ドコモ新料金「ahamo」対抗打ち出す? 無言貫くソフトバンクが握る「値下げ」発表の行方

大手3キャリア

撮影:小林優多郎

12月18日、NTTドコモが既存料金プランの値下げを発表した。

「5Gギガホ」は名称を「5Gギガホプレミア」に変更。100GBのデータ容量が無制限、使えることになり、料金は月額7650円から6650円に1000円、値下げとなった。

NTTドコモの値下げを受けて、KDDIは「当社はお客さまにお選びいただける、新たな競争力のある料金プランに加え、auの料金水準の見直しなどを発表する予定」とコメントした。

5Gギガホプレミアが発表される前の12月15日にKDDIの髙橋誠社長は

「民間企業として競争がお客さまへの良いサービスをお届けすることにつながる。当然、我々としては、お客さまに選んでいただける料金、競争力ある料金にしたい。競合他社から新しい提案が出ているのは理解している。詳細を詰めており、1月には発表したい。遅いぞとお叱りを受けるかもしれませんが、ご要望にお答えしたい」(KDDI髙橋社長)

と発言している。

KDDIがやたらと平身低頭なのは、ここ最近、料金値下げで攻めたつもりが、裏目に出てばかりいるからだ。

政府から3キャリアに向けられた「値下げ」圧力

武田良太総務大臣

武田良太総務大臣。

出典:総務省

9月に菅政権が発足したころから、携帯電話料金の値下げ政策は菅総理の肝いりだった。政府からは「年内に答えを出せ」という圧力が大手キャリア3社にはかかっていた、とキャリア関係者は言う。

一方、同時にNTTによるNTTドコモの完全子会社化という話も動いていた。株式公開買い付け(TOB)期間中は、ドコモは身動きがとれなくなる。 

ドコモがTOBで何もできない中、政府からの要請に応えようと、最初に動きを見せたのがKDDIとソフトバンクだ。

10月28日にサブブランドとなるUQモバイル(KDDI)とワイモバイル(ソフトバンク)で20GBプランの新設を発表。2社は「政府が世界的に日本の通信料金は特に20GBが高いと指摘するなら、20GBを安くすれば良いのだろう、サブブランドで」という魂胆だったことから、武田良太総務大臣の逆鱗に触れた。

「メインからサブに移行する際に手数料があったり、手間があるのがけしからん。メインを安くしろ。誠意を見せるべき」との趣旨で、武田総務相が2社に詰め寄ったのだ。

また、髙橋誠社長が「携帯料金は国が決めるものではない」と一部メディアのインタビューで答えたことで、武田総務相の怒りが爆発した。

KDDIの髙橋誠社長

KDDIの髙橋誠社長(2020年10月撮影)。

撮影:小林優多郎

さらに、KDDIは、ドコモがahamoを発表した翌週にAmazonプライムのセット料金プラン(下の写真)を発表するも、これがSNSなどで「炎上」状態になってしまった。(発表タイミング的に致し方ない面はあるが)新料金プランが「ahamo対抗」になっておらず、また割引後の金額ばかりを強調するプレゼンが反感を買ったのだった。

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「データMAX 5G with Amazonプライム」は、月額1万285円(税込)の料金プラン。スライドのように月額3760円になるのは2年契約、自分を含め同居家族4回線以上の契約、KDDIの固定回線とセット契約の「auスマートバリュー」、契約翌月から月額1400円(税別)を6カ月間割引く「スマホ応援割III」、契約翌月から月額1000円(税別)を12カ月間割引く「5Gスタート割」適用時となるため、契約7カ月目までの期間のみ。

出典:KDDI

ここ数カ月、料金値下げに関して墓穴を掘っているKDDIとしては「真摯に対応していく」というメッセージを総務大臣や世間に発信する必要があった。そこで、ドコモの発表を受けて、即座にコメントを出したというわけだ。

ソフトバンクに「値下げ」のボールが移った

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ドコモの大幅値下げとして注目を集める新料金プラン「ahamo」。

撮影:小林優多郎

TOBが完了し、12月1日に井伊基之新社長体制になって「料金値下げ」のストライクを連発するドコモと、暴投が続くKDDI。

そんななか、いよいよボールを握ることになったのがソフトバンクだ。どこかのタイミングで、値下げのボールを投げ返さなくてはならない。

特にメインとなるソフトバンク本体のプランに手を入れる必要がある。ドコモは現在も無料キャンペーンでテザリングを含めた無制限プランを提供しているが、これが2021年4月から恒常化する。auはスマホだけであれば無制限だ。

現在、ソフトバンクとしては月間50GBだが、動画やSNSなどが見放題の「メリハリプラン」となっている。実際、筆者もメリハリプランを使っているが、確かにYouTubeやTVerなどでデータを消費しないので、50GBでも足りている。しかし、他社が使い放題をアピールする中、これから見劣りするのは間違いない。

ソフトバンクの「メリハリプラン」

ソフトバンクの「メリハリプラン」。

撮影:伊藤有

料金面においても、ドコモが月額6650円なのに対して、メリハリプランは月額8480円だ。ドコモに比べて割高な感じは否めない。

実はソフトバンクは、これまで何度も「発表会をやるのではないか」という噂が出ていた。iPhone 12が発売となる10月ごろから、通信業界では「ソフトバンクがそろそろ発表会をしそう」という話が何度も浮上しては消滅していた。

実際、あるメーカー関係者から9月下旬に「来週、うちとソフトバンクとの発表があるのでお楽しみに」と耳打ちされたのだが、結局、発表は流れてしまっていた。

他社が料金に関して発表したり、武田総務大臣が定例会見で激怒するのを見て、ソフトバンクとしてはタイミングを失ってしまったように見える。

ソフトバンクの出方を見て、KDDIは打ち返す方針か

大手3キャリア

撮影:小林優多郎

無言を貫くソフトバンクだが、競合であるKDDI関係者は「12月中にも何らかの発表をするのではないか」と予想する。

「ソフトバンクは12月下旬にワイモバイルの新料金プラン“シンプル20”をスタートすると発表している。リリース通り、20GB・月額4480円のまま出すとは思えない。12月中に改訂したプランを発表するのではないか」(KDDI関係者)

確かに20GBで月額4480円という値付けでは、20GBで月額2980円のahamo対抗にもなっていない。全く競争力のない料金プランを出すというのはあまりにやる気がなさ過ぎる。12月中に中身を改訂したかたちでリリースするのが無難だろう。

一方、KDDIは、

「1月に新しいプランを出すと社長が表明済み。UQモバイルのプラン提供は2月だし、(eSIM専業のMVNOである)KDDI Digital Lifeは来春ということになっている。ドコモの出方はわかったので、あとはソフトバンクの動きを見て、1月に向けてじっくり作戦を練っていきたい」(同)

という。KDDIとしてはもう失敗はできない。

12月中にもソフトバンクがどんな球を投げてくるのか。球種によって、今後の料金競争の流れが変わることになりそうだ。

(文・石川温

編集部より:初出時、文中で「管政権」としておりましたが、正しくは「菅政権」です。お詫びして訂正致します 2020年12月21日 11:25

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