自動運転トラックの開発を進めるアイク(Ike)は、ソフトバンクが出資するニューロの傘下に入ることを明らかにした。
Ike
ソフトバンクが1000億円超を出資する配送用自動運転スタートアップのニューロ(Nuro)が、自動運転トラック開発のアイク(Ike)を買収した。両社がそれぞれの公式ブログで12月24日、明らかにした。
アイクによると、すでにチームとテクノロジーの統合に取りかかっているという。
今回の買収について、ニューロのデイブ・ファーガソン共同創業者兼社長は同社ブログで次のように背景を説明している。
「2年半前、(ニューロ共同創業者の)ジアジュン・ジウと僕は、アイクの共同創業者であるナンシー・スン、オルデン・ウッドロウ、ユル・バンデンバーグの3人と会って、数十年とは言わず数年以内に自動運転技術の持つ可能性を花開かせたいという話をした。
その時点で、人を乗せるより物を運ぶほうを優先すべきだということ、カルチャーやチームビルディングのための投資を重視したいということでは一致していた。そんな親近感から、自動運転の世界でこれまでにないことを何かやりたいよねという話になって、アイクの株式と交換でニューロのソフトウェアスタックをライセンス供与することになったんだ(2018年10月以降)」
さらに、そうした自動運転の開発プロセス以外にも、個人的な関係がスムーズな買収の実現を下支えしたようだ。
「スラック(Slack)のチャンネルを共有したり、お互いにアドバイスし合ったり、その後も親しい関係は続いて、テクノロジーやオーナーシップ(所有権)を超えた一体感が生まれていった。
実はそれだけじゃなくて、アイクのバンデンバーグと僕は博士課程在籍時代に一緒に論文を書いて以来、15年以上もの個人的つき合いがあって、そういう深いつながりが今日の買収につながったわけさ」
若いスタートアップらしいエピソードだが、両社が組む主な目的は、双方のブログ記事からはっきりしている。
ニューロのファーガソンが強調するように、「最大級に安全に配慮したシステムベースのアプローチ(=事故リスクを伴う公道での試験運転を避けたシステム上での開発)」と「世界レベルのバーチャル・シュミレーションツール」を、ニューロの実現間近の自動運転配送サービスに活用することだ。
カリフォルニア州で初めて商用運行の許可を取得
アイクの買収発表と同日、ニューロは米カリフォルニア州車両管理局(DMV)から、自動運転車の公道への展開を認められる初の企業となった。同社が本拠を置くベイエリアの2つの郡(サンマテオおよびサンタクララ)での商用運行が可能になる。
当初はトヨタの(プラグインハイブリッド車)プリウスを完全自律走行モードで運用し、続いて自社開発の自動運転EV「R2」を投入するという。
アメリカの3都市で完全無人自動運転の試験走行を実施したニューロ。「R2」(中央の小型車両)は今後、ユーザーから配送料金を徴収する商用サービスに投入される。
Nuro
2020年はニューロにとって飛躍の年となった。
4月に(グーグルの兄弟会社ウェイモに続いて)カリフォルニア州の公道での無人試験運転を許可された。
10月には、カリフォルニア州マウンテンビュー、テキサス州ヒューストン、アリゾナ州フェニックスの3都市で「運転手なし・乗員なし・追跡車両なし」の完全自動運転試験を実施したことを発表。そしてこの12月にはついに、商用運転の許可を得ることに成功した。
ニューロとの統合を進めるアイクが同社ブログで「2021年はニューロと世界にとって重要な1年になる」と指摘するように、ニューロは年明けからそう遠くない時期に有料配送サービスに乗り出すとみられる。
(翻訳・編集:川村力)