レイ・ダリオ氏。
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- ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者で著名投資家のレイ・ダリオ氏は、アメリカの政治的分断、経済格差が衝突につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。ある種の内戦になる可能性もあるという。
- CNNの12月22日(現地時間)のインタビューでダリオ氏は、歴史を学ぶことで「大きな経済格差と大きな価値観の隔たりがあるところに多くの債務、経済の悪化が生じると衝突や脆弱性が生まれる」サイクルを見つけたと語った。
- 迫りくる衝突の脅威は失業と生産性の欠如のせいであり、政治の分極化がその原動力となっているとダリオ氏は指摘した。サンフランシスコやニューヨークといった都市からの有名企業の幹部らの流出を、同氏はある種の内戦と呼んだ。
- 「人々がある場所から別の場所へと移っているのは、税金のためでもあるが、他の理由のためでもある」とダリオ氏は言う。「最悪の可能性は、どちらかが『これはもう自分たちの国じゃない。自分たちの仲間じゃない』と言い出すことだ」
- さまざまな危機がアメリカに影響を及ぼす中、ダリオ氏は何カ月も前から革命や内戦といった深刻な結果を警告してきた。
ヘッジファンド世界最大手ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者で著名投資家のレイ・ダリオ氏は、アメリカの政治的分断、経済格差が衝突につながる恐れがあると警鐘を鳴らした。ある種の内戦になる可能性もあるという。
ダリオ氏はCNNの12月22日のインタビューでアメリカ経済の現状について語った。インタビューは先週、同氏の息子が17日に事故で死亡する前に収録されたものだ。
ダリオ氏は、3つの大きな力が働いていると指摘した。経済格差、価値観の隔たり、政治的な断絶だ。1930年代以来、これほどのギャップが生じたことはないと同氏は言う。
「歴史は教えてくれる。わたしは過去500年の歴史とサイクルを学んできた。大きな経済格差と大きな価値観の隔たりがあるところに多くの債務、経済の悪化が生じると衝突や脆弱性が生まれる。そして、経済が大半の人々にとって良くならない限り、この状況は続くだろう」
この問題は雇用と生産性の欠如からくると、ダリオ氏は指摘する。新型コロナウイルスのパンデミックによって失業や永久に失われる職が増えることで、状況は「悪化し続ける」だろうという。
また、政治のさらなる分極化、政治的穏健さの欠如が迫りくる衝突の脅威の原動力となっているとも語った。
ダリオ氏は「選挙の地図を見れば赤と青があることに気付くが、赤がどのくらい赤なのか、青がどのくらい青なのかは分からない」とした上で、人々はこれまでになく自分たちの考え方を「譲歩しなく」なっていると付け加えた。
同氏は最近、サンフランシスコやニューヨークといった大都市から企業の幹部や企業そのものまでがテキサス州やフロリダ州といった場所へ流出していることにも触れた。ここ数カ月の間に、オラクルの創業者ラリー・エリソン氏やドロップボックス(Dropbox)のCEOドリュー・ハウストン氏、テスラとスペースXのCEOイーロン・マスク氏といったビリオネアたちがシリコンバレーを去り、オラクルとヒューレット・パッカード・エンタープライズはどちらも本社をテキサス州に移している。ベンチャーキャピタリストのキース・ラボイス氏もサンフランシスコの税金を非難した後、フロリダ州マイアミに引っ越した。
ダリオ氏はこうした移動をある種の「内戦」になぞらえた。
「わたしたちはある種の内戦を目の当たりにしている。人々がある場所から別の場所へと移っているのは、税金のためでもあるが、他の理由のためでもある」とダリオ氏は言う。
「最悪の可能性は、どちらかが『これはもう自分たちの国じゃない。自分たちの仲間じゃない』と言い出すことだ」
その上で同氏は「意見の相違を解消する手段より、人々が支持する目的の方が重要だとしたら、それは危機的な状況だ」と指摘した。
新型コロナウイルスのパンデミックや陰りを見せ始めている経済、財政赤字、政治的分断、経済格差といったさまざまな危機がアメリカに影響を及ぼす中、ダリオ氏は何カ月も前から革命や内戦といった深刻な結果を警告してきた。カーン・アカデミーの創設者サル・カーン(Sal Khan)氏との4月のインタビューでダリオ氏は、アメリカン・ドリームはもう「存在しない」とし、それは資本主義の崩壊につながりかねないと語った。同氏は経済格差を「国家の有事」と表現した。
「人々にチャンスがある状況でなくなれば、存在するあらゆるポテンシャルをいかすことができない(=非経済的)だけでなく、システムのあり方を脅かすことになる」とダリオ氏は語った。
「それが経済の悪化とウイルスとともにやって来ていることは明らかだ」
(翻訳、編集:山口佳美)