持つ服、利他の服だということが伝播しているのが、ファストリの強さに繋がってきているのではないか

「ファッションを自由に」を掲げるGU

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ジーユーの柚木社長。ジーユーのコロナ禍での営業利益は218億円と、健闘した。

撮影:伊藤有

ジーユーの2020年8月期決算は、売り上げ収益が前期比3.1%増の2460億円、営業利益は22.5%減の218億円と厳しい状況下でも健闘した。特にマストレンドを捉えた商品や在宅需要にマッチした商品、あるいはその両方を兼ね備えた商品が好調だった。

Eコマース売上高は前年比約6割の増収となり、売上構成比は約9%に高まった。今期は大幅増収増益を目指すというが、12月1日に開いた2021年の方針発表会で柚木治ジーユー社長が語った戦略や時代感は、ウィズコロナ、アフターコロナに求められるファッション・アパレル像を明確に表現。

「ファッションを自由に」のブランドスローガンの下、「ファッション×低価格」「家族重視・生活様式の変化」「健康安心・快適志向」「サステナビリティ」の4つのキーワードを軸に商品やサービスを展開していく。

1. ファッション✖️低価格

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トレンド商品を中心に最大3割値下げを実施。「低価格」の強化を掲げる。

撮影:伊藤有

一つ目の「ファッション×低価格」では、コロナ禍で様々な我慢が強いられる状況が長く続く中で、より一層ファッションを楽しみたいという気持ちが増していることを、柚木社長は指摘。

一方で景気は引き続き厳しい状況にあるので、GUが果たすべき使命としてまずは「『ファッション×低価格』をさらに強化する」を挙げた。

主力のウィメンズのトレンド商品を中心に、最大で3割値下げを実施。特にマストレンドの商品、代表的な商品で価格を下げる。

また、こうも言う。

「自宅でも会社でも在宅ワーク中でもちょっとした外出でもファッションを気軽に楽しめる、着心地や手入れのしやすさといった実用性も必要だ。ファッション性と実用性を兼ね備えた商品を誰もが買いやすい低価格でお届けし人々の生活を豊かにしていくことがGUの使命だ」

2. 家族重視・生活様式の変化

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ベビー服「GUベビー」を初めとし、パジャマやルームウェアなどの新しいラインアップを揃えた。

出典:株式会社ジーユー

2つ目は「家族重視・生活様式の変化」への対応だ。

家でも近所でも楽に気軽にオシャレを楽しめる商品や、新しいワークスタイルに合った商品を提案する。新商品カテゴリーとして、顧客からの要望が多かったベビー服「GUベビー」をデビューさせる。

市場ではオールインワンのデザインがほとんどの中で、セパレートに見えるカバーオール「セパオール」や、オムツをはいてもお尻が目立たないレギンスとサルエルパンツを組み合わせた「サマナルパンツ」など、話題性になりそうなネーミングとともに打ち出していく。

また、「かねてから好評のパジャマやルームウエアは、おうち時間が増えたことでますます需要が高まっている」として、ハチミツ成分、ラベンダー成分、レモングラス成分、ミント成分を練り込み、抗菌防臭、接触冷感、保湿効果といった機能性を兼ね備えた美容パジャマを新たに開発し、GU価格で提供。

リモートワーク向けに、より快適で手入れも楽なウォッシャブルなセットアップ商材も投入した。

「赤ちゃんから大人まで、誰もが様々なシーンで楽しめるラインアップを提供する」(柚木社長)

3. 健康安心・快適志向

3つ目はコロナ過でさらに志向が高まっている「健康安心・快適志向」への対応だ。

「2020年、世界中の人々が最も必要としたアイテムの一つはマスクだった。機能性を担保した上で、ファッション性があるものを、毎日使うものだからこそ低価格で、トータルコーディネートを提案するべくファッションマスクを強化する」(柚木社長)

もう一つがコスメだ。

今年9月にコスメブランド「4me by GU」(フォーミー・バイ・ジーユー)を発売したが、マスク映えが重視されること等も踏まえ、来春夏には印象的な目元を実現するアイシャドーやマスカラなどを充実させる。

4. サステナビリティ

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服のリサイクルやGUマイルによる寄付など、サステナビリティの取り組みを強化。

Shutterstock/zlikovec

そして、4つ目のキーワードが、「サステナビリティ」だ。

「地球環境に対する意識は高まり、服もファッション性、価格だけでなく、どう作られているのか、作ったあと服はどうなるのかなどの重要性が非常に高くなっている」(柚木社長)

従来からグループで進める全商品リサイクルの取り組みを強化し、回収したGUの服でGUの服を再生する活動を開始することを明らかにした。2021年の3月初旬にウィメンズのニットポロシャツを皮切りに発売するという。

作る商品自体をサステナブルにする取り組みとして、服の端材を利用した再生ポリエステル素材である『レニュー』や、ペットボトルを利用した再生ポリエステル素材『レプリーブ』などを使った商品提案も行う。

さらに、柚木社長はこう示す。

「お客さまにサステナブルな活動に参加していただくことも考えている。全商品リサイクルもその一つだが、もう一つ、GUの買い物で貯めたGUマイルを使って寄付ができるアプリ会員向けのサービスも始動した。原料から生産者、GU、お客さま、この全体がつながり、協力し合って、サステナブルな活動に取り組み、社会に貢献していきたい」

生活者、生産者、地球とコネクトする「3つのコネクト宣言」によりGUの進む方向性や企業姿勢の指針を発表したのは2019年12月のこと。

柚木社長はこう強調する。

「(3つのコネクト宣言は)ウィズコロナ、アフターコロナでも変わることなく、むしろますます大事な軸になる。GUは今後もファッションで人々の生活を豊かにし、お客様や社会の役に立つ企業を目指したい。ファッションの力でより良い世の中を実現する。これがGUの使命だ

GUだけで売上高1兆円へ出店を加速

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ユニクロが進出している国全てにGUも進出すると、GUだけで売上は1兆円を超えると予測できる。

Getty Images/Kevin Frayer

出店戦略では、そのポテンシャルの大きさを感じさせる壮大なプランを描いている。

「海外は中国、台湾、香港のいわゆるグレーターチャイナで展開している。現在は台湾事業のみ黒字化だが、まずは中国事業、香港事業も黒字化させ成長軌道に乗せる」

柳井社長は中国で3000店舗は展開できると発言しているが、「GUは海外でも国内でも、ユニクロと同じ数まで最終的には出店したいし、出せると思う」と、柚木社長。

日本は今、ユニクロが850店舗ぐらいでGUは400店舗強。

「中国、台湾、香港はもちろん、ユニクロがお店を出している国には最終的には全てGUを出すのが基本戦略だ」(柚木社長)

これが実現すれば、GUだけでゆうに1兆円を超える売上高に達するはずだ。

ユニクロ、GUはいわば大規模なD2C

ユニクロ

撮影:小林優多郎

コロナ禍やデジタル化社会の中において、認知度が高いマスブランドが有利で、強いブランドはより強くなるといわれている。

GUの低価格化においても、スケールメリットのさらなる創出 がその原資となりうるし、人間の智恵とAIを活用した需要予測の向上や、サプライチェーン、物流システムなど、デジタルトランスフォーメーションのための投資なども、体力のある企業でないと投資ができない。

稼げる企業とそうでない会社の差はますます拡大していくだろう。

そして、改めて押さえておきたいのが、ユニクロ、GUは、今に時代にマッチした事業構造を有しているという点だ。

素材の調達から企画、製造、物流、販売まで一気通貫で自社の意志の下で行うSPA(製造小売り)型のビジネスモデルを構築。中間マージンを削減し、スケールメリットを創出しながら、低価格高品質なコストパフォーマンスの高い商品を提供し、売り切ることで、高収益を上げている。

ワンブランド型で、都心の一等地や郊外のロードサイド、商業施設内に大型の直営店を出店する一方で、オンラインストアを展開。

リアル店舗とオンラインストアの両方から売れ行きや顧客の声を吸い上げ、商品開発や販売数量決定、サービスなどに生かす、いわば大規模なD2C(ダイレクト・トゥー・コンシューマー)型ブランドとみることができる。

(文・松下久美)


松下久美:ファッションビジネス・ジャーナリスト、クミコム代表。「日本繊維新聞」の小売り・流通記者、「WWDジャパン」の編集記者、デスク、シニアエディターとして、20年以上ファッション企業の経営や戦略などを取材・執筆。2017年に独立。著書に『ユニクロ進化論』。

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