もし私が今、22歳だったら?人材業界3社のトップに聞く2021年にすべきこと

sam

インタビューに応じた(左から)パーソルキャリア社長・峯尾太郎氏。リクルートキャリア社長・佐藤学氏、ビズリーチ社長・多田洋祐氏。

今村拓馬撮影。佐藤氏はリクルートキャリア提供。

日本の雇用をめぐる環境は今、激動期を迎えている。

新型コロナウイルスに見舞われた2020年は、サービス業を中心に壊滅的な影響を受ける業界も現れ、失業者は前年比で40万人超増加。先行きは依然不透明だ。

終身雇用は大企業でもすでに崩壊し、転職や雇用の流動化は加速している。

足元の経済環境は揺らぎ、雇用や働き方の変化する時代 —— 。この時代にもし、あなたが新卒の22歳だったら、どんな道を選びますか。

人材のプロである、リクルートキャリア、パーソルキャリア、ビズリーチ3社のトップに聞いた。

【リクルートキャリア社長・佐藤学氏】

recruite

オンラインで取材に応じた佐藤氏は、「私が就活して時代よりもはるかに先にが分からない世界になった」と話す。

提供:リクルートキャリア

就活の軸は「力をつけられる会社」

私が就職活動したのは30年前。1992年に入社したので、その頃にちょうどバブルがはじけました。

その頃と今とで、会社を選ぶ軸は何も変わりません。当時考えたのは、本気でやりたいことが見つかった時に、そこで通じる力がつく会社を選ぼうということ。

人間的にも成長できて、いろんな経験を積める環境という意味で、当時はリクルートを選びました。

30年前に比べれば、2021年の今の方が、はるかにこれからどうなるかわからない。その段階で、定年までの人生設計を固定的に描いてもしょうがないと思います。

今の若い人たちは、70歳、80歳まで働く可能性があります。60歳定年が前提の時代のように、息もつかずに集中的に働いて、定年したら余生を過ごすようなキャリアとはいかない。全力で走る瞬間があってもいいし、息を整える瞬間があってもいい。マラソン型になっていくと思います。

ベンチャーか大企業か「二元論は危険」

smartphone

「安定の大企業、成長できるのはベンチャー」で悩む声も聞かれるが、本当にそう言えるだろうか。

撮影:今村拓馬

今の就活生が悩むという、大企業に行くべきかベンチャーがいいのか。それは一概には言えません。

大企業と一言で言ってもワンパターンではなく、その会社で何をするか、配属されるところ、出会う上司、仕事の進め方や社風など、自分とのマッチ度で人生は変わります。

だから二元論で極端に捉えるのはリスクがあると思います。

どの会社を選ぶべきかというのも、人それぞれ違います。勉強の仕方と同じです。塾に行ったいい人も、一人で勉強するのがいい人も、競争が激しい方がいい人もいる。

一方で、人は環境にすごく影響を受けるのも事実です。

自分で自立的にゴールを設定し、課題を設定し、自分を叱咤激励できるような人はそんなに多くない。

自分に対して刺激を与えてくれたり、適切な指摘をしてくれたりする人がいて、自分が課題を持てるような環境に身を置く方が成長の度合いは高まると思います。

私が今の会社に入って一番感謝しているのは、成長できる方法を学べたことです。

社会が変わっていく中で、学び続けなければいけませんが、学ぶ喜びを感じられれば、人間は豊かに生きられる。

キャリアを取り巻く状況の変化

_07A1241

「社会人としての求められる力は、どの企業でも共通する部分がある」と佐藤氏は言う。

提供:リクルートキャリア

「目指すものがはっきりせず、どう生きていったらいいのか分からない」という人がいますが、それは「スポーツを始めたいけれど、種目が決まってない」と同じ。

私がよく言うのは、「サッカーとか水泳とかいろいろあるけれど、まず基礎体力のない人は、オリンピックでメダルは取れない」ということです。

「サッカーがいいか、野球がいいか」と迷うのではなく、やりたいことが分からないなら、じーっと考えているのも仕方ない。まずはグラウンドを走り込んで体力を付けると。

社会人としてのベーシカルに社会で求められる力はあります。まずは、経験を積むことを意識してはどうでしょうか。

【パーソルキャリア社長・峯尾太郎氏】

PERSOL2020-12-28

峯尾氏は「就活では何をするかよりも、どう働くか、自分で決められるかという点を重視した」と話す。

撮影:今村拓馬

面接で言い続けた「自分で決めさせてくれ」

私が就活をしたのは約25年前ですが、当時の私の就活のテーマは、「自分の仕事を自分で決めさせてくれ」ということでした。その考え方は、今も変わりません。

私が今22歳でも、仕事のやり方を決めさせてくれるような懐の深い会社、社員の自律を志向している会社を選ぶと思います。

大学時代は理系だったので、周りはみんな研究室に残りました。私は研究に興味がなかったので、就活をしようと思ったものの、最初は会社のことが本当に分からなかった。そこでOB訪問もしたし、面接も60社は受けました。この会社に入りたいというよりも、会社を知ろうと思って面接を受けていましたね。

ただ当時は、面接で「自分のやり方で、やりたいように仕事をさせてくれ」と言っても、全く理解されませんでした。

大手の企業からは「できるけど、それは事業部長かな」と言われて、何歳で部長になれるかを聞いたら、「50歳くらい」だと。

そんな時に、たまたま紹介されたインテリジェンス(現・パーソルキャリア)から、「やりたいようにやればいいよ。でも大変だよ」と言われて入社を決めました。当時はまだ16人の小さな会社でした。

大企業でもベンチャーでも「その時の感性に従う」

persol

「むしろそこで何を得ようと思うか、出合ったことをどう受け止めらるか。その弾力性、柔軟性や、自分のテーマを設定する力を身に着けることが大事」。

会社の選び方は、その時の感性に任せて決めていいと思います。

大手企業がいいなら大手に行けばいいし、スタートアップの社長がかっこいいと思えば、スタートアップに行けばいい。

だけど、大切なのは行ってみて「違う」と思ったら、いつでも戻れる選択肢はあるということです。

どこに行くかもそうですが、むしろそこで何を得ようと思うか、出合ったことをどう受け止められるか。その弾力性、柔軟性や、自分のテーマを設定する力を身に着けることが大事です。

楽観性を身に着けるための「知識」

そもそも社会に出たばかりの若い頃に分からないことが、まず3つあります。

仕事を知らない。自分自身をまだ知らない。どうすれば力やスキルをつけられるかをを知らない。本来、この3つさえ理解できれば、自分で自分のキャリアを操縦できる。

できるだけ早く知った方がいいと思います。

そして「大丈夫、なんとかなる」みたいな楽観性や根拠のない自信も大事です。

僕自身は就活を通じて多くの会社に触れることで、自分の考えが熟成されました。楽観性を抱けるようになるまで、自分自身や仕事について探求することも必要だと思います。

【ビズリーチ社長・多田洋祐氏】

BIZREACH

多田氏は「より起業しやすい環境が整っている」と話す。

撮影:今村拓馬

今22歳ならむしろ起業する

自分が新卒だった16年前から、前提の選択肢は変わってはいますが、根本的に自分が考えていることは変わらないです。

当時私は、就活は大きな会社に入ってより大きなことを成すか。あるいはそうした大きな会社を一個作るかという、2つの軸で就活をしていました。

一社目は10人くらいのベンチャーに入ったのですが、それは自分としては、大きな会社をもう一つ作った方が、この国の未来のためになる、という考えからです。あくまで個人の価値観ですが、今もその思いは変わっていません。

今のビズリーチのミッションでもあるのですが「全ての人が自分の可能性を信じられる社会をつくりたい」と考えたからです。

ベンチャーに入社後、誘われて起業しました(2社起業を経て2012年にビズリーチに参画)。今の状況下で学生だったら、あくまで自分だったらですが、起業の選択肢は十分あったと思います。むしろ今の方が起業はやりやすい。

大企業でもベンチャーでも「変わらない」

tada

大企業もベンチャーも「どっちでも変わらない」。自分で主体的にキャリアを積む決意があるか、だ。

大企業に行くべきか、ベンチャーに行くべきかで迷っている就活生の方が多いとのことですが、結論としては「どっちでも変わらない」だと思います。

大前提として、自分自身が主体的にキャリアを積む決意があるかどうか、です。

ベンチャーの方が裁量権を持って働けるというイメージもあるようですが、大企業は大企業で素晴らしいと思うんですよ。

あれだけの規模の経営をして、世の中に大きな影響を与えている。我々だって、大きな企業になりたい。

売上高というのは、お客様や社会からの価値や期待の総和だと考えています。売上高があるということは、社会をよりよくできていることとイコール。それが、商売です。

大企業でもベンチャーでも、どういう風にキャリアを築いていくかということでしかありません。

新卒と中途のバランスが大きく変わっている

ZEBRA

新卒一括採用が長かった日本にも、ここ数年で大きな変化が訪れている。

撮影:今村拓馬

新卒一括採用が長かった日本ですが、ここ数年で、企業側の新卒と中途のバランスが大きく変わっています。

かつては中途と言っても、第二新卒(新卒から3年未満)しか大手は採用しなかったのです。それが今なぜ年功序列を撤廃し始めたかというと、外国人や年齢を問わない採用を、(入社年次で年収が決まる)既存の制度ではまかなえなかったからですね。

なので、就活の時の景気や雇用環境で、人生が決まってしまうことは、今はもうないと思っています。もちろん、経済環境が悪化すれば就活生が悲観的になるのもわかりますが、人口動態でいくと、ボリュームゾーンは団塊ジュニア世代で、20代の方は本当に少なく希少性は高い。

とにかくどこでも通用するキャリアを身につける。そのことで(今は例え希望業界で募集すらなくても)企業側の需要はまた必ずあります。

変わり続ける力、を身に着ける

どこにでも通用するポータブルスキルとは何か?その一つは「変わり続ける力」と私は言っています。転職をしても成功できる人というのは、やっぱり変わり続けられる人、なんです。

どの環境に行っても、アップデートすること。自分自身のキャリアを主体的に考えて、これが足りないからこのプロジェクトに挑戦してみようなど、常にチャレンジを続ける必要がある。

「この企業に入ったから生涯安泰 」というのはこれからの時代ありません。これからの時代のポータブルスキルは、まさに「変わり続けること」です。


佐藤学:リクルートキャリア社長。1992年、株式会社リクルート人材センター(現株式会社リクルートキャリア)に入社。リクルーティングアドバイザー、キャリアアドバイザー、営業部門の責任者として多数の企業の採用を支援。事業企画、商品開発、採用などにも従事。2005年に執行役員に就任。新卒採用領域、中途採用メディア領域、人材紹介領域各事業領域に経営の立場から携わる。2020年4月より現職。

峯尾太郎: パーソルキャリア社長。1970年生まれ。中央大学理工学部卒業後、1994年インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社。2002年に同社執行役員、2010年4月常務執行役員に就任。2016年4月より代表取締役社長。公益社団法人 全国求人情報協会 理事も務める。

多田 洋祐:ビズリーチ社長。1982年生まれ。2006年、中央大学法学部卒業後、エグゼクティブ層に特化したヘッドハンティングファームを創業。2012年、株式会社ビズリーチに参画し、その後ビズリーチ事業部長を務める。2015年より取締役として、人事本部長、スタンバイ事業本部長、HR Techカンパニー長等を歴任。2020年2月、現職に就任。

(文・横山耕太郎、滝川麻衣子、取材協力・戸田彩香、稲葉結衣)

  • Twitter
  • Facebook
  • LINE
  • LinkedIn
  • クリップボードにコピー
  • ×
  • …

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み