19歳の大学生、チャールズ・ロビンソンの発明「ジェルカード」。
Screenshot of Gelcard website
- 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、手指消毒液の需要が急増した。
- ビジネスチャンスだと気づいた19歳の起業家、チャールズ・ロビンソンは「スナップ(二つ折り)式」の消毒液パックを売り出した。それがいまヨーロッパを中心に話題の「ジェルカード(Gelcard)」だ。
- 2020年前半の発売開始以来、ジェルカードはヨーロッパの有名レストランやホテルへの導入が続々決まっている。
- ロビンソンはBusiness Insiderの取材に対し、ただの学生からたった数週間で起業家に生まれ変わった経緯について、「何が何だかわかってなかった」と答えている。
新型コロナウイルスが世界中で猛威をふるい始めた2020年の前半、19歳のチャールズ・ロビンソンの人生は岐路にさしかかっていた。
「大学から少し距離を置いて、自分をふり返る時間をとろうとしたところでした。自分の人生全体を考えたとき、恩義や責任にとらわれずに何かをできる、おそらく最後の時間だろうと感じていたからです」
まもなく世界中の国々がロックダウンを強いられ、消毒液が飛ぶように売れるようになると、ロビンソンは突然あるアイデアをひらめいた。
実は、過去にイタリアを旅したとき、ロビンソンはのちに「ジェルカード」へと発展していく原型を発見し、頭の中に構想を思い描いていた。原型とは、携帯用のコンタクトレンズ洗浄(保存)液入りパッケージだ。
「少し工夫を加えるだけで、素晴らしい商品になるという確信がありました」
ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの同級生、ポール・シュミット・ディールスドルフを誘ったロビンソンは、イタリア・ミラノのメーカーを探し出し、彼らが考え出したプロダクトを世界中に出荷してもらう契約を取りつけた。
プロダクトは、二つ折りにすると消毒液が出てくる、クレジットカード程度の厚さの小分けパッケージだ。
ジェルカード(Gelcard)のプロモーション動画。
Gelcard Official YouTube Channel
「正直言って、当時は自分たちが何をしようとしているのか、全然わかっていなくて。それでも、新製品が良いものであることだけはわかってました。なのでとにかく、リンクトイン(LinkedIn)やメールを使って手当たり次第声をかけたんです。誇張ではなく、本当にいろんな会社の経営者に自分たちで考えた文面を考えて送りつけました」
ほどなく、ふたりの苦労は報われることになる。
ロンドンで最も人気のある高級レストラン「ウォルズリー(The Wolseley)」「ブラッセリー・ゼデル(Brasserie Zedel)」、さらには欧州全域に展開するホテルチェーン「パークプラザ(Park Plaza)」との販売契約締結に成功したのだ。
ロンドン屈指の高級レストラン「ウォルズリー(The Wolseley)」もジェルカードを導入。ジェルカードの公式ホームページより、同店内の様子。
Screenshot of Gelcard website
ジェルカードは2020年4月にイギリスで法人化。ロビンソン本人を除くと、最大の株主は彼の父親のクレイグ・ロビンソンだ。
ロビンソンによると、ここまでの売り上げは12万ポンド(約1650万円)。シードステージの資金調達を検討しているという。
「何とも奇妙な感じです。自分に起業家精神があるなんてこれまで考えたこともなかったので。創業者が若いころをふり返るときはたいてい、仲間にお菓子やら何やら売って稼いでいたとか逸話があるものですが、僕の場合そういうのはありません。学問の世界に進みたいと考えていたから」
ロビンソンの会社はいまユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのスタートアップ育成ハブ「BaseKX(ベースケーエックス)」で、企業経営の専門家からのサポートを受けつつ、ビジネスの成長を計画している。
なお、ジェルカードの詳細情報はこちらから確認できる。
(翻訳・編集:川村力)