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「マスク会食」ってうまくできるの?「私は注意している」が全然大丈夫じゃない理由

ビール

年末年始は古い友人とお酒を酌み交わしたい季節。しかし、新型コロナが流行する今年はぐっと我慢が必要だ。

Thayut Sutheeravut/Shutterstock.com

年末年始は、例年ならアルコールとの付き合いが増える季節。

2020年は新型コロナウイルスの感染を防ぐためにステイホームを余儀なくされる期間が長かった分、「年末年始くらいはちょっとだけ」と、懇親会などに足を運ぼうとしている人もいるかもしれない。

一方で、12月31日には、東京都で1日に確認される新型コロナウイルスの感染者が1300人を超えた。

政府は、いまだに感染が減少傾向にない地域に対して、新年会などは基本的に見送るように呼びかけている。

とはいえ、「私は注意しているから大丈夫」と飲み会に参加したり、適度にマスクをつければなんとかなると考えている人も多いかもしれない。政府も、口に物を入れる瞬間だけマスクをはずし、会話するときはマスクをする「マスク会食」を提唱している。

しかし、お酒を飲んで酔っ払った状態で、律義にそんな行動ができるのだろうか。

飲酒運転の危険性に詳しい国立病院機構久里浜医療センターの樋口進院長に、「アルコールによって人のリスク行動はどう変わってしまうのか」を聞いた。

飲酒運転の研究をもとに、酔っ払ったときにどんなリスクがありそうか、考えてみたい。

お酒を飲むと注意力が低下する

酔っ払い

アルコールを摂取すると注意力が散漫になり、人によっては感情の起伏が激しくなりやすい(写真はイメージです)。

shutterstock/buritora

アルコールを飲むと、私たちの体にはさまざまな変化が現れる。

例えば、脳の理性をつかさどる「大脳前頭前野」の機能が落ち、一方で、本能や感情をつかさどる「大脳辺縁系」の活動は活発になるとされている。

これを言い換えると、アルコールを取ると気の赴くままに行動して注意力が散漫になり、人によっては感情の起伏が激しくなりやすいということになる。

友人らとアルコールを伴った会食。楽しく、会話がはずんでいると思っていても、それは脳がアルコールの影響を受けて、そう感じているだけなのかもしれない。

また、アルコールには、身体の動きの“司令塔”ともいえる「中枢神経(脳幹網様体賦活系)」の活動を抑制する働きもある。お酒を飲むと、うまく身体の動きをコントロールできなくなったり、眠くなったりするのはそのためだ。

なぜ「飲酒を伴う会食」で注意できなくなるのか

SCRENNN

新型コロナウイルス感染症対策分科会は、特にリスクの高い場として、5つの場面を提示。飲食を伴う懇親会(会食)もこの内の一つに含まれている。

出典:新型コロナウイルス感染症対策分科会 「分科会から政府への提言(10月23日)」

飲酒運転が危険だとされる理由は、飲酒によって注意力が散漫になり、眠気などのさまざまな症状が現れ、運転スキルが低下することが明らかだからだ。

「たとえば、欧米人を対象にした研究によると、体重60kgの人で血中アルコール濃度が0.03%程度(ビール500ml弱)になると、ハンドルの正確な操作ができなくなったといいます。間違った方向にハンドルを切ってしまったり、真ん中を走っているつもりでも徐々に左や右に寄って走ってしまったりするということです」(樋口院長)

血中のアルコール濃度によって、症状には差がみられる。

「血中アルコール濃度が0.02%(ビール350ml程度)でも、物を見てからの反応時間が遅くなり、0.04%(ビール500ml程度)になると視野が狭くなったといいます。

つまり、車を運転している最中にぶつかりそうになっても、とっさにブレーキを踏めなくなったり、標識を見たときに何を意味しているのかを認識するまでの時間が遅くなったりするのです」(樋口院長)

本人の自覚に関係なく、アルコールを摂取すれば注意力や運動技能が低下する。酔いの自覚とは無関係に、事故のリスクが高まることは肝に命じておくべきだ。

では、これをお酒の席に置き換えて考えてみよう。

感染者数の増加に歯止めがかからない東京などであれば、そもそも飲み会を控えることを第一の選択とすべきだ。

それを踏まえた上で、年末年始、たとえば感染者が少ない地域や、普段から顔を合わせている人の間でマスク会食を行うことがある場合、最も「注意」しなければならないのは、飲み食いをするたびにマスクを付け直すことだ。

仮に、アルコールを飲んで注意力が落ちたときに、どういったことが考えられるのだろう。

酔えば手元が狂いやすくなるため、マスクをつけようとしてもうまく耳にひっかけられず、ぽろっとテーブルや床に落としてしまうかもしれない。カバンやポケットにマスクをしまったと思っても、知らないうちになくしてしまうこともあるかもしれない。

実際、飲み会に参加したあと、物を失くした経験のある人は多いのではないだろうか。

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「マスク会食」一連の動作の流れ。

かなチャンTV(神奈川県公式)YouTube上動画を編集部がキャプチャ

また、飲み会の最中、トイレから戻ってきたときに、自分の席ではない場所に腰かけることもよくある光景だ。座席を替えることは、これまでのクラスター事例などからも「感染リスクを上げる行為」として指摘されている。

たとえダメだと分かっていても、注意力が落ちていれば「思わず」やってしまうことはありそうだ。

また、お酒が入ると、陽気な気分になりがちだ。

こまめにマスクを着脱する「マスク会食」はそもそも面倒なので、気分が盛り上がり、会話も弾めば、「マスクをしなければならない」という意識(注意)もおろそかになり、「ついうっかり」マスクをはずしたまま会話を続けてしまうケースも増えてしまうだろう。

どれも仮説に過ぎないが、アルコールによって注意力が低下することを前提に考えると、こういったリスクを完全に排除することは難しそうだ。

酒に強い人と弱い人で注意力に差は?

飲食店イメージ

生まれつきお酒が弱い人は、強い人よりもアルコールの分解が遅く、脳の神経系への感受性も高い場合が多い(写真はイメージです)。

shutterstock/aon168

アルコールを飲むと注意力が落ちやすいことはわかったが、「注意力が散漫にならない程度」の少量なら、会食の判断力への影響は少ないはずと思う人もいるかもしれない。

私たちは、どの程度のお酒を飲むと注意力が落ちて、リスクの高い行動をしてしまいやすくなるのだろうか。

厚生労働省では、1日あたりのアルコール摂取量の基準を、女性だと20g(日本酒1合、またはビール500ml)未満、男性は40g未満としている。ただし、これはその基準値以上のアルコールを摂取し続けたときに、生活習慣病による死亡率が高まるという理由から設定された値だ。

酒気帯び運転として違反になる基準は、呼気1L中のアルコール量が0.15mg以上、もしくは血中アルコール血中濃度0.03%以上(ビール500ml弱、日本酒1合、焼酎0.6合)。しかし、先ほども説明した通り、これよりも低い濃度でも運動技能が低下することがすでにわかっている。

アルコールの運転技能への影響

アルコールを摂取したときの運転技能への影響。あくまでも目安であり、個人差があることに注意が必要。

出典:健康情報サイト「アルコールの運転技能への影響」(厚生労働省)より編集部作成

また、世の中には、生まれつきお酒に強い人もいれば、弱い人もいる。

生まれつきお酒が弱い人は、強い人よりもアルコールの分解が遅く、脳の神経系への感受性も高い場合が多い。当然、アルコールの影響を受けやすい。

加えて、少量であってもお酒を飲むことで人格が変わってしまうような人や、飲んでいる間の記憶があいまいになりやすい人は、当然ながらマスク会食を最後まで成し遂げることは難しいだろう。

これに対して、アルコールに強い人は、アルコールの分解が早かったり、脳の神経に対するアルコールの感受性が鈍かったりする場合が多い。これは、遺伝的な要素が関係している。

だからといって、アルコールに強い人ならいくら飲んでも注意力などが落ちないかというと、そういうわけではない。程度の差こそあれ、アルコールの影響で注意力は低下する。

若者はリスクをおかしがち?

待ちゆく人

「飲酒運転で事故を起こしやすいのは特に若い人」といった調査結果も出ている(写真はイメージです)。

撮影:三ツ村崇志

冒頭の飲酒運転に話を戻そう。

樋口院長によると、特に若い人は、飲酒運転で事故を起こしやすいという。

1996~98年にアメリカのカリフォルニア州とフロリダ州の2地点で事故を起こした運転者について調査した結果、20歳未満の人の飲酒運転時の事故リスクは、ほかの年代と比べると顕著に上昇していた。この原因は、若い人が高齢の人よりも、スピード違反やシートベルトの非装着など、もともとリスクの高い行動をしやすい傾向にあり、アルコールでそれが助長されてしまうからだと考えられている。

これを飲み会の場に単純に置き換えて考えることはできないが、もし若者が「一般的にリスクの高い行動を取りやすい」と言えるのなら、お酒が入った場では、事故時のリスクを考えずにシートベルトの着用を無視するように、感染対策を気にせず羽目を外してしまいやすくなるともいえるかもしれない。

また年齢に関係なく、いくら「注意しながら飲めば大丈夫」と思っていても、アルコールの力にそう簡単には抗うことはできない。

感染対策を徹底するなら、飲み会をしないに越したことはない。

どうしても顔を合わせたい、ということなら、少なくとも普段は会わない人たちとの飲み会はオンライン飲み会に変更したり、ランチかお茶で短時間で済ませたりできないだろうか。

これ以上の感染拡大を防ぐためにも、何か一つでも感染対策につながることができないか、考えてみて欲しい。

なお、内閣官房の新型コロナウイルス感染症対策「会食時に注意したいポイント」には、下記の注意点が記載されている。心に留めておきたい。

  • (1)少人数・短時間で(2)なるべく普段一緒にいる人と、(3)深酒・はしご酒などは控え、適度な酒量で。
  • 箸やコップは使い回わさず、一人ひとりで。
  • 座の配置は斜め向かいに(正面や真横はなるべく避ける)。
  • 会話するときはなるべくマスク着用。
  • 換気が適切になされているなどの工夫をしているお店で。
  • 体調が悪い人は参加しない。

(文・今井明子、編集・三ツ村崇志

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