アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)。2024年までに自動運転車の生産を開始するとされる。
Richard Drew/AP
- 米アップルは2024年までに自動運転車の生産開始を目指すという。ロイターが12月21日に報じた。
- ロイターによれば、アップル自身は自動運転と車載電池に関する技術を提供し、組み立ては他社に委託する模様だ。
- テクノロジー業界に詳しい専門家たちは、Business Insiderの取材に対し、製造委託先の最有力候補として複数の企業名を挙げた。
この数年、公的な発表は一度もなかったものの、アップルが何らかの車両を開発しているという話は何度も聞かれた。そしてこの12月21日、同社が2024年までにその車両をデビューさせる計画を進めていることが、ロイターの報道で明らかになった。
ただし、アップルは単体でこのプロジェクト全体を進めるわけではなく、ロイターによれば、自動運転システムと車載電池に関する技術はアップルが自ら開発し、組み立てを担う自動車メーカーと提携するという。
Insiderはテクノロジー業界に詳しい2人の専門家に取材し、アップルが世に送り出す自動運転車の組み立てを担うメーカーがどこになるか、候補を挙げてもらった。
テスラ(Tesla)
テスラが中国・上海で操業する「ギガファクトリー」。テスラとアップルが組むというストーリーは魅力的だが……。
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自動車工場を建設して車体を組み立てるのは、アップルにとっては金のかかる気晴らしにしかならない。同社の圧倒的なブランド力を考えれば、製造工程をハンドリングしてくれるパートナー企業を見つけ出すのはわけもないこと、というのがウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブスの見方だ。
アイブスは、アップルのパートナーになる可能性が最も高い候補を2社挙げ、その一方をテスラだとする。
ちなみに、ロイターの報道では、アップルが準備しているのが電気自動車なのかどうかは明言されていない。ただ、車載電池(バッテリー)に関するテクノロジーを組み込むとのことなので、そうなると電動パワートレインを備えた電気自動車(EV)ということになるだろう。
米投資銀行ロス・キャピタル・パートナーズが2018年に発行した調査レポートによれば、アップルは2014年にテスラの買収を検討したものの、イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が買収後も同社にとどまりたいと主張したため、最終的に決裂したという。
フォルクスワーゲン(Volkswagen)
フォルクスワーゲンの新型EV「iD.4」。同社のEVビジネスモデルは、生産から販売までの垂直統合型とは異なる。
Volkswagen
ウェドブッシュ・セキュリティーズのダン・アイブス(前出)は、フォルクスワーゲンがパートナーに選ばれる可能性はテスラ以上に高いと分析する。
ニューヨーク・タイムズの2018年の記事は、フォルクスワーゲンとアップルはすでに提携関係にあることを指摘している。それによると、アップルはフォルクスワーゲンのミニバン「T6 トランスポーター(Transporter)」を、従業員の送迎に使う自動運転シャトルバスに改修することを計画していたという。
フォルクスワーゲンは自社開発中の次世代EVプラットフォーム「MEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス)」を、フォードなど提携する他の自動車メーカーに提供するビジネス展開を計画している。
マグナ・シュタイヤー(Magna Steyr)
マグナ・シュタイアはフィスカー(Fisker)と新型EV「オーシャン(Ocean)」の生産委託契約を締結している。
Fisker
米調査会社ループ・ベンチャーズのマネージングパートナー、ジーン・ミュンスターによると、他社が設計した自動車の組み立てについて十分な経験を持つマグナ・シュタイヤーこそが、アップルにとってベストの選択だと分析する。
マグナはトヨタ自動車やBMWといった大手自動車メーカーとの協業実績が豊富で、EVスタートアップのフィスカー(Fisker)が2021年に発表を予定している新型EV「オーシャン(Ocean)」の生産委託を請け負っている。
アップルとマグナは以前にも協業を検討した過去があり、ロイターの報道によれば、当時はアップル側の計画が不透明化したために交渉がストップしたという。
(翻訳・編集:川村力)