2022年卒業の大学背の新卒採用に、コロナの影響が出始めている。
撮影:今村拓馬
2022年に卒業予定の大学生の新卒採用の数について、前年よりも「減る」と答えた企業が11.6%にのぼり、11年ぶりに「増える」と答えた企業を上回った。
.リクルートワークス研究所が行ったアンケート調査で分かった。
「分からない」という企業も26.1%で4社に1社以上の割合になっており、採用数の決定が遅れており、新型コロナウイルスの感染拡大が、現在の大学3年生の就職にも大きな影響を与えていることが分かる。
新卒採用「減る」は4ポイント増加
新卒採用人数について「わからない」と回答した企業も増加した。
出典:リクルートワークス研究所調査
調査期間は10月~11月12日、毎年同じ企業を対象にFAXか電話で調査実施し、2020年は4516社が回答した。
調査の結果、2022年卒の大学生・大学院生を対象とした新卒採用見通しは、「減る」とした企業は前年よりも4ポイント増えて、11.6%。「わからない」は6.4ポイント増えて26.1%だった。
新型コロナの影響で、採用を抑制したり、採用計画そのものを立てられない企業が多いことが分かる。
一方で新卒採用見通しが「増える」と回答した企業は3.8ポイント減って7.7%。「変わらない」も5.8ポイント減って45.0%だった。
リーマンショック後、初めてのマイナス
リーマンショック以降は就活生有利の「売り手市場」が続いていた。
出典:リクルートワークス研究所調査
「増える」から「減る」を引いたポイントは、マイナス3.9ポイント。リーマンショック後では初めてマイナスとなった。
リーマン・ショックの影響が直撃した2010 年卒では、「増える」が8.3%で「減る」が15.7%となり、ポイント差はマイナス7.4ポイント。リーマン・ショックほどの悪化とはなっていない。
2011年卒もマイナスだったが、その後は新卒採用が増えている。企業にしてみれば年々採用数は増やし続けたいが、2022年卒は11年ぶりに「減る」が上回った。
飲食・宿泊業は大きく減少
業界により採用数の増減は大きく異なる。
出典:リクルートワークス研究所調査
業界別でみると、最も深刻な影響を受けているのが、「飲食店・宿泊業」で新卒採用見通しは「増える」が5.9%に対し「減る」が21.6パーセントで、差はマイナス15.7%ポイント。
次に差が大きかったのは「卸売業」でマイナス6.1%ポイント。「製造業(機械以外)」がマイナス5.8ポイントだった。
逆に「増える」が上回ったのが、「建設業」(プラス2ポイント)「医療・福祉」(プラス0.8ポイント)だった。
調査では「人手不足が深刻な一部の業種を除いて低水準となっている」としている。
小規模な会社で積極採用も
リクルートワークス研究所・研究員の古屋氏は「就活生にはいろいろな企業を知ってほしい」と話す。
オンラインで会見を撮影
一方で新卒採用数が「増える」「変わらなえい」とした企業の合計は50.8%で半数を超えており、企業によっては積極的に採用を続けていることもうかがえる。
企業規模でみると、「5人から99人」の企業では、2022年の新卒採用が「増える」とした企業が3.7%で、「減る」の2.8%を上回った。
リクルートワークス研究所の古屋星斗研究員は次のように指摘する。
「これまでは売り手市場が続き、ベンチャーを含めて中小企業では人材不足の状態。『10年ぶりにやっと来た採用のチャンス』と捉えている企業もある。就活生は早めに準備を初めて、より多くの企業を知ることがとても大事になっている」
また調査では、今年初めて「新卒採用の姿勢」についても質問。
アンケートの結果、大学生の新卒採用にについては「毎年同程度の人数を採用する」と答えた企業は47.3%上っている。
毎年同程度の人数を作用するという企業は47%に上る。
出典:リクルートワークス研究所調査
「景況感がここまで悪化しているにも関わらず、約半数の企業が、毎年同程度の新卒採用をすると答えたのは驚きだった。
日本ではかつて新卒採用を絞り、就職氷河期世代と呼ばれる現在の40代後半の社員が手薄になったことの反省もあるのではないか」(古屋氏)
また古屋氏は、リーマンショック時とも新卒採用が置かれている現状は違うと指摘する。
「就活生にとって『厳しくない』とは言えないが、2021年卒の内定率は10月1日時点で約7割と、売り手市場だった2016年並みで大きな影響は見られていない。
今回の調査では、(前年と比べて)採用を増やすと言っている企業が7.7%もいたことは正直意外だった。人手不足が続いていた企業にとっては、経営の中核を担う人材や、技術の継承をするために新卒採用に意欲的な起業があることにも目を向けてほしい」
(文・横山耕太郎)