- ローマに本拠を置く建築事務所ラッザリーニ・デザイン・スタジオ(Lazzarini Design Studio)は、メガヨット「プローディギウム(Prodigium)」のコンセプトデザインを公開した。動物から着想したデザインの第2弾だ。
- このヨットは、サメの姿を模した外観だが、その内装のモチーフは古代ローマの建築だ。
- 実際に建造される場合、28カ月の月日と、およそ3億6450万ドル(約377億円)の費用を要する見込みだと、デザイナーのピエールパオロ・ラッザリーニ(Pierpaolo Lazzarini)はBusiness Insiderとのメールインタビューで明かした。
- そのため、販売価格は6億740万ドル(約630億円)にまで跳ね上がる可能性がある。
- 新型コロナウイルスのパンデミックを受けて、2020年のヨット売り上げは一時急増した。感染を避けるために数週間から数カ月にわたってヨットをチャーターし、隔離生活を送る富裕層も現れている。
ローマに本拠を置く建築事務所ラッザリーニ・デザイン・スタジオ(Lazzarini Design Studio)が、最新のメガヨットのデザインを公開した。ある動物と古代ローマの建築から発想を得たこのヨットの名は「プローディギウム(Prodigium)」という。
メールインタビューに応じたデザイナーのピエールパオロ・ラッザリーニ(Pierpaolo Lazzarini)によると、このままのデザインで建造した場合、28カ月の年月と、およそ3億6450万ドル(約377億円)の費用を要する見込みだと述べた。そのため、販売価格は6億740万ドル(約630億円)にまで跳ね上がる可能性があるというのが、ラッザリーニの見積だ。
天文学的な金額だが、2020年はこうした新たなヨットのデザインを披露するのに適した年と言える。新型コロナウイルスによるパンデミックの時期に、ヨット市場はその強みを発揮していたからだ。一部のクルーズ船内で新型コロナウイルスが蔓延したことは広く知られているが、スーパーヨットが停泊するマリーナが閉鎖されることがなかったのはBusiness Insiderが3月に伝えた通りだ。
「実際、ヨットはいかなる状況においても、最も衛生的で安全な場所の1つと考えられている」と、スーパーヨットや高級ヨットオーナー向けのサービスを提供するIYCは、3月に発表したニュースリリースで述べている。「クルーメンバーの昼夜を問わぬ入念な作業により、各々のヨットは、航海が行われるたびごとに、航海の前も航海中も、徹底的に清掃され、消毒されている」と、IYCは感染対策が確実に行われていることを強調した。
その結果、富裕層の中には、スーパーヨットのチャーターサービスを利用して、最長で数カ月にわたる隔離生活を送る人々も現れた。
ヨットのレンタルおよび「体験」を提供する企業、ボート・アフェア(BoatAffair)の共同創業者兼CEOのエイドリアン・ウォーカー(Adrian Walker)は「予約申し込みは、二桁の伸びを見せている。ホテルでの滞在から、ヨットでのバケーションへと切り替えようとする顧客からの予約が入っているようだ」と『Travel + Leisure(トラベル・アンド・レジャー)』誌のパウラ・フローリック(Paula Froelich)記者に述べている。
同様に、パンデミック初期には、ヨットを含む小型船舶の売り上げも増加した。その好調ぶりが頂点に達したのは5月のことで、コロナ以前の数字と比べて9%増加し、売り上げはここ10年間で最高になったと、業界団体の全米海洋設備生産者協会(National Marine Manufacturers Association:NMMA)の報告書が伝えている。さらに、バロンズ・ペンタ(Barron's Penta)が入手したNMMAのデータによると、5月のヨット売り上げは前月比で51%増を記録したという。
メガヨットをデザインしたラッザリーニは、「遅かれ早かれ、(このコンセプトデザインを建造する)勇気ある人物が現れるだろう」と楽観的だ。
では、このメガヨット、プローディギウムのコンセプトデザインを見ていこう。
プローディギウムは全長501フィート(約153メートル)の船舶で、サメの姿を模した要素が盛り込まれている
だが、このアバンギャルドなメガヨットをデザインする上で、発想の源となったのはサメだけはない
ラッザリーニ・デザイン・スタジオは声明で、「サメには、海の帝王としてのイメージを託した」と記している。「『帝王と帝国』という言葉から必然的に導き出されることだが、我々はこのヨットのデザインの発想を、最も著名な帝国であるローマ帝国に求めた」
その結果、このヨットのあちこちに、サメと古代ローマの建築物から着想を得た意匠が認められる
サメのひれのような形をしたテラスから、プール脇の円柱まで、さまざまな部分に両方の影響が見てとれるはずだ
このユニークなコンセプトデザインは、ローマに本拠を置くラッザリーニ・デザイン・スタジオにとって、自然から発想を得たヨットの第2弾だ。同スタジオではこのシリーズで計6つのデザインを発表する予定だという
このシリーズの第1弾は、5億ドル(約518億円)の「アヴァンガルディア(Avanguardia、前衛の意味)」で、9月にコンセプトデザインが公開された。日本のアニメからインスピレーションを得たヨットは、白鳥に似た外観を持ち、「首」の部分が動くようになっている
第3弾となる次のコンセプトデザインは2021年1月に公開すると、デザイナーのピエールパオロ・ラッザリーニは述べていた
Source: Travel and Leisure
プローディギウムの横幅は112フィート(約34メートル)近くあり、ラッザリーニ・デザイン・スタジオは「これまで構想されたものの中でも最大級のメガヨット」としている
ここで言う「横幅」には、船体の両サイドからそれぞれ22フィート(約6.7メートル)近く突き出ているテラスは含まれていない
このテラスは、サメのヒレを模してデザインされたものだ
サメをデザインに反映させた箇所はほかにもある。上部デッキの居住エリアもサメのような形をしている
ラッザリーニ・デザイン・スタジオの解説では、サメの要素に古代ローマ帝国の建築の影響を合わせることで、「未来的」な外観を作り上げたとされている
船内プールのメイン・エントランスに立つ2本の柱も、古代ローマの影響を受けたものだという
この2本の柱が、上のフロアとそこにあるプールを支えている
このメガヨットには、ほかにもプールがある
コンセプトデザインによると、プローディギウムは6層構造で、最上部にメインの居住スペースがある
船体の後方部には、船長98フィート(約30メートル)のヨットを搭載できるスペースが設けられている
さらに、ウォーターレジャー用の遊具を収納するガレージが2つ用意され、
3つの格納庫に3機のヘリコプターが駐機可能で、はしけも8艘収容できる
そのほか、乗客向け施設としては、ジムや追加の居住スペースがある
船首部分が開放空間となっている通常のヨットとは異なり、プローディギウムの船首は、屋根に覆われたデッキで構成されている
コンセプトデザインを見る限り、上部デッキの屋根にはソーラーパネルが敷き詰められているようだ
だが、このヨットは、中心部に据えられた3基のジェットエンジンと2基の電気エンジンによって推進力を得る
これらのエンジンによって、プローディギウムは22ノット(約41km/h)の巡航速度を実現する
ラッザリーニ・デザイン・スタジオによると、鋼鉄製の船体は重心が低くなるよう設計されており、エネルギー効率が向上しているという
このヨットには、下階の部屋を含めて乗客約40名が滞在可能で、
さらにスタッフ18名とクルーメンバー12名が常駐可能なスペースがあるという
ラッザリーニによれば、彼のデザイン・スタジオでは、デザインの内容や建造の可能性などについて、ブローカーやヨット代理店、さらには造船所と密接に連絡を取りあっているという
(翻訳:長谷 睦/ガリレオ、編集:Toshihiko Inoue)