スペースXのイーロン・マスクCEO。
REUTERS/Hannibal Hanschke
- ヨーロッパ諸国は、60億ユーロ(約7600億円)の資金を投じ、スペースXのスターリンクと同様の衛星インターネットシステムを計画中だと報じられている。
- これにより、僻地に住む市民にインターネット・アクセスを提供し、政府は安全に通信できるようになる。
- 欧州連合(EU)が低軌道衛星コンステレーションの研究開始を承認したと、この件に詳しい関係者がフランスのレ・ゼコー紙に語った。
- 一方、イーロン・マスクはスペースXによる衛星インターネットのベータ版が、2021年2月頃までにヨーロッパで利用できるようになるかもしれないと述べている。
衛星ブロードバンド・インターネットの普及に向けた世界的な競争が加熱している。ヨーロッパ諸国も60億ユーロ(約7600億円)の費用をかけて、スペースX(SpaceX)のスターリンクと同じように機能する衛星コンステレーションの構築を計画中だと報じられた。
欧州委員会の匿名の関係者がフランスのレ・ゼコー紙に語ったところによると、欧州連合 (EU) は、低軌道衛星コンステレーションの研究開始を承認したという。これが実現すれば、僻地の住民にインターネット・アクセスを提供し、各国政府も安全な通信回線を確保できるという。
EUが12月17日に衛星コンステレーションについての発表を行う可能性があったとある関係者がブルームバーグに語ったが、それ以上の情報は明らかにしなかった。欧州委員会がブルームバーグに宛てたコメントによると、コンステレーションの研究は2021年初頭から始まり、実際の業務契約は同年末には締結される見込みだという。
レ・ゼコーによると、欧州委員会で産業政策を担当するティエリー・ブルトン(Thierry Breton)がこのプロジェクトを率いるという。彼はフランスのテック企業でCEOを歴任し、財務大臣を務めたこともある。
同紙によると、航空宇宙企業のエアバス(Airbus)がコンソーシアムを率い、タレス・アレーニア・スペース(Thales Alenia Space)、OHBシステム(OHB SE)、ユーテルサット•コミュニケーションズSA(Eutelsat Communications SA)、SES SA、テレスパツィオ(Telespazio)、アリアンスペース(Arianespace)などがそれに加わるという。
衛星インターネットシステムの構築には60億ユーロを要し、欧州連合、航空宇宙企業、地域復興基金などでそれを賄うという。欧州委員会は声明の中で予算についてコメントしておらず、Business Insiderからのコメントの要求にも応じていない。
ヨーロッパは、自前の衛星コンステレーションを持つことで、他国への依存度を下げることができる。
イーロン・マスク(Elon Musk)によって2002年に設立されたアメリカのスペースXは、高速インターネットサービス「スターリンク」の提供に向けて、すでに少なくとも830基の衛星を軌道上に打ち上げている。スターリンクが目指しているのは、最大で4万2000基の衛星を打ち上げ、高速インターネット網で地球全体をカバーすることだ。マスクは11月3日のツイートで、現在アメリカ北部とカナダ南部限定で提供しているスターリンクのパブリックベータ版について、ヨーロッパ諸国でも「当局の承認が得られ次第」、2021年の「2月か3月に」とサービスを開始できるだろうと述べた。
スペースXの最大のライバルとなるのは、イギリスに本部を置くワンウェブ(OneWeb)だ。同社は2022年までに650基の衛星を軌道に乗せる計画であり、グローバルなインターネットサービスの提供に向けて、最終的には合計4万8000基の衛星を打ち上げようとしている。これは、SpaceXがスターリンクのために計画している衛星の数よりも6000基多い。
中国もアメリカやイギリスに追いつこうと、「紅雲(Hongyun)」「鴻雁(Hongyan)」「Galaxy Space」という3つの低軌道衛星コンステレーションの開発を進めており、「紅雲」で864基、「鴻雁」で320基の衛星を打ち上げる計画だと、Roomが報じた。中国は近年、宇宙開発を最優先事項として掲げており、2030年までに宇宙開発大国となることを目指している。
(翻訳:仲田文子、編集:Toshihiko Inoue)