東京ガスの控えめなプレスリリースに比べて、日本進出を大々的にアピールするオクトパスエナジー(Octopus Energy)の公式ブログ。東京ガスとの合弁会社を設立するという。
Screenshot of Octopus Energy Official Blog
電力・ガス市場の自由化はじめビジネス環境の激変に直面する都市ガス最大手が、大きな投資に踏み切った。
東京ガスは12月23日、イギリスのエネルギー供給スタートアップ、オクトパスエナジー(Octopus Energy)と戦略的提携に合意したと発表した。
東京ガスは2億米ドル(約210億円、同社公式発表では約200億円)を出資し、オクトパスの発行済み株式9.7%を取得する。
今回の提携合意に基づき、オクトパスエナジーは日本市場に進出する(launch Octopus Energy in Japan)。具体的な期日は現在のところ、明らかにされていない。
オクトパスは今回、既存株主の豪オリジンエナジー(Origin Energy)からも4700万ドル(約50億円)の追加出資を受けることが決まり、東京ガスの出資分を含めると、オクトパスの評価額は20億ドルを超えることになる。
提携合意に基づいて設立される日本での展開ブランド「オクトパスエナジー・ジャパン」は、東京ガスが7割、オクトパスが3割を出資する合弁会社「TGオクトパスエナジー」が運営する。
イギリス、オーストラリア、ドイツ、アメリカ、ニュージーランドで展開しているオクトパスの先進的なクラウド型テクノロジーサービス「クラーケン」(=データと機械学習を駆使してエネルギーサプライチェーンを最適化・効率化)を使って、再生可能エネルギー100%を含めた料金メニューを提供していくという。
オクトパスエナジーのグレッグ・ジャクソン創業者兼最高経営責任者(CEO)による会社紹介。
Octopus Energy
オクトパスのグレッグ・ジャクソン創業者兼最高経営責任者(CEO)は同社ブログで、「2019年、日本で使われた電力のうち再生可能な種類の電源から供給された割合はわずか18.9%。大きな拡大の余地があり、オクトパスと東京ガスはこの状況を改善するための再生可能エネルギー供給に取り組んでいく」としている。
日本のエネルギーベンチャーに大きな脅威
オクトパスは、競争の厳しいイギリス市場で、創業からわずか4年半の間に180万件超の顧客を獲得する急成長を見せており、公式ホームページ上では、プロサッカー・プレミアリーグの名門アーセナルや小売り大手マークス・アンド・スペンサーなどに(太陽光発電による)電力を供給していることを明らかにしている。
また、前述の小売りテクノロジープラットフォーム「クラーケン」は、すでに全世界で1700万件の契約を獲得。2027年までに1億件を目指している。
日本での展開も想定されるこのクラーケンについて、オクトパスは「エネルギーの小売りを自動化するだけでなく、そのプロセスで従来想像できなかった顧客体験をもたらし、さらに最も重要なポイントは、スマートグリッド(=次世代電力網)を構築して、再生可能エネルギーを柱とする安価な電力を顧客に供給するもの」と説明している。
世界のサステナビリティ重視のトレンドにならう形で、日本でも「実質自然エネルギー100%、二酸化炭素(CO2)排出量ゼロ」プランを提供する「みんな電力」など、新たなエネルギー供給企業の動きが活発化しているが、世界的に注目されるオクトパスの日本上陸は大きな脅威となりそうだ。
(翻訳・編集:川村力)