2020年「コロナ経営破たん」企業をふり返る——アパレルの名門レナウン、LCCの雄エア・アジア日本法人も…

2020年はアパレルの名門企業「レナウン」やLCCの雄「エアアジア・ジャパン」など新型コロナ関連の経営破たんが相次いだ1年だった。

2020年はアパレルの名門企業「レナウン」やLCCの雄「エアアジア・ジャパン」など新型コロナ関連の経営破たんが相次いだ1年だった。

REUTERS/ISSEI KATO、今村拓馬

2020年はコロナ禍で多くの企業が苦境にあえいだ。東京商工リサーチによると、2月以降に新型コロナウイルス関連で経営破たんした企業(負債1000万円以上)は、12月22日午後4時現在で累計814件(倒産749件、弁護士一任・準備中65件)にのぼっている。

同社のレポートによると、破綻件数は6月の103件をピークに前月比で減少が続いたが、9月には3カ月ぶりに100件の大台を突破。11月まで3カ月連続で100件超と、なおも厳しい情勢だという。

アパレル御三家の一角「レナウン」は“破産”で118年の歴史に幕

撮影:今村拓馬

2020年上半期で大きな衝撃を与えたのが、三陽商会とオンワード樫山とともに“アパレル御三家”と呼ばれた「レナウン」の経営破たんだ。国内上場企業としてはコロナ関連で初の経営破たんとなった。

同社は1902年、佐々木八十八が大阪で創業した「佐々木営業部」を前身とする老舗企業だ。

レナウンの名は、1922年に来日したイギリスのエドワード皇太子(後のエドワード8世、退位後はウインザー公爵)が座乗していた御召しの巡洋艦レナウンに由来する。なお、この時に随伴した巡洋艦の名はダーバンだった。

戦後の高度経済成長期を経て、アパレルの世界的企業として成長した。60年代は婦人服ブランドとして人気に。小林亜星作曲のCMソング「レナウン娘」やテレビCM「ワンサカ娘」も話題になった。

レナウンのブランド「ダーバン」のCMにはフランスの俳優アラン・ドロンが起用された。

レナウンのブランド「ダーバン」のCMにはフランスの俳優アラン・ドロンが起用された。

出典:『財界』1979年5月22号、撮影:吉川慧

紳士服ブランド「ダーバン」や傘のエンブレムで知られる「アーノルド・パーマー」などのブランドも展開。1990年には英国発の高級ブランドでサッチャー元首相らに愛用されたことでも知られる「アクアスキュータム」を買収した。

ところが90年代のバブル崩壊後、販売場所の主力だった百貨店が集客力を失ったことで業績不振に。近年はユニクロなどに代表されるファストファッションの波にも押された。

かつてレナウンが本社を置いた東京・江東区のTFTビル。

かつてレナウンが本社を置いた東京・江東区のTFTビル。

撮影:今村拓馬

2010年には中国の繊維大手「山東如意科技集団」の傘下に入り、業績立て直しを図った。

ところが、2019年には折からの経営不振に加えて消費増税と暖冬で打撃を受け、今年に入ってからは新型コロナ禍が追い打ちに。5月15日、子会社レナウンエージェンシーは東京地裁に民事再生法の適用を申請。同日付けで再生手続の開始決定を受けた。

6月15日午後3時、東証一部でレナウン株の取引が終わった。最後の終値は4円。朝日新聞によると、これをもとに試算した時価総額は約4億円で、リーマン・ショック前の500分の1未満だった。

東京商工リサーチによると民事再生法の申請時点での負債は約138億7900万円。東京地裁は10月30日に民事再生手続廃止を、11月27日には破産手続開始を決定した。

エアアジア・ジャパン、国内航空業界で初のコロナ関連経営破たん

2014年7月に開かれたエアアジア・ジャパンの設立会見。出資していた楽天の三木谷浩史代表取締役会長も登壇していた。

2014年7月に開かれたエアアジア・ジャパンの設立会見。出資していた楽天の三木谷浩史代表取締役会長も登壇していた。

REUTERS/ISSEI KATO

国内航空業界で初のコロナ倒産となったのがLCCの「エアアジア・ジャパン」だ。

同社は2014年3月、マレーシアに本社を置くアジア最大のLCC「エアアジア・インベストメント・リミテッド」の子会社として創業した。

セントレア(中部国際空港)を拠点に就航便の増加を狙ったが、従来より搭乗率に課題があったという。

「搭乗率が伸び悩み、フル稼働に至らぬなか、外注費など経費負担が重く赤字決算となるなど厳しい運営を強いられていた」
帝国データバンク

加えて、新型コロナ禍により4月以降は全便運休となった。運行再開後も客足は鈍く、リストラを実施するも経営状況は好転しなかった。

同社は11月17日、東京地裁に破産手続き開始を申し立て、財産の処分を禁止する保全管理命令を受けた。12月5日、セントレア空港発着の全4路が廃止となった。

東京商工リサーチによると負債総額は約217億円。名古屋テレビによると、社員の大半は11月4日付で解雇。社員278人のうち約半数が東海3県での現地採用だった。

エアアジア・ジャパンの保全管理人である弁護士の声明によると、発行済のチケットは払い戻しのめどは立っていないという。産経新聞によると、航空券の払い戻しを受けられない客は2万3000人以上いる。また、返金の見通しが立たない航空券代は約5億2000万円にのぼるという。

AAJ社は、2020年10月5日に路線廃止を決定し、同年12月5日をもって事業を停止することを国土交通省に届け出、同日まで運行を休止する予定としておりますが、保全管理命令の発令により、AAJ社が発行したチケットについての払戻し(以下、AAJの国内・国際旅客運送約款に基づく払戻しを意味します。)等については行うことができなくなります
また、破産手続開始申立てにあたり提出されたAAJ社の資料によれば、現時点で、同社はチケットの返金に優先する多額の公租公課を負担しており、現在有する資産によってはこれらの公租公課の全額を支払う見通しが立っていないため、将来におけるチケットの払戻しにつきましても、現在、見通しは立っておりません。
エアアジア・ジャパン発行のチケットの払戻しについて

創業1869年、小田原の老舗かまぼこ店「丸う田代」も廃業

観光地も苦境にあえいでいる。1869年創業の“かまぼこ”の老舗「丸う田代」は11月27日、横浜地裁小田原支部に自己破産を申請した。

同社は神奈川県小田原で「鈴廣」「籠清」と並ぶ“かまぼこ御三家”の一つだった。品評会でも農水大臣賞や水産庁長官賞などの受賞経験がある。帝国データバンクによると、ピーク時の1992年3月期の年売上高は約25億6300万円を計上していたが、次第に販売額が鈍化。経営難に陥っていたという。

「借入金が年商を上回るようになり、債務超過で余裕のない資金繰りとなっていた」
「2020年3月期の年売上高は約14億5200万円にとどまり、約7200万円の当期純損失を計上。5期連続欠損で資金繰りに窮するようになり、複数の取引先への支払遅延や支払延期要請が表面化」
帝国データバンク

そこに新型コロナ禍がやってきた。神奈川新聞によると、同社は2月末の時点で銀行から「4月以降は融資を続けられない」と伝えられていたという。借入金の返済を猶予してもらうも、新たな融資を受けられずに事業継続を断念。小田原の本店は10月11日に閉店した。

東京商工リサーチによると、負債総額は約24億2446万円(2020年3月期末時点)。

負債総額トップはホワイト・ベアーファミリーの278億円

出典:ホワイト・ベアーファミリー公式サイト

負債総額でエアアジア・ジャパンの217億円を上回ったのが、旅行業のホワイト・ベアーファミリーだ。

東京商工リサーチによると、負債総額は約278億円。新型コロナ関連の経営破たんとして最大で、2020年における負債額としても最大。かつ「平成に入ってから旅行業としても過去最大」だという。

同社は1977年創業。創業者の母校・関西学院大学を中心とするスキーツアーサークルのツアー企画の運営がきっかけ。後に国内旅行業に登録し、1981年に株式会社ホワイト・ベアーファミリーとして法人化した。

旅行プランは「しろくまツアー」「ジオツアー」などの名称で知られ、ホテル業やレンタカー予約サイトになどにも進出。近年はインバウンド需要の高まりもあって業績好調だった。

「近年はインバウンド客を取り込み、ホテル事業にも参入して急速に業容を拡大し、2019年3月期には年売上高約207億4000万円を計上していた」(帝国データバンク

ところが、新型コロナ禍で経営状況が急激に悪化。4月27日、グループ会社が大阪地裁に民事再生法の適用を申請した

ホワイト・ベアーファミリーは10月20日、リゾート運営大手「星野リゾート」とのスポンサー契約の締結を発表。今後は再生計画案に基づき再起を図ることになる。

新型コロナ禍は飲食、アパレル、宿泊業などに大打撃

撮影:吉川慧

新型コロナ禍で外出を控える動きが広まったことで、飲食やアパレル、宿泊業などは大打撃を受けた。

東京商工リサーチによると、12月21日午後4時現在でのコロナ関連破たんは、業種別では飲食業が138件と最多。飲食業界の不振は関連業界にも影響を及ぼしているという。

「飲食料品卸売業が40件、食品製造業も28件と多く、飲食業界の不振が影響している」(東京商工リサーチ

次いでアパレル関連(製造、販売)が79件。コロナ禍で客足が遠のいたり、休業要請などで打撃を受けたとみられる。

ホテル・旅館などの宿泊業も60件にのぼった。インバウンド需要の蒸発や、東京オリンピック・パラリンピック大会の延期も影響したと見られる。

冬に入り、感染拡大も危惧されている。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗船者を含めると、累計感染者数はこの12月で20万人を超えたとの報道もある

政府は12月14日、「GoToトラベル」を12月28日〜2021年1月11日まで全国で一斉停止するとした。感染状況の拡大を受けて、各自治体レベルでは酒類を提供する飲食店などに営業時間の短縮や、年末年始の帰省自粛など要請している。忘年会・新年会などの書き入れ時を期待していた事業者にとっては、なおも厳しい状況が続きそうだ。

(文・吉川慧

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